山で最期を迎えたい-ある夫婦の桃源郷
人生をどの様に過ごすのかは、人それぞれですが、「自分らしく生きる」と言うのは難しい命題で、先週日曜日のドキュメンタリー番組には考えさせられました。NTV 平成21年 1月25日(日) 午後 4時25分~山口放送製作:「山で最期を迎えたい ある夫婦の桃源郷」第4回日本放送文化大賞テレビ部門グランプリ受賞安易なタレントを使った低俗番組編成の多い中、「自分らしく生きたい」と言う信念を貫く夫婦とその家族の17年を記録した作品で、素晴らしい番組でした。番組最後では、痴呆が進んでしまった老齢の妻(88歳)は、長年連れ添った夫(93歳)の死を受け入れられない。娘たちに呼んでみたらと促され、山に向かって「じいちゃん、じいちゃん」と大声で呼ぶのですが、「返事が聞こえない」と不思議がるのです。「いい人生の歩き方を教わった」と2人の山奥生活を支えた娘さんたちが言うのですが、その「親の生き方が最善」と理解する心持が、また感動的でした。終戦後復員した田中寅夫さんは、フサ子さんと共に、故郷に近い山口県の中国山地に土地を買い、自給自足の生活を始めます。そこで3人の娘たちを産み育て、貧しいが賑やかな日々を送ります。やがて娘たちの将来を考え、高度経済成長期には大阪へ出て、タクシーの運転手等をして生計を立てながら娘たちを成人させます。還暦を過ぎ、夫婦は「親の役割が終わったので自分達らしく老いてゆきたい」と、娘たちから離れて、電気も水道も通っていない山奥の不便な小屋住まいに戻ります。大阪で暮らす娘たちは同居を提案するのですが、「子供には子供の生活があり、迷惑を掛けたく無い」と拒み続けます。夫婦は確実に老いますが、山の暮らしに拘り続けます。娘たちも孫を抱える年齢になり、両親の生き方を受け入れ、背中を押すようになります。寅夫さんは癌、肺炎・肺気腫を患い入院、余命僅かと言われても山の生活に執念を燃やし、娘たちも支えますが、93才で他界してしまいます。しかし、痴呆が進んでしまったフサ子さんは夫の死を受け入れられない。娘たちに「呼んでみたら!」と促されて、山に向かって「じいちゃん、じいちゃん」と大声で呼ぶのですが、「返事が聞こえない」と不思議がるのです。「いい人生の歩き方を教わった」「自分たちもそう生きたい」と言う娘さんたち。親と向き合い親を看取ることで、本当の人生のあり方・あるべき方向を悟ります。