カテゴリ:読書ノート
『シュナの旅』のネタモトがこの本にはいっている『犬になった王子』だというので読んでみました。 中国の各地方に伝わる民話伝承が六つ入っています。 そしたらね。面白いので、読んでたら、ついつい全部読んでしまった。 それが結構スペクタクルで面白いのですよ。このお話をそのままアニメにした方が監督が無理して自前で作った話しよりよっぽど面白いし、いろいろと構成や表現工夫する余地がいっぱいあって面白そうなんだけどね。 映画もいい加減売れ筋の原作のネームバリューと固定ファン目当ての売れ筋原作の映画化なんてことやってないで、こういう話から作っていけばいいのにね。 『犬になった王子』は、 肉しか食べていないチベットの小国の王子様が神様に穀物の種をもらいに行こうとする話です。 このあたりの設定をもらって宮崎駿氏は『シュナの旅』を考えたようですが、それ以外のストーリーの部分はほとんど違ってます。ほんとに別物の物語になってます。 だから、それぞれに面白い。肉しか食べていなかった国で、穀物を食料にしようと考えるというのは、古代の狩猟民族が農耕民族へと変遷する時の大変さが物語として伝えられているのでしょうか。今農作に使われている穀物も自然のものから、かなりの苦労と努力と試行錯誤によってよりよいものへと品種改良されてきた歴史もあるのですからね。 『シュナの旅』のテーマはもっと深く、現代の時代への問題提議があるようなのですが。 そして、本のタイトルにもなっている『白いりゅう黒いりゅう』は、 毎年6月24日になると、暴れだして、雨や嵐を起こして人々を苦しめていた黒いりゅうをやっつける話。 彫刻の名人が彫り上げた木彫りの白いりゅうに命を吹き込んで、黒いりゅうと戦わせます。一回目は負けてしまいますが、翌年は、りゅうに鉄のつめと牙とウロコをつけることで、とうとう黒いりゅうに勝つことが出来たのでした。 この物語を読んでいて、これはもしかして、『もののけ姫』のネタモトかなと思いました。 龍というのは、まさに自然の驚異そのものです。そして、その自然に対して、人間が自分達の科学力、技術力によって打ち勝っていく物語です。一度は負けたリュウが鉄によって勝つことが出来たというのは、『もののけ姫』の中で、鉄が自然を破壊する脅威になっていった物語と随分似ているなと思ったのでした。 黒いりゅうが敗れた時の描写に 「淵のまわりのくらい林は、そのときのひびきで、きりひらかれ、日の光がさしこむようになりました。淵のそこまで、すきとおってみえるほどきよらかになり、もう、だれひとり、怖がるものはありません。」 という部分があります。まさに自然の暗い部分が、人にとっての恐怖の部分が、人間の力によってひらかれ、光を入れられるシーンです。 にてますね。『もののけ姫』に。 『くじゃくひめ』というタイ族の物語は、とてもスペクタクルな冒険活劇のようでした。 王子様が自分の妃を探すための旅で、くじゃくに変身する遠い国のお姫様に出会います。このあたりが「白鳥の湖」の話とそっくり。このお姫様を捕まえるために王子様は孔雀に変身するためのおひめさまの羽衣を隠してしまいます。この当り日本の「羽衣伝説」とそっくり。 ここから、世界中にいろんな物語の種が伝播していったのでしょうか。 プロポーズの末、二人で国に帰りますが、悪い大臣の策略で、姫は自分の国に帰ってしまいます。羽衣伝説では、天女に逃げられて終わりだけど、この王子様はなかなかガッツがあります。なんと、普通の人間には決して行けないというお姫様の国まで、更に冒険していくのです。すばらしいガッツじゃありませんか。父親を殺したり、魔女に簡単に洗脳されちゃうゲド戦記の王子様とは偉い違いだわ。かくして、お姫様の国で、姫の父親にもオーケーを取り付けてめでたく二人は結ばれたのでした。めでたし。めでたし。 ところで、この王子さま。最初のところで、「ばかな女はいやだ」とはっきり言います。なかなかすばらしい性格じゃありませんか。 こういうヒロイック・ファンタジーって最近少なくなったのかもしれない。 これアニメ化したら、結構面白いと思うんだけどね。 二匹のリュウが闘うシーンなんかも、うまくアニメにしたら、すごく見ごたえあるんだけどね。 どうでしょうね。 『シュナの旅』の記事はこちら。
