カテゴリ:M【映画】 女優
アメリカ映画協会100年史ベスト100 コメント編 PART THREE.
52. 地上より永遠に FROM HERE TO ETERNITY (1953) 今日はこの作品について語りたいと思います。 この映画は第二次世界大戦の中で、日本がハワイの米軍基地を奇襲攻撃した前後を舞台にした作品。 米軍の軍隊内の暴力的な縦社会を批判した部分が縦線、そうしてその状況の中での個人の運命を横線に描いたものかも知れません。 一種の反戦映画とも読めますが、劇中ではみなが、日本人・日本を「ジャップ JAP」と呼んでいます。 戦前の日本人は、欧米人にはもっぱら「ジャップ」という蔑称で呼ばれていたのです。 パリコレで有名なデザイナーの高田ケンゾーが「ジャップ」というブランドで有名になりましたが、ケンゾーをけしからん奴とも思うし、蔑称を逆手にとったという好意的な見方も出来るのかも知れません。 私がある国際コンソーシアム(国際共同プロジェクトチーム)で、打ち合わせをしていた時に、イタリア人が思わず「ジャップ」という言葉を使いそうになって「ジャッ」まで言いかけて気まずい表情をしていましたが、イタリアと言えば、第二次世界大戦では、ドイツ+イタリア+日本の三ヶ国で「枢軸国」という連合を作って、米国+英国+ロシア+中国+オランダの連合国と戦った、いわば仲間なのですが(いい悪いは別にして)、そのイタリア人が日本人をいまだに「ジャップ」と日ごろ呼んでいると言うことには、少なからず反感を感じました。 だいたいイタリア人は、戦争になるとすぐ降参する国で、第二次世界大戦においても、ファシストのムッソリーニに率いられ参戦したものの、例にもれずすぐ降伏し、ドイツ+日本を敵国として寝返った、情けない国です。 (時代錯誤な話ですが、半分ぐらいは本気です) ドイツ人と日本人だけで話す時には、「こんどはイタリア抜きでやろう!」と、冗談半分で話すことがあります。 笑い話でこういう話があります。 ―――――― 「こんど、イタリアが新型のすごい戦車を作ったそうだよ」 「ほ~~? どんな性能の戦車だい?」 「ミッション(=変速機のギア)が、前進一段 バック4段なんだ」 ―――――― 逃げ足の早いイタリア人を揶揄したジョークですが。 そのイタリアに「ジャップ」なんて。 「お前たちにだけは、言われたくないわ!」 日本人がジャップなら、米国におけるイタリア人は、「ウォップ」と呼ばれています。 ウォップ=WOP WOPは、「without paper」の略で、書類無し。 書類とは、この場合正式なパスポート無しに密入国するイタリア人を揶揄して言う言葉です。 それはそれとして、映画の舞台は、ハワイの真珠湾にあるある米軍基地。 この部隊に転属となった兵士、モンゴメリー・クリフト(私が最も美男子として評価する男優の一人で、都会的な影のある内向的な二枚目です 「陽の当たる場所」「終着駅」「赤い河」などに出演しています)は、元ある部隊のボクシングの選手でしたが、試合中の偶然の事故で相手を死亡させてしまい、それ以降、ボクシングだけはやらないと誓っています。 しかし、このハワイの部隊の上司である将校、ホームズ大尉は、自分の部隊のボクシング・チームの成績を上げることにより自分が昇進したくて、有名な選手であったモンゴメリー・クリフト(映画ファンの間ではモンティーという愛称で知られています ジェイムズ・ディーンが「ジミー」、ハンフリー・ボガートが「ボギー」と呼ばれたようなものです)に、自分のチームに参加して欲しいのですが、モンティーはそれをガンとして拒絶します。 そこで部隊をあげてのいじめが始まります。 旧日本軍の壮絶な虐めも有名ですが、米軍でも負けず劣らず。 軍隊という世界はどこでも変わらない訳です。 このモンティーに比較的理解を示す男気のある直接の上司、軍曹はバート・ランカスターが演じています。 ランカスターという男臭さのかたまりのような俳優は、こういう下級将校が実に似合う俳優です。 彼が部隊の本部の前で同僚と話をしていると、オープンカーを運転して、夫に会いに来たデボラ・カーを見かけます。 彼は、その美貌と気品に一目惚れします。 「この殺風景な兵舎に彼女が来ると、ここがまるでロイヤル・ハワイアン・ホテル(豪華ホテル)であるかのように感じる」 彼はそうつぶやくのですが、同僚は「あの奥さんは案外、話のわかる女だよ」と、意味深なことを言います。 デボラ・カーは、かって自分が妊娠中に女遊びにうつつを抜かし、産気づいた彼女が流産した現場にも間に合わなかった、それ以後妊娠できない身体になったことで、ホームズ大尉に激しい憎しみを持っていて、夫婦仲は完全に冷え切り、そのかわりの愛情を求めて軍隊内でも色々な男と関係を持ちます。 ランカスターは大胆にもある雨の日、ホームズ大尉が不在であることを知りつつ大尉の自宅を訪れます。 夫の不在中のランカスターの突然の訪問にとまどいつつも、デボラ・カーが「濡れるから中に入りなさい」というと、ランカスターが軍隊の雨具(レインコートに防水帽)から雨の滴をしたたり落ちさせながら、「私は、もう濡れているよ」と答えます。 デボラ・カーは英国的な縦のストライプの清楚なシャツを着て気品に溢れていますが、どうじにセクシーなショートパンツ姿でもあり、ハワイという開放的な風土での退廃との入り交じった風情です。 ランカスターは強引に部屋に入り込み「あなたの旦那が今飲んでいるように、私もここで一杯飲みたい」と言います。 デボラ・カーは、ジッとランカスターを見つめ、それから、ウィスキーのボトルから直接グラスに注いで、らんかすたーに差し出します。 しかし、そのうちにデボラ・カーはランカスターの訪問の理由が、業務上のものではないことを知って、その瞳を憤怒で燃え上がらせます。 「私はあなたが思っているような女ではないのよ! 私は washd out、 使い古しのみじめな女よ。子ども産めなくなくなった役立たずの・・・」 思いがけない彼女の告白と激しい反応にとまどったランカスターは、帰ろうとします。 「ちょっとまって 私は 私は本当にどうしていいかわからない」 そう言う彼女を見つめたランカスターは、やがて彼女に近づき、おたがいに抱き合ってキスをします。 二人の背景の窓の外は、二人の欲情を象徴するような土砂降りで、木の葉が風に揺れます。 === 続く === お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[M【映画】 女優] カテゴリの最新記事
|
|