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佐遊李葉  -さゆりば-

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2006年09月23日
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カテゴリ:孤舟
 だが、さきくさも男の後を慕って傀儡子の元を抜け出して来たとわかると、禅師の母は馬鹿にしたようによく言っていたものだ。男の甘言など真に受けて、後先考えずに飛び出して泣きを見るとは。母子そろって、なんという愚か者じゃ。血は争えぬわい。

 だが、さきくさの今様は確かに人の心を打った。

 その美しい歌声は瞬く間に江口で評判となり、さきくさの噂はすぐに京にまで知れ渡った。そして、都の貴顕はおろか宮中の方々にまで親しく招かれて今様を披露するほどの、京でも指折りの歌い手の一人になったのである。

 その頃のさきくさの歌声を、まだ幼かった禅師もかすかに覚えている。艶やかで張りのある、それでいてどこか寂しげな今様の調べ。ちょうど遠くで銀の鈴の音が鳴るのを聞くような、そんな響きのある声だった。

 だが、さきくさの栄華も長くは続かない。

 芸を重んじる傀儡子と違って、遊女は容姿の美しさが命だ。さきくさも三十歳も半ばになると都落ちするように京を離れ、ひっそりと江口へ戻って来た。そして、それ以来ずっと禅師の家に厄介になって、ただの遊女として客を取り、その客さえ寄り付かない年になると、遊女が客引きのために出す舟の艫取り女になった。

 その頃売出し中の若い遊女だった禅師に、さきくさは舟の艫を取って供をし、何かにつけて行き届いた世話をしてくれた。そればかりか、都風の客あしらいを教えたり、昔の客を紹介してくれたことすらある。

 確かにさきくさにはずいぶん世話になった。先ほど供物の米を持って来て供えたのも、少しはまださきくさへの恩義を感じているからだ。





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最終更新日  2006年09月23日 11時04分51秒
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