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みなさん、こんにちは。 「続」という割には、だいぶ間が空いてしまいましたね(^^;。 ということで、今回は効率の話です。MIRAIを取材した際、何人かに「総合効率はどれくらいなんですか?」って質問したのですが、みなさん口を濁すんですよね。逃げ口上は「我々ができるのはクルマまでで、水素をどう作るかによっても異なりますので」。 答えを知っていて質問する僕も、相当意地が悪いのですが(^^;、燃料電池自動車の効率って、決して高くないんですよ。 水素を工業副製に頼っている間は、廃棄物の利用ですからエコだと言えますが、需要が増えれば、天然ガス改質に移行するしかありません。この製造効率の目標は、70%とされています。しかし、できた水素を運ぶためには圧縮する必要があり、このエネルギーが馬鹿になりません。資源エネルギー庁の資料によれば、水素スタンドで充填する段階での効率は2015年で52%、2030年の目標が54.7%に過ぎないんです。 では、車載用のPEM型燃料電池の効率はというと、45〜50%ぐらいなんですね。高い方の50%を取るとしても、常に最大効率点で運転できるわけではありませんから、大甘の9掛けとして45%。総合効率は掛け算ですから、水素製造に2030年目標値を使っても、24.6%にしかならないんです。 では、ガソリン/軽油の製造効率はどれくらいかというと、原油から分留する場合は、どちらも85%ぐらいです。現在、量産されているガソリンエンジンの最高効率は38%を超えています。スズキの会長が、「それは”最高”効率だろ? うちのエンジンはJC08モードの平均効率で33〜34%だ」と豪語していましたから、計算にはこの数字を使いましょう。ただし実走行ではJC08モードの7掛けぐらいになりますので、33×0.7=23.1%ですね。これに燃料製造効率の0.85をかければ、19.6%になります。 さらにスズキは、「2020年代には平均効率40%を目指している」と言っておりますが、この数字を使えば、総合効率は23.8%となり、燃料電池車と0.8%しか差がなくなってしまうんですね。しかもスズキですから軽自動車で作るはずで、価格は100万円以下になると考えられます。 しかもこれは、エンジンだけの効率です。モーターと組み合わせてハイブリッド化すれば、回生したエネルギーを走行に回すことで、10%ぐらい稼げます。となれば、現状でも22.4%、将来的には27.2%と、燃料電池車の2030年目標値を上回ってしまうんですね。 もっと言えば、すでに最大効率が40%を超えているディーゼルエンジンを使ってハイブリッド車を作れば、総合効率の点では、今の技術でも上回ることができるんです。 でも、誰もこのこのことは口にしようとしません(^^;。 それじゃ何のために水素エネルギーをやっているのかといえば、端的に言って「電池の代わり」なんです。自然エネルギーで発電した電気を貯める手段として、水を電気分解して水素に変えて貯蔵し、必要な時にそれで発電しよう、というのが大きな目的なんですね。 というわけで、本来ならば燃料電池車は、生活基盤エネルギーが水素に変わった時点で(変わるのか?)登場すべき技術であり、現状では順番がアベコベなんです。そんなものに1台あたり200万円もの補助金を出すのは、税金の無駄づかい以外の何物でもありません。さらに、月販計画台数の約半数を官公庁が税金で買っているそうなので、二重の意味で税金の無駄遣いになっているわけですね。 予約受注はすでに1000台ぐらいになっているそうですが、おそらくほとんどの人は、実車を見ることなく買っているものだと思われます。納車されたら、後席足元の狭さが堪えきれずに手放す人が続出するんじゃないかと、今から危惧しておりますですよ(^^;。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
あけましておめでとうございます。
いつも興味深く読ませていただいています。 >自然エネルギーで発電した電気を貯める手段として、水を電気分解して水素に変えて貯蔵し、必要な時にそれで発電しよう、 ということですが、他の方法と比べて何が違うのか、メリットデメリットなど教えて頂ければと思います。 (Jan 2, 2015 01:41:32 PM)
クールソーダさん
いつもご来訪いただき、ありがとうございます。 すっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。年末に「年明けまでに」という仕事を受注してしまい、それが済んだら「急ぎで申し訳ないんですが」という仕事が飛び込んで、昨日まで多忙を囲っておりました(^^;。 >ということですが、他の方法と比べて何が違うのか、メリットデメリットなど教えて頂ければと思います。 「自然エネルギーで発電した電力を蓄えておく方法」としては、水素の他に、蓄電池の利用と、揚水式発電所の活用が考えられると思います。 後者はすでに、原子力発電所の夜間余剰を利用するために、全国に45箇所/27,437.2MWが整備されていますが、原発がすべて停止している現在、利用率はゼロ。これを活用すれば、設備投資は不要です。電気を位置エネルギーとして蓄え、再び電気として利用します。エネルギー効率は70%前後と言われています。 蓄電池の充放電効率は、ナトリウム硫黄電池やニッケル水素電池で約90%、リチウムイオン電池で約95%とされています。ナトリウム硫黄電池は資源が豊富なので低コストですが、貴金属を使うニッケル水素やリチウムイオンはコストが高いのがデメリットですね。それから、サイクル寿命に限りがある(エネ庁資料ではNaSが4000、NiMHが2000回、Liが3500回)ため、定期交換が必要ということでしょう。自然放電があるというのもデメリットと言えますが、現在は電力需要がかなり正確に予測できますから、自然放電が問題になるほど長期に蓄える必要がある事態にはならないでしょう。 一方で、水を電気分解して水素を作る効率は、60~70%。さらにこれを電気として利用するには、効率45%の燃料電池を経由する必要があり、総合効率は31.5〜27.0%になってしまうんですね。 すなわち、同じ電力量を利用しようとすれば、効率の低下は規模で補う必要が生じ、それだけたくさんの発電風車や太陽光パネルが必要になる、ということです。 こうして比較してみても、水素だけが選択肢ではないことがわかりますし、仮に水素を選択したとしても、まず社会基盤を水素に対応させることを優先すべきであり、燃料電池自動車を先行させるのは、順序が違う、ということがお分かりいただけると思います。 (Jan 21, 2015 09:41:51 AM)
安藤 眞さん大変詳しい説明ありがとうございます。
トヨタが特許を無料公開しますと宣伝してもライバルメーカーの反応が全然なのは、説明にあるようなことも理由なのでしょうね。 (Jan 25, 2015 01:26:24 PM) |