たまには時事ネタのビッグモーターについて
まぁ一応は二輪とはいえ同じ業界人なんで色々と思うところはある。1人の整備士として一番驚いたのは「整備士が客の車をわざと壊して修理するマッチポンプで修理代を水増ししてた」という内部リーク。これはメカニック28年目になるけど、ホントに心理が分かんない。いや…整備士のプライドとか倫理観とか以前に単純に「無駄な作業」じゃね?やらなくていい作業を増やしてまで金取るなら、必要なところだけサッサと終わらせて空いた時間で別の車両の整備に着手した方が利益効率高くね?ホントに利益を追従すると本来そうなる気がするけど、他に着手する車両がないくらいヒマで今ある車の単価上げようとしたん?あの規模の店でそんな暇なことある?(笑)元ビッグモーターの幹部で今は独立したという人が動画で事故の保険金の水増し請求について語ってたけど「最近は事故の見積もり出しても損保会社から立ち合いのアジャスター来ないらしい」とか。んなわけあるか?オレはメカニック28年目になるけど、今まで事故の見積もり出して保険屋のアジャスターが立会いに来なかった事なんか見たこと無いぞ。いや、無保険事故は別だけど。まぁ自動車保険は保険屋が払い出す保険金よりも年間の保険料の方が全然高いから、大手の車屋と保険屋がグルになることは、まぁ考えられなくもない。年間あんだけ自賠責や任意保険や車両保険を扱ってくれるビッグモーターに損保会社から出向社員が行ってるってのも不思議じゃない話ではある。ただ、あの会社規模で保険料の水増しやられると翌年からの保険料が上がるからね。他の健全な保険契約者の金をビッグモーターがポッケしてる事になるんで普通に詐欺だ。まぁ業界内じゃ昔から良い噂は聞かないから有名ではあったけど、メディアに広告料バラまいてCMしてたんで今まではそれで口封じ出来てたところはある。少し前にビッグモーターは一部店舗が国交省から指定工場の取り消しと整備主任者の解任の処分を食らってる。法定点検で定められてた項目の整備を省略してたんだかなんだか、要するに手抜きですな。指定工場まで取得して民間車検やってる工場で平然と不正出来るその神経が図太いというかモノを知らないというか、指定工場の監査って結構厳しいぞ?ちなみに解説を少し。国交省から認可される自動車(二輪も含む)の整備工場には色々な種類があります。☆認証工場地方の運輸局長の認証を受けて自動車の「分解整備」を事業として行うことを認められた事業所です。国家二級整備士資格を持った整備士が整備主任者として在籍してないと取得できない。ぶっちゃけ昔はバイク屋とかクルマ屋でも認証を取らずにモグリで営業してる販売店は結構あった。個人のバイク屋なんか昔は認証ない店とか山ほどあった。ちなみにオレの店は小さいけど認証取ってるんで、たまにお客さんが認証看板を見て驚くことがある(笑)☆指定工場認証工場の中でも設備や管理体制で基準を満たしてる工場に対して運輸局長が指定すると「指定工場」なんて呼ばれる。一般的に通りの良い呼び方で言えば「民間車検場」とか言う方が分かりやすい。要するに車検場に車両を持ち込まなくても車検が取得できてしまう。こっちは国家二級持ちの整備士だけじゃなく「自動車検査員」という資格を持つ人間が必要。取得には特に一般の整備士なら難しい条件はない。二級持ってて整備主任者として1年以上勤務実績があれば受験できる。前の職場で6年も整備主任者やってたオレも当然ながら受験資格はあるし取ろうと思えば取れた。じゃあなんで取らなかったか?この「自動車検査員」という立場は整備士とは責任が大きく変わる。原則として自動車の車検の合否を決める権限は国が持ってる。国土交通省ですな。まぁ厳密にいえば今は「自動車技術総合機構(旧自動車検査独立行政法人)」だから国交省とは別なんだけど。なので車検場までクルマを持ち込んで検査ラインで検査員に合否判定をしてもらう必要がある。この国が持ってる車検合否の権限を代行する事ができるのが指定工場の検査員。俗に「みなし公務員」なんて呼ばれるのは権限や責任が公務員の検査員と同じだから業務を妨害すると公務執行妨害が適応されたりする。つまりですよ?会社が指定工場を取って、そこの検査員になる人間は「会社に所属はしてる社員」の立場とは別に国交省側の代理として「検査員として会社に法令を遵守させる為に監視する責任と義務」も持つ事になる。なので指定工場の工場長とか検査員は場合によっては会社とよく喧嘩します(笑)なのでオレが検査員取らなかったのも「この会社が指定なんか取ってその責任を被せられたんじゃ会社と一年中戦う羽目になる」と思ったからです(笑)で…これらを踏まえた上でビッグモーターです。ビッグモーターは指定工場を何ヵ所も持ってます。そこが手抜き整備や不正で指定工場を剥奪されてるわけです。