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カテゴリ:環境
14日、COP15のフォーマルな会合はほとんど水面下…ということもあって、生涯教育の国そして福祉の国デンマークの姿を、せっかくの機会だからせめてその片鱗でもうかがおうと、高齢者のクラブと二つのフォルケホイスコーレを訪ねた。 メニューが豊富なため、5時半起床7時出発となかなかハードだ。スウェーデンのマルメにあるホテルを出てコペンハーゲン中央駅前でこのツアーに同行する愛媛県の学生グループをピックアップし、まずコペンハーゲンから車で一時間弱ほど北に位置するインターナショナルカレッジに行き、同校で長く教員を務められたニールセンさんから、「福祉の国デンマーク」と題してのレクチャーを受ける。
ニールセンさん レクチャーはデンマークを初めとする北欧の国々が今日に至る福祉の国を築くまでの歴史的経緯とその要因を掘り起こす非常に興味深い内容だったが、このテーマに深入りすると底なし沼にはまりそうなので別の機会に回すとして、今回はデンマーク特有の民間成人教育システム、フォルケホイスコーレに限って紹介しようと思う。 フォルケホイスコーレは、元はデンマークの農民たちに国家への帰属心を育てようと始められた成人学校で、日本の近代教育制度形成にも影響を与えてきた。現在は高等学校を卒業してから進路を決定する前のいわゆるモラトリアム期間に自分の生きる道を考えるところとして、また一定の職歴を経た社会人がまとまった時間をとって自らの人生に改めて向き合い、新たな生き甲斐を発見し社会に戻ってゆくための教育施設としての機能を果たしている。最高時に比べれば減ったが、現在デンマーク全域に70以上のフォルケホイスコーレがあるという。 このような教育目的であるため、入学試験も受験資格もなく18歳以上でありさえすれば誰でも入学が認められており国籍すらも問われない。基本的に全寮制で、その寮費(家賃)、食費、学費の総額の3分の2はデンマーク政府が負担する。コースは8週間から最大24週間まであるが、学生が負担するのは平均して月10万円程度だ。 授業は少人数のワークショップがほとんど。それぞれのホイスコーレが国際理解、芸術、ジャーナリズム、言語など学ぶテーマを掲げているが、特定の技術や知識を身につけることではなく、授業や共同生活での社会階級や国籍を超えた交流から自己を見つめ再発見し、より自分らしい生き方に出会うことが目的だから、試験もなければ成績評価もない。テーマに基づく共同の探求での教師を含めた人間同士の交わりそのもので、教育目的は完結している。共通する存在目的は、こうした交わりで鍛えられる民主主義の学校ということなのだ。 今回訪ねたのは、インターナショナル・ピープルズ・カレッジとクロッシング・ボーダー。前者は国際人民大学とでも訳でばよいのだろうか、世界中から学生を受け入れ世界市民としての学びを提供することを目指している。後者は「壁や境界を平和的に越える」という意味だと説明された。超える「壁」は国境であったり差別であったりするわけだが、よりよい人間的なコミュニケーションについてのトレーニングがテーマだ。 インターでニールセンさんの講義を聴いた後、近所の高齢者施設の訪問(これもまた次の機会に紹介する)を挟んで午後、三クラスに分かれて授業を参観。コジローはヨーロッパがテーマの教室を覗いてみたが、日本人2人を含む8人の学生と先生が「プラハの春」当時のチェコ映画に込められた政治的メッセージについて、映像を見ながら議論していた。 ヨーロッパ教室でのワークショップ その後、校長先生(名前は聞きそびれた)から先に紹介したようなフォルケフォイスコーレについてのレクチャーを受け、さらに4時を過ぎてすっかり日が暮れてからクロッシング・ボーダーに移動し、ガルド教師の指導で初歩的なコミュニケーションのワークショップを体験、最後に夜に開かれていたコーラスのクラスを見学して帰路についた。相当ハードなスケジュールだったが、刺激に満ちたよい体験ができた。 校長先生 ガルバ先生 コーラスのクラス
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