「あいつは、俺と同じ大学い通っていた久田真奈美っていうんだ。真奈美の家は資産家でな、父親が俺の親父と大学時代の同期だった。俺が真奈美と知り合ったのは、同じ剣道部の近藤さんに強引に誘われた合同コンパだった。」
「そんなことがあったんですか・・」
「ああ。真奈美は俺のことを一目で気に入ってなぁ、手作り弁当を剣道部に差し入れたり、俺と同じ講義を取ったりして、色々と俺の気をひこうとしていたが、俺には琴子が居た。」
「そうでしたか・・それで、真奈美さんは?」
「あいつは、琴子を殺そうとしてあいつが住んでいたアパートの部屋に行って、警察沙汰になった。」
歳三はそう言うと、溜息を吐いた。
「それから、あいつは大学を自主退学して、実家に帰った。俺は大学を卒業した。」
「真奈美さんはどうして、今になって歳三さんの前に現れたんでしょうか?」
「さぁな。姉貴の話だと、あいつは子供を連れていたんだろう?」
「ええ。ちゃんと歳三さんに認知して貰うって彼女、言っていました。」
「そうか・・」
歳三が再び溜息を吐くと、彼の上着の内ポケットに入れていたスマートフォンがけたたましく鳴った。
「もしもし?ああ、わかった、すぐ行く。」
「誰からですか?」
「大学時代のダチからだ。真奈美の奴、俺に会わせろと警察で暴れたらしい。」
「そんな・・」
「千尋、俺と一緒に来てくれるか?」
「はい。」
数分後、都内にあるホテルのラウンジで、千尋は歳三と共に彼の大学時代の友人である佐野と会った。
「トシ、久しぶりだな。この子は?」
「俺のフィアンセだ。それよりも佐野、真奈美が警察で暴れたって、本当なのか?」
「ああ。彼女は暫く塀の中に居るようだ。子供は、あいつの母親が引き取るってさ。」
「その子供だが、そいつは本当に俺の子供なのか?」
「その可能性は低いと思うぞ。DNA鑑定したら、すぐにわかると思う。」
「そうか、有難う。」
「トシ、困ったことがあったら俺に頼んできてもいいぞ。弁護士として、力になってやる。」
佐野はそう言って歳三の肩を叩くと、ホテルから去っていった。
「さてと、用も済んだことだし、指輪でも見に行こうか?」
「はい。」
ホテル内にある宝飾店で、歳三と千尋は婚約指輪を選んだ。
「この指輪が可愛いですね。」
「そうだな。お前、指のサイズは?」
「7号です。」
「そうか。すいません、これお幾らですか?」
「これは300万円となっております。ですが、今は特別ご奉仕品ですので、ペアで120万円になります。」
「120万か・・高いなぁ。まぁ、冬のボーナスがあれば大丈夫か。すいません、これをお願いします。」
「かしこまりました。」
「先生、こんな高価な指輪、本当に貰ってもいいんですか?」
「今更何言っていやがる、嬉しそうな顔して。」
左手薬指に嵌められたダイヤモンドの指輪を眺めながら、千尋はそう言って嬉しそうな顔で歳三を見た。
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