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御前の燈炉の火消なんとしけるを、御宝殿の内より金の扉を押開き、玉簾を巻上て、丱童一人出現し、燈をぞ挑ける。(源平盛衰記巻第十二) むかし、男、密に語らふわざもせざりければ、いづくなりけむ怪しさに詠める。 吹く風にわが身をなさば玉すだれひまもとめつつ入るべきものを かへし、 とりとめぬ風にはありとも玉簾誰が許さばかひまもとむべき。(伊勢物語六十三吹く風に) これらの文章に出てくる「玉簾」は、玉で飾ったすだれか、すだれの美称として使われるている。しかし一般に玉簾と言えば、植物のタマスダレを想起する。 タマスダレはヒガンバナ科タマスダレ属の球根草で、レイン・リリーの別名がある。 原産地ペルーから明治時代に渡来し現在は園芸用に広く植えられており、しばしば逸出し野化しているものを見ることもある。 丈夫で育てやすく、分球で殖える。葉は細い棒状で土から直接立ち上がり、伸ばした花茎の上に上向きの白い6弁花を一花開く一茎一花の植物である。 属名のZephyranthesは、ギリシャ語のzephyros(西風の神)+anthos(花)を表す合成語である。またCandidaは、「純白の・輝きのある」を意味している。 タマスダレの花は、20cmほど伸びた花茎の頂点に純白で美しい花を一花だけ咲かせる。日が当たる頃に開花し夕方に閉じるを繰り返し、3日ほど咲く。 タマスダレという和名は白い小さな花を「玉」に、葉の様子を「簾」に擬えて付けられたものである。 別名レイン・リリー(雨ユリ)といわれるのは、雨後に一斉に花茎を伸ばし開花することに由来する。 園芸店などでは「ゼフィランサス」の名前で通っているが、属名なのでゼフィランサスにはタマスダレ以外の植物も多く含まれており本来はタマスダレのみについての呼び名としては不適正である。 本種には不思議なことに結実し難いものと反対に種子をよく付ける個体群があり、増殖は殆どの場合球根の分球による。 ヒガンバナ・スイセン・キツネノカミソリ・アマリリス・ハマユウなどのヒガンバナ科の植物は、有毒アルカロイドのリコリンを含有する。 タマスダレも葉や鱗茎にリコリンを含んでおり、誤食すると嘔吐・痙攣の症状をおこす。 10年前の6月29日、さいたま市の小学校で行われた総合学習授業で、ノビルと間違えて2日前に校庭で採取したタマスダレの葉を調理して食べた児童15/18人が吐き気の食中毒症状を呈したが、全員その日のうちに回復した。(厚労省自然毒のリスクプロファイル) タマスダレは生け花の花材にされるようなことも無く主として植え込みを観賞する花なので、間違えて摘んだりしない限り中毒の危険性はそれほど高くない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年09月21日 09時00分27秒
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