明治2年、箱館戦争の最終局面。若き看護婦、朝倉志乃はこころを寄せる青年医師・井上青雲を眼前で官軍によって惨殺された…。女であり敗者でもある志乃が生きた、箱館戦争後日談。『小説トリッパー』掲載を加筆訂正し書籍化。
明治2年、箱館戦争の最終局面、箱館病院分院では傷病兵にすら官軍によって凄惨な殺戮が行なわれていた。若き看護婦の朝倉志乃はこころを寄せる青年医師・井上青雲を惨殺され、「私の戦」を決意する。宿敵を衝撃的な方法で殺し、ついに追われる身となった志野は医学、射撃、馬術、西洋式料理を身に着け戦士になっていく。女であり敗者である志野がみた、官製の歴史観をぬりかえるすがすがしく豊かな箱館戦争後日談小説。
物語の舞台は、幕末から明治へと向かう大変革期、官軍と旧幕府軍による戦いの最終場面を迎えた箱館五稜郭で、榎本武揚率いる旧幕府軍が降伏したのちも「共和国建設」の夢を追って戦う残党を描いた物語。史実に基づいて描かれた作品でもあり、著者の『五稜郭残党伝』『北辰群盗録』に続く、五稜郭シリーズのラストを飾る作品ですが、明治維新を別角度から捉えた作品で、主人公の志野は、西洋医学を学び、医師を手伝う中、目前で彼女の思い慕う青年医師が殺されたことにより、戦う女へと変身していきますが、追われる身となった志乃が、榎本軍の残党である三枝弁次郎と出会い、共和国建設の夢を捨てきれない三枝と居場所を失った志乃が、迫る官軍と激しく戦いながら、北海道の奥へと逃げ続ける姿の厳しい現状、そして共和国建設への思いは、迫真の内容でもありました。
【満足度】 ★★★★☆