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「法恩講と唱、真宗之祖師忌、霜月廿八日なるを取越、十月ニ仏事仕、是を御取越といゝ、人家ニ不取行ハなし、霜月ニ入候てハ僧分多用ニ付、十月朔日より家々ニ右法恩講執行也」(理勢志) 真宗の祖師(親鸞)忌は十一月廿八日で、法恩講というが、日程を繰り上げて十月に仏事をする。これを御取越といい、これをしない家はない。十一月に入ると僧は忙しくなる(?)ので、十月朔日より家々で法恩講を行なうのである。 安芸国では浄土真宗の寺が圧倒的多数を占め、その門信徒を「安芸門徒」といいます。備後でも真宗は優勢です。 【報恩講】ほうおんこう。(『岩波歴史辞典』) 仏教各宗派で宗祖や派祖の忌日に行う報恩の仏事をいう。とくに浄土真宗の場合は、覚如が報恩講式を作り、南北朝時代には親鸞の忌日11月28日を結願とする7日間の法会が行われており、以後真宗最大の年中行事となった。 この「真宗最大の年中行事」を、「僧分多用ニ付」十月に繰り上げて、その名も「御取越(繰上げ)」としたと説明しています。 【御取越】おとりこし。(『広辞苑』) 親鸞の正忌陰暦一一月二八日を引き上げて、それ以前に法事を行うこと。引上会とも。 ところが、もともと「御取越」=繰上げですから、本来の意味にも使われます。 「玉雲院様三周忌ニ付、来ル廿九日、晦日御取越御法事御執行有之候間、諸事穏便ニ仕」(安永五年(1776)十一月「堀川町覚書」) 玉雲院様(浅野重晟御嫡岩松君、安永四年(1775)年正月晦日逝去)の三周忌を、十一月廿九日と三十日に御取越御法事を執り行うので、諸事穏便にして 何かの都合で、安永六年(1777)一月末の法事を二ヶ月繰上げるという、本来の意味で使われています。この2例は共に法事ですが、それ以外にも「取越」はあります。 【取越米】(『広辞苑』) 江戸時代、特別の事情によって支給期(春・夏・冬)前に支給された切米。 【取越し苦労】(『広辞苑』) 将来のことをあれやこれやと考えて、つまらない心配をすること。杞憂。 【取越正月】(『世界大百科』) 暦日上の正月を待たずに年の途中に儀礼的に正月を迎え,旧年から脱しようとすること。……その年の忌まわしさから脱し新たな嘉年を期待して行われるもの……時期的には6月前後が多かった。」 給与の繰上げ支給、心配の繰上げ、正月の繰上げ、……「取越し苦労」が“心配の繰上げ”とは、気が付きませんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/11/12 12:11:12 AM
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