「興輔、真那美って誰なんだ?」
「ねぇお父さん、ここから今の学校に通う事はできないの?」
「そりゃぁ無理だろ。新幹線で片道二時間半もかかるんだぞ?学校の授業が始まるまで、毎朝早起きしねぇといけねぇんだぞ?」
「それでもいい、転校はしたくない!」
「興輔、泣いてばっかりで理由を話してくれねぇとわからねぇだろうが!」
「おいどうした、朝っぱらからそんな大声出しやがって。折角の休みだって、おちおちと寝られやしねぇ。」
騒ぎを聞きつけた亮輔がそう言って興輔と歳介を交互に見ると、興輔の泣き腫らした目を見るなり、亮輔は彼の手をひいて自分の部屋へと戻っていった。
「あら、興輔は?」
「あいつなら、親父の部屋さ。」
「何かあったの?さっき、あの子が泣き叫ぶ声が聞こえたから・・」
「それがなぁ・・」
歳介は瑛子に、学校から連絡があったことを話した。
「あいつ理由も話さねぇで、転校したくねぇって言い張るんだ。もうどうしたらいいのかわからねぇ。」
「まぁ、お父さんに任せておきなさいよ。きっとあんたには言えない理由なんだろうよ。」
「何だ、それ?」
瑛子と歳介がリビングでそんな話をしていると、亮輔が興輔とともにリビングに入って来た。
「そりゃぁ転校したくねぇよなぁ、興輔?好きな女の子が居るからなぁ。」
「うん・・」
「興輔、転校したくねぇ理由はそれだったのか?」
歳介が少し拍子抜けした声を出しながらそう言って興輔を見ると、彼は恥ずかしそうに俯いた。
「こいつはぁ、まだ好きな女の子に告白してねぇんだと。だから中途半端なままで転校したくはねぇそうだ。」
「ふぅん、そういうことだったのか。じゃぁ、その子に告白したら転校するっていうんだな?」
「うん・・」
「なぁに、その子にどう告白するかなんて、時間はたっぷりとあんだからじっくりと考えりゃぁいい。」
亮輔はそう言って豪快に笑うと、興輔の肩を叩いた。
「あの子もそんな年頃になったんだねぇ。前にうちに来た時はまだ赤ちゃんだったのにさ。」
「俺に一言も理由を話さねぇで、親父には話したのかよ・・」
歳介は少し落胆したような顔でそう言うと、味噌汁を一口啜った。
「あんただって、初めて好きな女の子が出来た時に父さんじゃなく、あたしに話したろう?何処か照れ臭いんだろうよ。」
瑛子はそう言って笑いながら、興輔のお椀にご飯をよそおった。
新学期までまだ時間があるので、残りの夏休み、興輔は歳介の実家で過ごすこととなった。
「さてと、出掛けるか。」
「出掛けるって何処へ?」
「決まってんだろ、スカイツリーだよ。東京の新名所は一度見ないとなぁ。」
「ったく、ちゃんと予約はしたのかよ?」
「俺を年寄り扱いするんじゃねぇ!お前ぇ達が来ると思って、ちゃんとチケット予約したんだよ。」
数時間後、歳介達はスカイツリーの展望台に居た。
夏休みとあってか、そこには沢山の観光客で溢れていた。
「やっぱり、混んでるなぁ。こりゃぁ景色見るよりも人を見に来たってもんだ。」
亮輔はそう言いながらも、興輔とともに外の景色を見えた。
「うわぁ、綺麗!」
「来て良かったか?」
「うん!」
「さてと、昼飯は早い内に取らないとな。」
「そうだな。」
スカイツリーを後にした歳介達は、スカイツリーに隣接しているショッピングモールへと向かった。
フードコートで歳介と興輔が5人分の席を取り、亮輔が来るのを待っていると、彼らの前に一組の親子がやって来た。
「すいません、そこ譲って頂けないでしょうか?」
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Last updated
2013.09.05 07:24:38
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