テーマ:子どもと教育問題(292)
カテゴリ:「学力」問題
さて、22日に実施された全国共通学力調査の「テスト問題」そのものについて考えてみようと思います。「学力調査」実施の意図や調査結果の活用方法については様々な議論が(今年はわりと静かですけどね・・)ありますが、せっかく税金をかけて実施しているテストですから、納税者としては「調査」のために作成された「問題」そのものについて考えてみるのも大切なんじゃないかと思うからです。
というのは、昨年度の問題と今年度の問題の傾向が若干違うんですよね。 現行学習指導要領に基づいた学力の習熟度を測るという点は共有されていると思いますが(あたりまえですよね。今の中3と小6はその学習指導要領に基づいた教育課程を受けてきているのですから・・)、問題の構成、視点の当て方がかなり違うという印象を受けます。特にB問題の変化が特徴的だと思います。また、A問題も単純に知識を評価するというだけでなく、教科内容と日常生活を結びつけた問題になっているんですよね。 下に、実際の問題と正答例、解説、問題趣旨が読めるページのリンクをはります。 ↓「平成20年度全国学力・学習状況調査の調査問題・正答例・解説資料について」のHP http://www.nier.go.jp/08tyousa/08tyousa.htm 国立教育政策研究所のホームページです。文部科学省のHP「報道発表資料」から入っていくことができます。このページに今年度の全問題と正答例、解説と昨年度の問題、正答例、問題趣旨へのリンクがあります。 で、結論からいうと昨年度よりも、A問題の「基礎的知識」とB問題の「活用力」という問題作成上のポイントだ整理されて、よりPISA調査の問題に近付いているように思いますし、単純にPISA調査の問題の後追いをしているだけでなく、きちんと「評価したい活用力」がなんであるのかを打ち出している問題のように思います。「基礎的知識」にも日常性が入っているように、「活用力」がただ「総合的な学習の時間」の場面設定を借りた表面的な「生活への応用力」というのではなく、またメンドクサイパズルにならずに(とろろ丼さんはやっぱり「難しいというよりメンドクサイ問題だった」と言ってましたけどww)、国語ならば「資料を適切に読み取る力」や「(まやかしではなくて)根拠を明らかにして説得力をもって主張する力」が問われていると思いますし、数学も「事象の理解に数学を応用するための基本的な考え方ができるかどうか」「数学的考え方のプロセス」を問うているように見えました。もちろん、それぞれの教科の専門の先生方から見るとまた違う評価もあろうとは思いますが。 未来をつくる子ども達にはPISA型学力が必要だと考えている私にとっては、この変化は肯定できます。なぜならば、「学力テスト」の問題の傾向は、今後の教育政策上必要と考えられる学力がどのようなものであるかのスタンダードを示そうとしていると考えられるからで、そのスタンダードがPISA型学力を指向しているというのは、私にとっては好ましい変化なんですよね。教育政策上の「求められる学力」のスタンダードは、今後の高校入試、大学入試にも反映されていくことが予想されます。特に、公立高校やセンター試験の反応は早いんじゃないかな。 実は、昨年度の問題については、あまり評価できないと考えていましたので、それに比べると今年度の問題の方がいいんですよね。 昨年の問題を見て、かなりがっかりしたのは、数学の「活用力」の問題の場面設定が「消費者」としての生活者に留まっているように見えたからなんですが、今年度の問題にはB問題で露骨な「買い物問題」がありません。「数学B」の大問題5は、富士山観光レジャーの計画を立てる場面設定ですが、その中に富士山6合目の気温を予想するという問題が入っています。6合目には観測所がないので平均気温がわからないので、既存のデータを使ってグラフを作成し想定できる気温を出すための考え方を問う問題なんですね。数学の問題として見るとかなりメンドクサイ文章があって読むだけで疲れる生徒もいるかもしれませんし、うちのとろろ丼さんのように、何を聞かれているのか読んでいるうちに混乱してしまった生徒もいるかもしれませんが、問題の趣旨は、いくつかのデータをもとに一次関数のグラフを応用して未知の値を予測するための「方法」を「説明できるか」どうかという問題なんです。 「修学旅行の計画」を立てるときに事前の「調べ学習」で「考えさせる」取り組みをしている子ども達を想像しました(まぁ、とろろ丼さんたちは、京都・奈良の事前学習で「理科的」な調査はしませんけどね)。 こっちの方が、ファミレスのオーダーを考える問題より私にとっては「考え方」「説明能力」を測るという視点であるため「活用力」として納得できる問題でした。 ![]() ↓<高齢父ちゃん 頭の良い子に育つかな>ブログさんよりいただいたトラックバック http://kansuke99.at.webry.info/200804/article_12.html せっかくいただいたトラックバックなのに、間違えてけしてしまいました。 ぶろぐ村の検索でみつけることができましたのでリンクをはっておきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[「学力」問題] カテゴリの最新記事
