有栖川有栖「江神二郎の洞察」
ミステリの歴史おいて古今東西含めて最上であると信じるシリーズがある。
有栖川有栖氏の学生アリスシリーズだ。
五つの長編と二つの短編集で構成される予定のこのシリーズは、現在長編が四つと短編集が一つ出版されている。
つまり、あと長編と短編集が一つずつ出たら完結してしまうのだ。
今のところ全作が僕のオールタイムベストに載っている。
いや、どちらかと言えば僕のオールタイムベストが全作に組み敷かれたと言うべきだ。
完全に支配されている。
このシリーズを読む為に生まれてきたと思っている。
全七作と言わず幾らでも新作を出して欲しいが、この水準を保つには乱作は禁物というのも解る。
早く新しいのを読みたいが、出ればシリーズが終焉を迎える。
ジレンマ。
罪深いシリーズである。
論理の輝きを携えたこのシリーズは、青春ものとしての美点もまた同時に持っている。
英都大学推理小説研究会、通称EMCの活躍譚はいつだって瑞々しい。
江神部長、モチさん、ノブナガさん、アリス、マリアの関係は現実世界では有り得ない程美しい。
この短編集は、第二長編までの間を時系列に沿って埋めるものとなっている。
出会いから第一長編まで、第一長編から第二長編までのEMCの姿はこれまで想像するだけであったが、実際のそれは想像以上に美しかった。
ベストは決められない。
この世界が愛おしいのだ。
我が教典「学生アリス」、願わくば永遠なれ。