タンチョウ釧路空港から羽田に着く少し前に、キャビンアテンダントの人に、声をかけられた。
本を真剣に読んでいるフリをしてたので、気がつかなかったのだが、確かに私の顔を覗き込み、私の名前を呼んでいる。
「私たちも神戸に行きますので、またよろしくね」とニッコリ微笑みかけられるのであった。
いくら私がモテモテ歴ウン十年といっても、もう中年ではあるが、そんなに気安くデートに誘ってもいいのだろうか、という疑問を呈すこともなく、こちらの身分も密かに、ちゃんとばれているのだなと判明したのであった。こちらこそ(そこんとこ・・とは心の中だけで思い)よろしくお願いします、と言ったあとに、時刻表を見ると、確かに機種が同じである。この飛行機は釧路-羽田(1時間休憩、給油)-神戸と飛ぶのであるな、そのまま乗務員も一緒に飛ぶのであるなと予想するのであった。と思ったら、神戸便の出発ゲートにやっぱり到着したのであった。
羽田空港で、1時間後、颯爽と、凛々しく、ばっちり決めて(草履だったけど)、ボーディングを果たした私であるが、ちゃんと、そのキャビナテンダントの方は私のシブイ風貌を憶えていてくれて、待ってもいないのに、仕事の都合上或いは、お世辞上「あッ、お待ちしてました!」と営業上満面笑顔で迎えてくれたのであった。私のほうは営業でないし、お世辞でもなく、少し照れて「お願いします」と言ったのであった。
全員が同じクルーだったのだが、よく考えれば、パイロット同様、客室乗務員の方々も訓練されて、乗ることが出来る機種が決まっているのだった。乗務員の仕事は安全確保だから、違う機種の飛行機には勝手が違うから乗れないわけですね、お茶や食事のサービスは、あくまでついでついで。といいながら、ウトウトボケ中年になっていく1時間なのであった。
神戸空港では、勿論、彼女を待ち伏せすることもなく、(だってなかなか出てこないだろうし、多分、終わりのミーティング反省会があるかもしれないので。それに電話番号書いたメモも貰わなかったし)、颯爽と超高級車(超低燃費車)に1人乗って帰るのであった。