世間じゃ「会社が悪い、社員は仕方ない」みたいに言いますが、オレに言わせれば「検査員が容認したり黙認してるんだとしたら責任あるぞ?」と思ってます。検査員に会社が手抜き整備や不正を指示したら断るの当たり前で、それでも会社が脅したり強要すれば公務執行妨害だと会社に突きつけなきゃダメだったんです。国交省が聴き取り調査するらしいんで、たぶんその辺も洗い出されると思いますけど。まぁメカニックとして言うなら客のタイヤに穴開ける整備士なんかクビでも器物損壊でもどうにでもなれと思いますが。消防士が放火して自分で消火してるようなもんだ。で…まぁ色々言われてますが「ビッグモーター潰れるの?」に関しては正直オレは今の時点じゃわからんです。ビッグモーターは株式上場してないので財政状態が公開されてないし、現時点で現金預貯金がどのくらいあるかもわかんないし。ただ、中古車販売、修理を業務にするには必要な資格ってのがいくつかあります。〇古物商(買取、販売)〇国家整備士資格(認証or指定工場)〇保険募集人(保険業務)最低限、これだけはないとクルマ屋とかバイク屋は堂々とできません。オレはワンオペで店やってるんで全部持ってますが、別に社長が整備士資格とか保険の資格持ってなくても営業はできる。古物は警察庁の管轄。指定工場は国交省。保険は金融庁の管轄です。この前、ビッグモーターは修理や車検の受付を一時停止すると発表しました。まぁ、しなくてもこの状況でクルマ預ける客もいなそうですが。保険も損保会社から返還請求出されてます。まぁ俺から見れば、いままでビッグモーターとグルで黙認して甘い汁吸ってたくせに土壇場で裏切って被害者ポジション取る保険会社も相当黒い気はしますが、さすがに心中はできないだろうと。修理や車検の売上が止まるのは痛いし保険の取り扱いができなるなるのは痛恨ですが、業務縮小すれば生き残る道はかすかにある。買取した車を業者オークションで売るだけなら不要な資格だし販売業務をやめれば良いだけ。問題は古物商です。今回のビッグモーターの不正。もし被害届が出て器物損壊や詐欺で警察に書類送検された場合。場合によっては古物商の免許の取り消しも無いとは言えない。古物商って警察管轄なんですが基本的には「犯罪歴のある人物、企業には許可下りない」となってるので。刑事事件として立件されたら可能性はある。さすがに中古車の買取や販売ができなくなったら倒産だろう。そこがビジネスの根幹だし。非上場企業であそこまで拡大してるなら借入金は相当あると思う。そもそも大騒ぎしたのは最近だけど去年から業界内では保険の不正水増しなんかは広まってて一部店舗の業務停止や指定工場取り消しの行政処分もオレですら知ってたんで減収は始まってたと思う。6000人の従業員の人件費や全国の店舗販売管理費などのコストに加えて保険会社への水増し請求分の返金を去年くらいから内々で始めてるらしいので、確実に減収してるはず。さすがに今のこの状況で資金繋ぎの融資を受け付ける銀行もないだろうし信販会社も手は出さないだろうから自分の財布で何とかするしかないけど、整備部門の売上は一時停止で止まるし、この状況で車が売れるとも思えない。大量にある在庫を業者オークションで現金化して店舗を売却したりで日銭は繋げるとしても、それはタコが自分の足を食ってるのと同じだからな。形勢逆転の一手なんかあるのかな?まぁ会社風土ってちょっとやそっとの改革じゃ代えられないので経営陣は総退陣で社名変更してお茶濁すか。こういう時に経営者の素質が問われるけど、今のところは会見も無いし給料一年分返還するって言ってるだけだからな。いや、おたくの給料を会社に返しても会社自体が燃えてんだから意味なくね?とは思ったけど。個人的には裏切ってる損保会社も金融庁が調べ入れたら色々出てきそうだけどね。業界のど真ん中にいるような企業の火事を業界の端っこのバイク村のさらに村はずれの丘の上の小屋の屋根で一服しながら火事場見物してるみたいな心境だけど。オレだって利益追求で悪いことしようと思えばいくらでも考えつくもん。だけど、それをやらないのはカッコよく言えばメカニックのプライドとか言えるけど、本音で言えばオレにとって仕事って人生の中で大半費やす活動だからオレが納得できないと楽しくなかろうと。勤め人やってる頃は納得できない仕事でも給料もらう身である以上はやるだけやったけど、それでも違法行為はさすがにやらんしな。オレがもし預かったバイクにわざと傷つけて客に請求したら死んだ師匠が枕元に立ってアナコンダバイスで締め上げに来ると思うわ。予算達成できないとか納期間に合わないとかで手抜き整備を店長から指示されたことくらい俺もあるもん。そのたびに口論にもなったし「できないもんはできないから嫌ならクビにしろ」と言ったのも一度や二度くらいあるし。まぁ内部リークがあれだけボロボロ出てくる時点で社員からも見放されてるんだろうからなー。