黒執事・薔薇王の葬列クロスオーバー中世パラレル小説です。
ディズニー映画「ノートルダムの鐘」風のパラレルですが、一部キャラ設定や時代設定が違っていたりしますが、それでもいいよという方のみお読みください。
それは、寒い冬の夜の事だった。
セーヌ川をすべるように進む小舟の中には、疲れ果てた顔をした数人のン旅人が、少しでも暖を取ろうと互いの身を寄せ合うようにして座っていた。
やがて彼らを乗せた小舟は船着き場に横づけにされた。
頭からフードを被った女が、寒さと空腹で泣く赤子を必死であやしたが、赤子は泣き止むどころか、ますます激しく泣きじゃくった。
その時、建物の陰から数人の兵士達が飛び出して来たかと思うと、彼らはあっという間に旅人達を取り囲んだ。
女は恐怖に怯えながら、腕に抱いた赤子を守ろうと、己の胸元へ引き寄せた。
すると、船着き場から少し離れた所から、黒馬に跨った一人の男が彼らの前に現れた。
パリの冷酷な独裁者・バッキンガム判事だ。
「こいつらを牢に繋いでおけ。」
武装した兵士達に取り囲まれた男達は、大人しく兵士達に捕らえられた。
冬の寒さと飢えで凍え死ぬよりも、牢に繋がれた方がマシだからだ。
「おい、お前何を隠している!?」
「盗んだ物を隠しているに違いない、その女を捕らえろ!」
女は兵士達に捕らえられる前に、身を翻して船着き場から逃げ出した。
「待て!」
バッキンガムは黒馬を鞭で打つと、女を追い始めた。
女は必死にバッキンガム判事から逃げようとしたが、馬と人間の足ではスピードが違う。
徐々にバッキンガムの黒馬が女との距離を詰め、黒馬の荒い鼻息が女の背中にかかった。
それでも女は我が子を守る為、聖域であるノートルダム大聖堂へと続く石段をつんのめるようにして上り、正面扉を叩いた。
「助けて!」
女は堅く閉ざされた大聖堂の門を叩いたが、中から人は出てくることはなかった。
だが女は我が子を救いたい一心で、神に救いを求めた。
しかし、バッキンガムが彼女の背後に迫っていた。
女は必死にバッキンガムに抗ったが、バッキンガムは女の腕から赤子を奪い取った。
その拍子に女はバランスを崩し、後頭部を石段に打ちつけ、ぐったりとしたまま動かなくなった。
バッキンガムは腕に抱いていた赤子が泣き出し、その小さな身体を包んでいた布を少し持ち上げ、その顔を見た途端彼は思わず顔をしかめた。
赤子の顔の左側は、醜く焼け爛れていたのだ。
バッキンガムは赤子を井戸へと落そうとした時、中から司祭が出て来た。
「やめろ、これ以上罪なき神の子を殺めるつもりか!?」
「俺は正義を遂行しようとしたまでだ。」
「神は全てをご覧になっているぞ、バッキンガム!」
その時、バッキンガムは感じたのだ、罪なき女を殺めた自分に対する神の怒りを!
「どうすればいい?」
「この子を我が子のように育てなさい。」
「では、この子はノートルダムの鐘楼に住まわせる。こいつは化け物だからな。」
こうして、バッキンガムは赤子をヘンリーと名付け、ノートルダムの鐘楼に住まわせた。
「坊ちゃん、バッキンガム判事様がお見えになりましただ!」
「わかった、すぐ行くと伝えろ。」
シエルは忠実な従者を連れ、自室から出てバッキンガムが待つ客間へと向かった。
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