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[読書ノート] カテゴリの最新記事
これって「岩波おはなしの本」シリーズの本ですよね。このシリーズは 面白い話ばかりだった記憶があります。そういうのが宮崎アニメのベースにもなっているのですね。
(2006年08月07日 21時22分05秒)
ファニーfuzzyさん
> これって「岩波おはなしの本」シリーズの本ですよね。このシリーズは 面白い話ばかりだった記憶があります。そういうのが宮崎アニメのベースにもなっているのですね。 ★結構何巻もあるみたいですね。アジアのお話はこれだけであとはみんな西洋のお話だとか。 でも、みんな面白いのですね。 選んだ人が優秀だったのかな。 うーん。機会があったら、他のシリーズも見てみるといいかもしれない。 (2006年08月08日 11時33分26秒)
龍というのは、まさに自然の驚異そのものです。そして、その自然に対して、人間が自分達の科学力、>技術力によって打ち勝っていく物語です。一度は負けたリュウが鉄によって勝つことが出来たというのは、『もののけ姫』の中で、鉄が自然を破壊する脅威になっていった物語と随分似ているなと思ったのでした。
さすが、の読みですね。面白い。 >ここから、世界中にいろんな物語の種が伝播していったのでしょうか。 伝承がありえない地域同士でも、すごく似ている物語が生まれてきています。この当たりからユングが提唱する深層意識という領域が推察されるのですね。 (2006年08月11日 12時14分01秒)
ママちゃん7279さん
>さすが、の読みですね。面白い。 ★まいどアリガとうございマス♪ >伝承がありえない地域同士でも、すごく似ている物語が生まれてきています。この当たりからユングが提唱する深層意識という領域が推察されるのですね。 ★人類はアフリカを発祥に世界中に広まっていったのですから、全く接触のないことはないんじゃないかと私は考えているのですが。必ず誰かが伝えているんじゃないのかと。 でも、どうでしょうね。民俗学的な見方と心理学的な見方があって、いろんな方面から考えていくと面白いですね。 (2006年08月13日 21時26分31秒)
今年の秋に岩波書店から出版される拙作絵本『犬になった王子(チベットの民話)』の原話は、宮崎 駿氏の『シュナの旅』の原話と同じ、君島久子先生の名作民話です。今回の絵本の再話も、君島久子先生にお願いしています。
私は小さい時より宮崎 駿アニメの大ファンで、『シュナの旅』も中学の時に読んで以来、私の最も大切な作品の一つになっています。 機会がありましたら、私の絵本作品をご覧下さいましたら有難いです。よろしくお願い申し上げます。 日本画家・絵本画家 後藤 仁 (2013年07月28日 11時18分41秒)
後藤 仁さん
こんにちは。 検索して、どんな絵を描かれているのか見てきました。 とても素敵で、私好みの絵でもありました。 絵本ができたら、見てみたいと思います。 絵本展も、もし、東京で開かれる時が、ありましたら、体調の良い時にいけたらいいなと思います。 絵本の出版楽しみにしています。 コメントありがとうございました。 (2013年07月29日 13時16分32秒)
civaka様
拙作絵本『犬になった王子(チベットの民話)』(文:君島久子先生)は、11月上旬に岩波書店から出版される予定です。また、来年1月から3月にかけて東京都心で「絵本原画展」も計画されています。私のホームページ(http://gotojin.web.fc2.com/)等に掲載していきますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。日本画家・絵本画家 後藤 仁 (2013年07月31日 18時27分21秒) |
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