US Marine Band:Retrospective
先日に続いて吹奏楽のディスクのレビューはアメリカ海兵隊バンドの「Retrospective」。このバンドのイメージは上手いけど統制がとれていなくて、あまり上品ではないというイメージが強い。対して、空軍バンドは統制がとれていてスマートというイメージ。ところが、先日レビューした「フレンチ・インプレッションズ」はいままでのイメージを覆されてしまってしまった。そのまま、海兵隊バンドの演奏をきいたら、これがなかなかしまった演奏で、従来のイメージを、いい意味で裏切られた。録音は2002年なので、現在の海兵隊バンドとは様子が違っているためかもしれない。選曲はオペラを中心にしたクラシックのアレンジ物で、全く新鮮味がない。編曲も古い。曲はポピュラーなものばかりで、個人的には好みではない。ところがこれがなかなかいい。サウンドに厚みがあり、特に低音が充実しているのが魅力的だ。もちろん腕は確かで、ソロが安定していて、いつも?なら聴こえる恣意的な演奏プレイがないのがいい。気に入ったのは、サン=サーンスの「フランス軍隊行進曲」。名前は有名だが、それほど演奏されているとはいえない。生き生きしていて、引き締まったテンポ、聴かせどころの鮮やかな処理など、見事なものだ。全く知らない作曲家の作品が一つある。イギリスのハイドン•ウッドという作曲家だ。1982年生まれで、1952年に亡くなっている。管弦楽を多く作曲したが主にライトクラシックの分野で活躍した。ここで取り上げられている交響詩「マン島」は彼が育ったマン島の民謡が使われている。そのため、グレンジャーの「岸辺のモリー」に通じるイギリス情緒たっぷりの作品になっている。この曲は彼が2曲しか作らなかった吹奏楽曲の一つ。大変格調が高く終結部など堂々たるものだ。とてもいい曲で、もっと取り上げられてもいい曲だ。この曲などは隠れた名曲として殿堂入り?してもおかしくない。これも知らない作品かと思ったヴァインベルゲルの「ポルカとフーガ」は、聴いたことがあるメロディーで、チェコの民族色豊かでなかなか楽しめた。終結部にオルガンが加わる部分は鳥肌もの。その他も素晴らしい演奏が続くが、「エルザの大聖堂への行進」やウォルトンの「戴冠式行進曲」など曲がいいと一層演奏が映える。「戴冠式行進曲」は速めのテンポで、少し性急に感じられるが、その分重々しい感じはない。ダイナミックで爽快さが感じられ、聴いていると、うきうきしてくる異色の演奏だ。それにしても、アメリカの吹奏楽界の人たちほど「エルザ」が好きな人たちもいないように思う。日本では昔ほど取り上げられなくなったと思う。アメリカ人は古い作品を大事にしているが、そういうところは日本人も見習ってほしい。ということで、一見古い装いに見える中に新しい発見が隠されている、なかなか含蓄のあるアルバム。US Marine Band:Retrospective(Altissimo)1.Umbero Giordano(arr, G.Vanninetti):Selections from Andrea Chenier2.Emmanuel Chabrie(tran. Emil Mollenhauer)Espana Rhapsodie3.Haydn Wood:Tone Poem, Mannin Veen4.Camille Saint-Saens(trans.V.Bonnelle):Marche Militaire Francaise From Suite Algerienne, Opus 605.Jaromir Weinberger(trans. Gllenn Cliffe Bainum):Polka and Fugue from Schwanda, the Bagpiper6.Franz Liszt(trans. Gus Guentzel):Finale from the Symphonic Poem Mazeppa7.Amilcare Ponchielli(trans.Carlo Morino):Dance of the Hours from LaGioconda8.Giuseppe Verdi(trans.Giuseppe Creatore):Triumphal March from Aida9.Rochard Wagner(trans.Lucien Calliet):"Elsa's Procession to the Cathedral" from Lohengrin10.Sir William Walton(trans. W.J.Duthoit):Coronation March, "Crown Imperial"United States Marine BandColonel Timothy W.Foley,directorRecorded June 3-7,2002 at the Center for the Arts,George Mason University ,Fairfax,VA