学力調査は、新学習指導要領実施後の具体的な指導やそのときに扱う教材のあり方を提示していくねらいもあるようです。総則の「教育課程編成の一般方針」には、「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ(A問題)、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむ(B問題)」とあります。調査は抽出でもよいとする主張もありますが、国が全国民に求めているメッセージを直接伝えきるところに意義があると考えます。2年後くらいには、評価のあり方も変わると思いますが、そのころまでには各教師の責任で作成がまかされている「定期考査」もがらっと変わったものになっているでしょう。教師の作問能力を高めなければなりません。
(2008.04.24 17:52:30)
ブログへのコメントありがとうございました。
「解くことに意味を感じる」問題、「解いたことで改めて学んだ実感が持てる」問題づくりが、今後ますます求められてきます。 このとき、出題者には豊かな構想力と表現力が、解答する生徒には読解力・解釈する力と表現力が、それぞれ問われることになります。 本来、授業そのものもそうあるべきなのですが。 (2008.04.24 18:57:29)
数学Aの問題は間違いだらけ(他は馬鹿らしくて見ていない)
例 2.4 ア 正三角形、正方形は周囲をいうのでなく 中のつまったものである。正方形の面積は0ではない。 4.2にも(見方にもよるが)問題がないとは言えない 5.2 数学とは論理である。 このような問題は、この漢字をなんと読むというのと同じで「知ってるか問題」数学の問題としての妥当性を欠く 決定的な間違い 7.下線部なりたつとき平行四辺形になるとは嘘 図のAB平行CD AB=CDでAとC、BとD結んだ四角形ACDB は平行四辺形ではない 少なくとも凸四角形と書くべきである 8. 証明で AB=CDを使っている AD=BC AD平行BC が平行四辺形の十分条件のときはどうなるのか また次の 角ABF=角CDEはなぜか 証明を必要とする 明らか(このごろの学生は盛んに使う)なら 数学は明らか(公理より論理により導きだされるので)なものばかり ここに書いてある証明を証明の見本とするのは非常に問題がある。 数学は常に本当にこれでよいのかを検討する 反省の学問である。 (2008.04.26 10:01:55)
kurazohさん
>調査は抽出でもよいとする主張もありますが、国が全国民に求めているメッセージを直接伝えきるところに意義があると考えます。 ---------- 私自身が、前の日記で「悉皆調査」に対しての疑問を書いていますww「調査」として行なわれるものの中に、現場の学校へ「学力観」のメッセージが入っているということは思い至りませんでしたから。「新しい学力観」にもとづいた教育を具体化する、しかもなるべく全国に「格差」なく普及・展開するためには、「テスト」を手段にするのは効率よい方法だと思いました。ただ、そうであるならば、問題そのものの妥当性をさらに議論していく必要があるだろうと思います。教育は100年の計ですし、学校の先生方だけでなく、今の大人たちが子どもたちにどのような学力を身につけて欲しいか、その議論の素材として、学力テストの「設問」を考える場はもっとたくさんあったほうがいいように思います。 情報公開はされているのですから、それをどう「活用」するかは国民の「課題」、そして、その「議論」をどのように「政策化」できるのかは、「政治」の問題だと思います・・・ (2008.04.29 01:46:17)
井善さん
ご訪問、コメントありがとうございました。 井善さんのご指摘と問題文、そしてうちの娘の解答・・間違い・・を比べてみて、「数学的に考える力」の評価として設問に不適切な点がある(らしい)、ということがご指摘の主旨であることはなんとなく感じることができましたが、その内容自体は難しくて理解できたとはいえません・・ごめんなさい。この程度の理解しかできない者が、「問題」の妥当性について何かしらブログに書こうというのは間違いかもしれませんね・・ 「知識」を問う設問の文章で、「概念」を粗雑に扱うのはたしかに問題があるかもしれません。ただ、「知ってるか」問題については、複数の「知ってるか知識」をつなげて考えることができるかどうか、という点を確認しているのだろうと思います。 実は、うちの娘は、ご指摘の5-2問題間違えました。彼女は、円錐の体積の公式と円柱の体積の公式、それぞれを覚えてはいるのですが、この設問の形になっていたときに、その二つをつなげて考えることができなかったわけです。 >数学は常に本当にこれでよいのかを検討する 反省の学問である。 ------ この言葉を大切にしながら、既知のものを組み合わせて論理を組み立てていくことを娘と一緒に学んでいこうと思います。 (2008.04.29 02:10:33)
この記事を読ませていただいたのは今日が初めてですが、参考になりますね。
内容に関する評価には賛成ですが、学力の質を考えるような「公論」が成立しないまま、文科省が作ってしまっているところには(日本の民主主義の)限界も感じます。 (2009.03.11 21:27:44)
shchan_3さん
> 内容に関する評価には賛成ですが、学力の質を考えるような「公論」が成立しないまま、文科省が作ってしまっているところには(日本の民主主義の)限界も感じます。 ----- 「学力」についての「論議」はにぎやかですが、これからの時代を切り開いていく人を育てるうえで、どのような「学力」が必要とされているのか、という論点での「議論」はあまり目立ちませんね。 (2009.03.11 23:51:57) |
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