小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した牧野富太郎。東京大学理学部植物学教室に出入りを許され、新種の発見など目覚ましい成果を上げるが…。稀代の植物学者を描く長編小説。『小説NON』連載を加筆、訂正。
明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなっていた……。貧苦にめげず、恋女房を支えに、不屈の魂で知の種(ボタニカ)を究め続けた稀代の植物学者を描く、感動の長編小説。
本書は、日本植物学の父・牧野富太郎の情熱と波乱の生涯を描いた物語。家業を継ぐように言われていたが、幼い頃から植物観察に没頭し、家業は祖母と妻におしつけた状態で東京へ。そこで若い妾と暮らし、植物採集を続け、財産をとんでもない勢いで食いつぶし、莫大な借金なんて、まるで気にも留めていない。結局その妾であったスエと籍を入れ、多くの子どもをもうけるも、家庭は顧みず、やはりひたすらに植物を追い求め、各地を飛び回る……という自由奔放な破天荒ぶりではあるが、植物研究に対する情熱は興味深く、エンタメとしても印象に残る物語でした。
【満足度】 ★★★★☆