六時間目は、家庭科だった。
「あ~あ、俺だけ一人で数学の補習かよ・・」
「平助、そんなに落ち込まなくても・・」
課題のフィナンシェを作りながら、千尋はそう言うと落ち込んでいる平助の肩を叩いた。
「千尋、昼休みに土方先生の所に行ったんだろう?二人きりで何の話をしたんだ?」
「それは、秘密。」
「何だよ、教えてくれよ~」
「平助、口を動かすよりも手を動かしたらどうだ?」
平助の隣に立っていた斎藤一は、そう言って平助を睨んだ。
「これ、土方先生喜んでくれるかなぁ?」
放課後のHR前、千尋はそう言いながら家庭科の授業で作ったフィナンシェを見た。
「美味そうだなぁ・・」
「平助にも後で一個あげるから・・」
「サンキュー。」
放課後、千尋は教室に残り、数学の補習を受ける平助に付き合った。
「すまねぇな、千尋。お前にまで残って貰って・・」
「いえ、いいんです。土方先生、これ家庭科の授業で作ったんで、食べてください。」
「ありがとう、丁度小腹が減っていたところだったんだ。」
笑顔を浮かべながら歳三が千尋からフィナンシェを受け取るのを見た平助は、二人の関係はまだ続いているのではと思った。
「おい平助、何ボサッとしていやがる。さっさと課題のプリント解け!」
「はいはい、わかりましたよ・・」
「ったく、お前ぇは暇さえあればすぐにサボろうとしやがるから、気が抜けねぇな。」
歳三はそう言うと、木刀を床に打ちつけた。
「先生、プリント全部解けたぜ~」
「おう、平助よく頑張ったな。もう帰っていいぞ。」
「じゃぁ、さようなら~」
平助は補習から解放され、ショルダーバッグを肩に掛けて教室から出て行った。
「先生、僕に何か話があるって・・」
「ああ。なぁ千尋、お前は俺の事をどう想っているんだ?」
「どうって・・先生の事を一人の男として尊敬しています。」
「それだけか?」
「ええ・・」
「嘘吐くんじゃねぇ。お前ぇは昔から、嘘を吐く時に鼻に皺を寄せるだろう?」
「そんな・・」
「千尋、正直に言え。俺の事をどう想っているんだ?」
「僕は、今でも土方先生の事を・・歳三さんの事を好きです。」
千尋は歳三にそう言うと、歳三に抱きついた。
「歳三さんは、琴子さんのものになったけど・・それでも、僕はあなたの事を諦められません!」
「千尋、よく言ったな・・」
歳三はそう言うと、千尋の唇を塞いだ。
「お帰りなさい、随分遅かったのね。」
「ああ。生徒の補習に付き合っていて、少し遅くなっちまったんだ。」
「へぇ・・あなたって、そんなに生徒思いだったのねぇ。」
夕飯前に帰宅した歳三を、琴子はそう言って彼に冷ややかな視線を送った。
「どうした?」
「別に。明日高校の同窓会があるから、美砂の世話を宜しく頼むわね。」
「わかった。」
この頃、琴子は美砂の世話を歳三に任せては、外出ばかりしている。
「ありがとう、それじゃぁお休み。」
琴子はそう言って歳三に背を向けると、寝室から出て行った。
翌朝、歳三は美砂の泣き声で目を覚ました。
「どうした?」
何処か美砂の様子がおかしいことに気づいた歳三は、彼女を近くの総合病院に連れて行った。
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