テーマ:DVD映画鑑賞(13618)
カテゴリ:外国映画 た行
眠り姫は王子様のキスで目をさます。 なんとも、エロティックなお話です。 事故をきっかけにこん睡状態となって眠り続ける恋人を看護する二人の男。介護のお話かなと、思ったのです。一人は、せっせと話しかけるけれど、もう一人はどうしてもそんな気になれない。話しかけることは、大切なんだよというお話?と、思ってみ初めたのですが、どうも、そういうはなしでは。なかったような。 眠り姫や、白雪姫が王子様のキスで目覚めたように、女性は、男性からの性的なシゲキによって、女として目覚める。男性は、生まれた時から男だけれど、女性は、男性からあたえられる性的な行為によって、初めて女としての生を受ける。 物語のはじめに主人公マルクと、ベニグノが、バレエを見ている。二人の女性バレリーナは、病んだ女性の役。それぞれに踊る二人のうちの一人に、男性ダンサーが、舞台の上のたくさんの椅子を彼女の動きに合わせて、彼女にぶつからないように、どけていく。そのシーンをみながら、涙するマルク。すごく感受性の高い人なのかなと、思ったのだけれど。実は、彼は、この舞台を見ながら、以前ずっと、麻薬にはまってどうにもならなくなった恋人を救うために努力していた日々があったことを思い出していたから。舞台は、病気の恋人のためにつくす男性の姿を象徴的にあらわしています。 ベニグノは、病院で日々アリシアの看護をしているのだけれど、それは、恋人だからではなくて、看護師としての仕事だから。けれど、アリシアが昏睡状態になるまえから、ベニグノは、アリシアを知っていて、恋焦がれていた。彼女の看護人となったのは、偶然のラッキー。けれど、恋する人を毎日世話することのできる幸福。 その一方、同じように昏睡状態になった恋人リディアの看護にいまひとつぴんとこないマルク。彼は、冷たいのか。けれど、たぶん彼は、それほどリディアを好きだったわけではないのでは。その一方で、その事件をきっかけに、病院に通いつめる中で、同じ病院内のベニグノと知り合い、そして、アリシアに出会う。 けれど実は、リディアと出会う前にマルクは、麻薬にはまった恋人を麻薬から救いだすために、ベニグノと同じように献身的な日々を送っていたのだ。映画の中で、蛇に驚いて全裸で逃げ出すかつての恋人のシーンが出てくる。蛇は、男性をあらわしているし、逃げ出した時裸体だったということは、恋人は、マルクと関係する直前で、男性としての彼を拒絶したことを意味しているのだろう。彼の献身的な行動にもかかわらず、結局恋人は、他の男と結婚してしまう。 そして、リディアの事件。かれは、献身的につくしてさられた恋人とのことに傷ついていて、もういちど、また、恋人に尽くすことにとまどいがあったkかもしれません。だから、その後あらわれたリディアの元恋人にあっさりと、リディアを託して、自分は、旅立ってしまうのですから。 そしてそれでもなおひかれるアリシア、との出会い。彼は、眠ったままのアリシアにひかれていく。 そんなある日、ベニグノは、寝たままのアリシアにセックスしてしまう。隠しても、結局ばれてしまい、彼は、投獄されてしまう。そして、絶望のはてに、自殺してしまう。 ところが、妊娠と出産をきっかけにして、アリシアは覚醒してしまうのだ。 目覚めた彼女と、マルクは、バレエの劇場で出会う。 めざめた彼女は、初めて会うはずのマルクをずっと目で追い、見つめ続ける。それは、まるで、彼に惚れているというよりは、生まれたばかりのヒナが最初に見た動くものを親だと思い込むインプリンティング(すりこみ)の状況に、似ている。 こん睡状態のアリシアに日々世話をし、肌に触れ、話しかけ、セックスし、妊娠させ、出産させたのは、ベニグノだったのに。彼女の女としての生を目覚めさせ、誕生させた王子様は、ベニグノだったのだけれど、彼はもうこの世にいない。そして、彼女が眠り続けていた時、ベニグノとともに、彼女のそばで話したり、接したりしていたのは、マルクだった。(もちろん、一緒にリディアもこん睡状態でそこにいたんですけどね。)アリシアは、マルクの声や、彼の出す、人としてのエネルギーを感じていた。彼女の中でベニグノと、マルクの存在が混濁していたのかもしれない。覚醒した時、目の前にいない王子様のかわりに、マルクを自分の王子様だと、思ったのかもしれない。女としての彼女を誕生させた親としての、男としてのマルクの存在。 ベニグノは、自殺する前にマルクに会い、自分の部屋をマルクに譲っているのだ。その部屋は、日々、ベニグノが窓越しにアリシアのいるバレエスタジオを見つめ続け、アリシアを恋し続けた部屋。 ベニグノは、アリシアを自分の代わりに、マルクに託したのだと思う。 眠り姫が目覚めた時に王子様が入れ替わっているなんて。 かくも女性は女として、男によって、誕生させられる。そんな、エロティックなお話だったのだと、思います。そう、思えば、映画の中で、アリシアの美しい寝顔や、着替えのシーンの美しさや、何度も映し出される裸体のわけも分かろうというもの。 病人に話しかけることがいいことだとか、寝てる女を襲うなんて強 姦じゃないかとか、そういう道徳的な部分は、それなりに処理されているわけですけどね。 死体置き場の死体に行為をしたことで、本当は死んではいなかった女性が生き返ったという事件と、長く昏睡状態だった女性が目覚めたというニュースから、監督はこの話の着想を得たのだそうです。 こん睡状態の女性に性的行為をする。でも、それが、夫婦や恋人だったら、あたらしい衝撃はないわけですし。そして、寝ている女性を全く知らない状況での行為は明らかに欲望だけ。だとすると、昏睡状態になる前の彼女を知っていて、そして、彼女をものすごく恋い慕うけれど、恋人ではない男性でなければならないと思うのです。それが、ベニグノ。それでも、四年間ただ、ずっと彼女の世話だけに生きがいを感じていたはずのベニグノが行為におよんだきっかけとして、彼がみた映画のせい、と映画では描かれています。直接的な原因はそうかもしれないけれど、マルクの出現がベニグノに無意識な危機感を与えたのかもしれないと、思います。実際最終的には、アリシアは、マルクと結ばれそうな展開になったのですから。 そして、リディアは、女ではあるけれど、その身のうちには、男性性をもっていて、だから、マルクの夢の中で、リディアにキスされたマルクの方が、目覚めてしまう。蛇をこわがるリディアは、たぶん、心のどこかで男性を拒絶していて、だから、マルクは去ってしまうし、恋人の看護にもかかわらず、女として目覚めることは出来なくて、目覚めることなく、死んでしまったのかもしれません。 男性は性の快感を局所的に感じるものだそうですが、女性は、体全体で感じるもので、それが、こん睡状態から、覚醒へのきっかけとなるのかもしれないし、それは、女としての人生の目覚めを、暗に意味しているような、スクリーンの一枚向こう側にある監督の意図だと、わたしは、思ったのです。 トーク・トゥ・ハー@映画生活 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年08月05日 13時32分53秒
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