「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。
BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。
玲達を連れて庚が帰宅すると、邸の前には従僕や執事達が慌ただしく何かの準備に追われていた。
「お帰りなさいませ、庚お嬢様。」
「安本、ただいま帰りました。今何をしているのですか?」
「お嬢様がイタリアへ嫁がれる日がお決まりになられたので、奥様からお嬢様の荷物を船便でイタリアへ運ぶようにと、先程仰せつかりました。」
「わかりました。後は母に聞いてみます。」
「お客様がいらっしゃっているのに、お茶をお出しできなくて申し訳ありません。」
安本はそう言って玲達に軽く会釈すると、そのまま仕事へと戻っていった。
「庚様は、いつも使用人達や執事に対してあんな口の利き方をなさるの?」
「それはどういう意味ですか?」
居間で紅茶を飲んでいた庚は、そう玲から言われたので思わず彼女の顔を見た。
「使用人達に対して親切な話し方をされるなんて、変わっているわね。」
「立場が違うからと言って、相手を見下してはいけないと母様から教わりましたから。」
「そうなの。」
玲は少し馬鹿にしたような目で庚を見た。
「ねぇ、貴方の婚約者はどちらにいらっしゃるの?早くお会いしたいわ。」
「ロベルトは今・・」
「庚、お帰り。厨房で君が好きなチョコチップクッキーを焼いていたから、君が帰って来た事に気づかなかったよ。」
居間のドアが開き、中にエプロンをつけたロベルトがクッキーを載せた盆を片手でバランスよく運びながら入って来た。
「このお嬢さんたちは、庚のお友達かい?」
ロベルトがそう言って蒼い眸を玲達の方へと向けると、彼女達は黄色い悲鳴を上げ、一斉に顔を赤らめて俯いてしまった。
「橘さん達は、ロベルトに会いたくてわたしの家に遊びに来てくれたのです。」
「そうだったのか。それよりも庚、君の結婚が早まった話はもう聞いたかい?」
「はい、さっき安本から教えて貰いました。ロベルト、少しこちらでお話ししませんか?」
「勿論さ。」
ロベルトはそう言った後、自然と庚の隣に腰を下ろした。
「庚、また痩せたね?ちゃんと食事はとっているのかい?」
「最近図書館から借りた本を読むのに夢中になってしまって、つい食事を後回しにしてしまいました。」
「そんな事だろうと思ったよ。」
ロベルトは溜息を吐くと、庚の細い腰にそっと手を這わせた。
「ロベルト、橘さん達が見ています!」
真っ赤な顔で庚がロベルトにそう抗議すると、彼は大胆にも庚の華奢な身体を自分の方へと抱き寄せた。
「いいじゃないか、もうすぐ僕達は夫婦になるんだし。」
「それはそうですけれど・・」
「庚様、ロベルト様、わたくし達はもうお暇致しますわ、ごきげんよう。」
玲達はそう言うと、何やら慌てた様子で平賀邸から去っていった。
「折角いらしていただいたのに、何だか橘さん達に悪い事をしてしまいました。」
「いや、君がそんな事を思わなくてもいいよ、庚。寧ろ彼女達にとってはいい刺激になったんじゃないのかな?」
ロベルトはそう言って自分の膝の上に座りながらチョコチップクッキーを頬張る庚の姿を眺めた。
庚は女同士の人間関係特有の、嫉妬や羨望といったものに疎い。
今日はロベルトが何とか庚に助け舟を出したものの、イタリアへ戻ったら、いつも庚の隣に居る訳にもいかない。
(これから大変だな・・)
ロベルトが溜息を吐くと、チョコチップクッキーを頬張っていた庚がきょとんとした表情を浮かべながら自分を見た。
「ロベルト、どうしたのですか?」
「いや、何でもないよ。」
その日の夜、庚は母・エイダの部屋に呼ばれた。
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