映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

妻夫木聡さん、深津絵里さん、仲村トオルさん出演の野田演劇『エッグ』を見てきた人が
「妻夫木くんは今脱皮の最中」とひどくご執心でした。こちらの映画は、まだ“絵に描いたような好青年”の域を出ていないかなぁ。いじられキャラって感じです。脇役の方が美味しい役どころでした。

憑神

原作
浅田次郎

出演
妻夫木　聡　赤井　英和　西田　敏行　江口　洋介　香川　照之　佐々木　蔵之介
佐藤　隆太　鈴木　ヒロミツ　石橋　蓮司　鈴木　砂羽　夏木　マリ　笛木　優子　森迫　永依

監督＆脚本
降旗　康男

うだつのあがらない下級武士の別所彦四郎は、婚家を部下の不手際で出されて、今は兄の家の居候。大出世を遂げたかつての学友榎本武揚と再会した際に蕎麦屋の主人に勧められたのがきっかけで、ささやかな出世を願って神様に懇願するが、祈る稲荷を間違えたために貧乏神・疫病神・死神という3人の災いの神に取り憑かれてしまう。

1999年に公開され大ヒットした『鉄道員』の原作・浅田次郎と監督・降旗康男のコンビが8年ぶりにタッグを組んだ。ところが、柳の下にドジョウは二匹はいなかったようだ。人の良い彦四郎は、兄嫁から嫌味を言われても、病気を理由に仕事をさぼりがちな兄にこきつかわれても文句一つ言わない。その人の良さがかえって神に気にいられてしまい、神さまに宿替えをしてもらうことによって、自分の敵を討ってもらうという誠に痛快な結果になった。ところが、ラストの死神だけは頂けない。ずっと将軍の影武者として仕えてきた別所家が、ラスト・ショ―グン・慶喜と出会い、自分の思っていた将軍像との乖離に愕然とする。死神のお通夜は、一度でも出会っているのだから、彦四郎から慶喜に宿替えすると訴えるが、彦四郎はその申し出を退ける。そして、自らが将軍として上野寛永寺に向かってゆくのだ。替え玉であることを知っている蕎麦屋の主人や江口洋介扮する勝海舟も揃って彦四郎を称えるのだが、どうして彼が死を選ぶのかがはっきりしない。三人の神と彦四郎とのやりとりに時間が割かれ、幕末を生きる武士としての彦四郎の葛藤があまり描かれていないためであろう。ラストのフィクションとノンフィクションの融合に至っては、掟破りもいいところでは。なぜあんなラストを選んだのか。

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