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書評日記  パペッティア通信

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Nov 2, 2005
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カテゴリ:経済


なかなか目配りのいきとどいた、中国経済の概説書が出ています。
本日ご紹介するのは、香港出身の著名な経済アナリスト、関志雄。

1992年、南巡講話、中国共産党第14回党大会以後、「社会主義市場経済」の道をあゆんでいる、中国。「労働に応じた所得分配」「計画による資源配分」「公有制」=社会主義から、「資本を含む生産要素に応じた所得分配」「市場による資源配分」「私有財産」=資本主義への過渡期。その変遷を理解する上で、たいへん有用な本になっています。

簡潔に内容を紹介しておきましょう。

● 旧体制の外側に成長させた<新体制>を通じて、旧体制を改革する条件を創出することを目的とした、中国の漸進的改革

金融引締・財政緊縮、政府介入の縮減、市場による価格体系、外国為替自由化・自由貿易を特徴とする、による東欧・ロシアでおこなわれたビッグバン・アプローチ(ワシントン・コンセンサス)。その対極にある中国。こうした、「実験と普及」「新体制の育成」方式のデメリットは、2つのうち片方の、旧来からの利益構造を特権的に温存することで、公平かつ競争的市場環境が、歪んでしまうことにあるという。平均でみると、経済で「小康社会」建設を達成した今、中国では、経済・教育・社会全般における「全面的な小康社会」(江沢民)を目指しているという。そのため「5つの調和」として、都市農村格差・地域格差の是正、社会・公共サービスの充実、などが目指されているという。

● 「所有者不在」を改めるため進められる、国有企業「民営化」
● 「不平等」の原因は、市場経済化の不徹底にあると見る新自由主義者と、市場経済化にあるとする新左派の争い


求められている、所有と経営からの政府の完全撤退。国有企業改革は、インセンティブ・メカニズムを改善させるため、権限委譲と利益譲渡によって進められてきたものの、深刻なコーポレート・ガバナンス欠如と「政企不分」(行政による企業機能の代替)という難題に、直面しているという。それは、「ソフトな予算制約」問題によって助長され、国有財産の「私有化」(流出)と債務の「公有化」を生んでいるらしい。ところが、国有株・法人株・社会流通株に分けられ、会計・情報操作も横行しているため、国有株を上場させたくとも、証券市場には中小株式所有者たちの強い不信が充満。また、両派の争いは、「公有制」をめぐる議論にも及んでいるという。公平性の観点から民営化批判・公有制維持をとなえる新左派。それに対して、新自由主義者は、「独占を通した民間への侵食」「所有権の明確化されていない資産侵食」を問題視して、「国有財産の流出」さえ体制移行コストのひとつ、とみているとは知らなかった。目からウロコ賞を差しあげたい。

● 1990年代に噴出するようになった、国有銀行改革

1980年代まで、物不足・売手市場だったため、国有企業向貸出に貸倒リスクがなかった中国。1995年「銀行法」成立まで、融資に自主権が乏しく、経営管理・リスク管理はないがしろにされていた。さらに、「財政の役割」「経営への政府介入」もあって、不良債権は雪ダルマ的に増えていったらしい。不良債権買取は、四大国有銀行の不良債権比率を2割にまで下げ、本格的な外銀の参入を前にして株式上場準備がすすめられている。とはいえ、総資産収益率は依然低いままで、国有企業改革は進んでいない。金融リスクの解消したものの、かわって財政リスクが膨れあがっているという。

● 歓迎すべき、WTO加盟と人民元改革

経済改革の優先課題として温家宝首相は、農村改革(租税・教育・流通・金融・土地管理)、国有企業改革、非公有経済の支援、金融体制改革、財政・税制・投資改革、市場体制の整備をかかげている。WTO加盟は、先進国市場へのアクセスのみならず、自国市場開放を通した、「人治」から「法治」への転換として歓迎すべきことだという。事実上、資本移動が自由になっている中国。人民元改革は「金融政策の独立性維持」のためにも不可欠であり、さらなる人民元切上げは、「通貨バスケット制」による管理変動相場制でも不可避という。ただ筆者は、人民元切り上げは交易条件の改善につながるものであって、「市場より工場」としての利用側面が強い日本企業にはマイナスに作用し、アメリカには米国債購入中止によるドル下落と金利上昇圧力として作用すると見ているようです。

● 「平和台頭」の実現に欠かせない、資源制約の回避

平和台頭を目指す中国。その実現には、高成長持続が必要で、資源制約を回避するには、これまでの「投入量拡大」から、「生産性上昇」にもとづいた発展戦略への転換が求められているという。21世紀の前半には、「共産党一党独裁の終焉」「中台平和統一」「米中GDP逆転」の順で歴史的事件がおこる、という予言によって、本書はおわる。

分析は、総じて堅実そのもの。国営企業割合と反比例して経済成長率が落ちていること。内・外資企業の法人所得税率格差(33%と15%)の大きさ。経済特区は、もはや特区ではない。なによりも、樊鋼氏の提唱する「改革原動力は民間主導」説、「漸進的改革の成功は、今必要となっているビッグバン・アプローチを難しくしている」説は、なかなか興味深いものがあるでしょう。

ただ、ちょっぴり問題もあるのも事実。結局、なにがジレンマなのか、最後までさっぱり分からないし、説明もない。たんに「トレード・オフ」関係のことを言っているのであれば、そんなことくらい、どこの経済主体でもあるだろう。題名に偽りあり、ではないか?。また、人民元切り上げコストを減らすため、短資流出入管理強化と、外貨市場の整備によるリスク削減が、「同時」に提言されるセンスも疑問。この人は、「新左派」なのか、それとも「新自由主義」なのか、最後まで判然としない。

さらにいえば、どの概説書もそうであるが、中国人民銀行と四大国有銀行の金融市場における取引関係が、ブラックボックスのままにされていて、まったく分からない。ここが明らかにされないかぎり、「国有銀行改革」の当否・成否なんて、言えるはずもないんでは? また、さかんに国有「商業銀行」が唱えられるものの、なんのことはない、長期信用銀行がない以上、ユニバーサル・バンキングにすぎない。となると、株式市場ルートが頼れない以上、結局、国有企業向・私営企業向設備投資は、今のまま、4大国有銀行担当になるんでは? その場合、人民銀行は彼ら市中銀行へどのように成長通貨を供給する体制になっているのか、とてつもなく重要になるであろうに、さっぱりわからんぞ。人民銀行は、公開市場操作と割引政策の2本立てのまま? 国有株市場消化もかねて、人民銀行は国有株抵当貸付ルートを市中銀行に開く、といった予定はないのか? このへん、まったく伝わってきませんな。

とりあえず、中国経済の概説書を読んだことのない人には、お薦めかも。
概説書レベルには飽きた、という人には薦めない。

評価 ★★★☆
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Last updated  Nov 24, 2005 12:42:41 AM
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