ステファニーとエドガーがワルツを踊り終えると、傍に居たギャラリーが二人に拍手を送った。
「そろそろ、失礼しようか?」
「ええ。もう遅いですし。」
ステファニーとエドガーがマルガリーテとその夫であるパーティーの主催者・レニーの元へと向かった。
「マルガリーテ様、今夜は素敵なパーティーにご招待いただき、ありがとうございます。わたくしたちは、これで失礼致します。」
「わたくしも、あなたと会えてよかったわ。またお会いしましょうね。」
「ええ。」
マルガリーテと抱き合った後、ステファニーはエドガーと共に玄関ホールから外へと出て行った。
「明日はヴェネツィアに行きますから、今夜は早く寝ましょうか?」
「ええ。」
ホテルへと戻った二人がロビーに入ると、一組の男女がフロント係に対して怒りを露わにしていた。
「泊まる部屋がないって、どういうことだ!?」
『申し訳ございません。』
「金なら幾らでも払う、すぐに部屋を用意させろ!」
『それは出来ません。』
「もういい!」
「折角のイタリア旅行なのに、最悪な気分だわ!」
「まったくだ!こんな惨めな思いをするのに、わざわざ大西洋を船で渡ったんじゃないぞ!」
彼らはフロント係を罵倒すると、ホテルから出て行った。
「さっきのあの二人、アメリカ人でしたね。」
「ええ。あのアクセントは、ちょっと聞くに堪えないものでしたから・・」
「アメリカでは最近、金山を発掘して大金持ちになった者が増えているそうですよ。まぁ、さっきの二人も、そういう類の者でしょうけど。」
「あんなのが社交場に来るのかと思うと、ゾッとしますわ。」
アメリカ西海岸で金山を発掘し、一代にして巨万の富を得た者達を、ステファニーをはじめとする貴族達は快く思っていなかった。
「ねぇ、さっきの騒ぎをご覧になりまして?」
「ええ。あの二人、下品極まりなかったわねぇ。」
「まるで彼らが人間とは思えなかったわ。フロントの方もお可哀想に。」
「まったくだ。」
翌日、ステファニーとエドガーはヴェネツィア行きの汽車に乗った。
一等車両から見える景色の素晴らしさに、ステファニーは思わず息を呑んだ。
「ヴェネツィアに行ったら、まずはゴンドラに乗りたいですわ。」
「いいですね。水の都をゴンドラで巡るなんて、優雅な旅になりそうです。」
「そうですね。」
「サン=マルコ広場でお茶をするのもいいかもしれませんね。」
「そうですね。それよりも、お母様のお土産に何を買ったらいいと思います?わたくし、ヴェネツィアングラスがいいかなぁと・・」
「いいんじゃないんでしょうか?ヴェネツィアに行くのだから、土産物はやはりその土地の名産品を買うといい。ヴェネツィアンレースのハンカチとか。ステファニーさんにも、何か買ってさしあげましょうか?」
「まぁ、嬉しい・・」
エドガーの言葉に、ステファニーは思わず顔を赤らめた。
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Last updated
2013.10.20 21:32:22
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