「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
三年前、歳三が西口家から出て行った後、暫くは信也が二人の姪達の世話をしていたが、彼はやがて結婚して家から出て行ってしまった。
「香苗さんはどうしているんだ?」
「あの人、再婚して今はアメリカに住んでいるの。一度彼女にあの子達の事で話し合ってみたんだけれど、引き取りたくないって。」
「は?」
「“あの子達を見ると、あいつの事を思い出すから嫌なの。”彼女、もうあの子達とは縁を切りたいみたいで・・」
「じゃぁ、二人は実母から捨てられたのか・・お義母さんはどうしたんだ?」
「“二人の世話をしたいのは山々なんだけれど、こっちも色々と大変なのよ”とおっしゃって・・」
「それで、困り果てて俺の所に来たと。悪ぃが、俺にとっちゃ二人は完全に赤の他人だ。どうしてもあいつらが可哀想だと思うなら、あんたが引き取るか、施設に入れるかどちらかを選ぶべきじゃねぇのか?」
「それは、そうですけれど・・」
「あんたは、二人を引き取るつもりはねぇんだろ?10代のガキ二人を、路頭に迷わせる程俺は冷酷じゃねぇ。」
「じゃぁ・・」
「他に頼れる親戚は居ねぇのか?」
「確か、博多の方に・・」
「それじゃぁ、その親戚と連絡が取れるまでの間、俺が二人を預かる。」
「ありがとうございます。」
「言っておくが、俺は俺のやり方であいつらに接するから、そのつもりでいてくれ。」
こうして、華と梓は遠縁の親族から連絡が来るまで、歳三の元で世話になる事になった。
「お世話になります。」
「言っておくが、お前達は俺にとっちゃ赤の他人だ。少しでも俺達に舐めた態度を取ったら問答無用で叩き出すからな。」
「はい、わかりました。」
「そうか。じゃぁ明日から朝5時に起きて俺と朝食の支度をしろ。」
「えっ」
「家事は出来る人がやればいいとか、甘えた考えは捨てろ。最低限てめぇの世話が出来る位になれ、他人を頼るな。」
「はい・・」
夕食後、二人は溜息を吐きながら用意された部屋に入った。
「これから、どうなるのかなぁ?」
「さぁね。でも、あたし達はお客様じゃないんだから、大人しくしないとね。」
「わかった。」
二人がそんな事を話している頃、夫婦の寝室では歳三に千景が七夕祭りの事を話した。
「母親同士の付き合いというものは、大変だな。」
「あぁ。しかもママ友の大半が中学時代の同窓生。面倒臭いったらありゃしねぇ。」
「お前が中学生の頃を見てみたかったな。」
「そんなもん、見てどうするんだよ?あの頃の俺は、今みてぇにお淑やかじゃなかったな。」
「ほう・・」
「ま、寝物語ついでに話してやるよ。」
歳三はそう言うと、千景に中学時代の話をした。
彼が在籍していた聖林学院は、幼稚園から大学までのエスカレーター式の、所謂お嬢様学校だった。
戦前から華族女学校として名を馳せた学校だけあってか、そこに通う生徒達の大半は皆資産家令嬢や旧華族令嬢だった。
その中で老舗料亭の娘である歳三は、いじめの恰好の的となった。
女同士のいじめというものは、実に陰湿かつ狡猾なものだった。
最初は無視から始まり、事実無根の噂を流されたりした。
だが、そんな事でやられっ放しになっている歳三ではなかった。
彼はいじめの加害者達にされた事を倍以上にやり返した。
いつしか、歳三は学院内で“鬼番長”と呼ばれるようになった。
結局、歳三は学院側から強制退学させられ、彼は共学の高校へと入学した。
そこで、近藤勇と出会った。
「そうか。」
「おい、明日は早いからやめろ・・」
「基礎体温はちゃんとつけているのか?」
「ま、まぁな・・」
「では、今日が排卵日なのか?」
「馬鹿・・」
「それは、“イエス”という意味だな?」
「あ、あぁ・・」
そう言った歳三は、頬を赤く染めて、千景にその身を委ねた。
「短い間でしたが、お世話になりました。」
「おう、達者でな。」
二週間後、華と梓は博多へと旅立っていった。
「はぁ、これでやっと休めるな。」
「そうか。それよりも歳三、昨夜は徹夜していたな?」
「何で、そんな事・・」
「顔色が悪いぞ、余り無理をするな。」
「あぁ、わかった・・」
空港からの帰り道、歳三と風間は『石田屋』に寄った。
「あらぁ、いらっしゃい!」
「済まねぇな、急に来ちまって。個室、空いているか?」
「気を遣わなくてもいいのよ。今日は個室はあるけれど、一室だけだから、もしかして愛席になるけれど、いい?」
「構わねぇよ。」
姉の信子とそんな話を玄関先でした後、歳三と千景は奥の個室へと向かった。
その日は、近くにある小学校で何か集まりが会ったのか、座敷席には何組か小学校低学年位の子供と母親達が居た。
母親達は自分達のおしゃべりに夢中で、子供達が騒いでいても注意しない。
周囲の客達が迷惑そうな顔をその親子連れに向けていた時、信子が軽く咳払いをしながら彼らの元へと向かった。
「すいませんがお客様、これ以上騒いでいるのなら、他のお客様のご迷惑になるので出て行って貰えませんか?」
「はぁ、店員の癖にあたし達に向かって何なのその態度!?お客様は神様じゃないの!?」
「えぇ、良く言いますけどね、でもあなた方は神でも何でもない、只の迷惑な人達です!うちは客商売ですが、あなた方みたいな人達にまで媚を売る程、落ちぶれちゃいませんよ!」
信子の啖呵を聞いた周囲の客達は、一斉に拍手した。
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