カテゴリ:読書感想
ウルフの『ダロウェイ夫人』『灯台へ』と読んできて、これは異色の作品だ。
『両性具有の詩人オーランドーの伝記―の体裁を取りながらヴァージニア・ウルフが仕掛けた、無数の隠し絵読み解く楽しみ。シュールレアリスティックな歴史小説、アレゴリカルな文学史、メタ・バイオグラフィー…この麗人の時空を超えた冒険談は多層的な読みを可能にする。』 という表紙折り返しの文章は読み終わってこそわかるが、「シュールレアリスティック、アレゴリカル、メタ・バイオグラフィー」って?何がなんだかであった。 知的なファンタジーであろうと、ちょっとわくわく読み始めた。すっかり楽しんでとはいかなかったが(というのはイギリス文学には詳しくないし、なにせ知識教養たしなみがないのだから)片鱗はわかったつもりになった。 「オーランドー」、初め名門の美少年、成長をして恋をする美青年、失恋のあげくイギリス落ちしてアジア(トルコ)へ、そこでなんだらかんだらあり、ある時点で美しい女性(にょしょう)に変身。7日間昏睡して女に変身したのがトルコのコンスタンチノープルで(?!)。望郷の念、止みがたくイギリスへ帰る。それから文学的に成功し、結婚して子供を産んで、詩も受賞する。 しかも、時空を超えて300年(エリザベス朝から20世紀まで)冒険と詩作に生きるオーランドーという名の両性具有者(これがポイントでもあるのだけれど、とらわれ過ぎてもいけない)の伝記なのである。 と、あらすじはおもしろいのだが、何しろ構造が三重にも四層にもなっているといわれる如く、お終いの解説がなかったらわからなかっただろう。 三つだか四つだかの読み方はさておき、舞台となった英国一の広大な私園(パーク)、貴族の館がひとつのに街のように見え、365部屋の寝室、豪華な広間、書斎などなど。広い庭園は勿論、樫やブナの巨木が点在というスケールに、酔ってしまった。 ロンドンはチラッと見たけれど、そういうところは観光したことがなかったのが惜しまれる。一度見てみたいものだ。 処々にハッとする文章が沢山ある。「性差は服装で決ることもある」とか、「書くことは全人格をもってする」だとか、「作家と時代精神の取引ほど限りなく微妙なものはなく」だとか。(書けばきりがなく、奥が深いが) 『ダロウェイ夫人』『灯台へ』といい、『オーランドー』といいウルフの他の作品は、研究書やら論評も多いとうのは、なるほど食指が動くのだろうな、とますます理解したのであった。 ↓みすず書房、読んだものではないけれどやっぱり欲しくなった。 文庫本(ちくま文庫)もある お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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