パントマイムとマルセル・マルロー
パントマイムは 台詞ではなく 身体や表情で表現する演劇ですが 起源は 古代ギリシアに遡ります。 語源は 古代ギリシャのミミ (mimi) で 帝政ローマ期にパントミームス (Pantomimus) へ変容したとされますが 我々が 「パントマイム」という言葉で想像するものよりは 仮面舞踏に近いものであったようです。 今日 我々が見ている 「パントマイム」に強い影響を与えたものとして 初期中世イタリアで起こったコメディア・デラルテが挙げられます。(コメディア・デラルテのイメージ画像)今で言う旅芸人の一座であり ヨーロッパ全土を放浪し大道芸を行った。 その影響も あってヨーロッパの言語的な壁を乗り越えるために 今で言うパントマイムの技法が洗練されていったとされています。その後18世紀頃までに コメディア・デラルテは衰退し そののち コメディア・デラルテの遺産を取り入れ フランスで道化芝居が発達。現在の道化のイメージ、白塗りでちょっと とぼけたキャラクターは この時期のフランスの道化芝居によるものです。その後 道化芝居も衰退し その流れを取り入れたドゥクルー ジャン・バローなどが身体技法としてのパントマイムを洗練。 そして ドゥクルーの生徒にマルセル・マルローが居り 今日のマイムの大衆化には 彼によるところが大きいのです。マルセル・マルソー (1923年 - 2007年)は フランスのパントマイム・アーティストで この芸術形式での第一人者。ユダヤ人の父・シャルルと母アンヌの間にMarcel Mangelとして生まれ16歳のとき フランスが二次世界大戦に突入。その後 マルセルは シャルル・ド・ゴールの自由フランスに参加。堪能な英語力でジョージ・パットンの軍隊の渉外係として働いたそうです。戦況が悪化する中 ドイツ軍のフランス侵攻に伴い ユダヤ人であることを隠すために 姓をMangelからMarceauに変えましたが 彼の父はゲシュタポによって捕らえられ アウシュビッツ強制収容所で亡くなるという悲劇に見舞われました。Marceauという姓は ヴィクトル・ユーゴーの「懲罰詩集」(Les Châtiments)から引用したものであると語っています。近代パントマイムで もっとも有名な人物のひとりであり 「パントマイムの神様」「沈黙の詩人」と呼ばれました。彼の代名詞ともいえるキャラクター「Bip」を創造しました。珍しい画像ですが 左がマルローの素顔です。↓(Bip)白く塗られた顔、よれよれのシルクハット、帽子に力なく飾られた花 ストライプのシャツなどは パントマイムの一般的なイメージとして認知されるほど 大衆にアピールし 影響を与え 言葉を発せず 体ひとつで表現される そのパフォーマンスは高い評価を受け とりわけ有名な「若さ、成熟、老年そして死」(Youth, Maturity, Old Age and Death)と呼ばれているスケッチは 評論家をして 「彼は小説家が 何冊書いても表現しきれない世界を2分で表現してしまう」と言わせたそうです。(Marcel Marceau)http://www.youtube.com/watch?v=_lF0XMCssG0&feature=related(Marcel Marceau Sketch)http://www.youtube.com/watch?v=i99k7nCnVwM&feature=related(MARCEL MARCEAU "Bip Domador" "Bip, Lion Tamer")http://www.youtube.com/watch?v=vrkM6OwkMYQ(MARCEL MARCEAU "Bip Pajarero" "Bip, the Bird Keeper ")http://www.youtube.com/watch?v=G4yeMqZA4eU&feature=related来日の時 ナマを観た記憶が有ります。その後 亜流ばかりで 彼を超える人は出ませんね。