魔法の真矛ちゃん【カーラ38】の2終
ほんとに湿気に弱いんです。こえめですじめじめした日が続きます。一日一回除湿しましょう。カビ防止対策です。 目次、フリーページに移動しました。よかったら。 さて、いよいよ身体の変化が始まるリカム。続きをどうぞ。 【カーラ38】の2 「変わらないで!」必死にリカムの身体を押さえ、くちびるを重ねて、その震えを止めようとするカーラ。 変化を停められるはずがないことはわかっていても、少しでも長くリカムの姿でいてほしかった。 いったいどれくらい時間が経ったのだろう。何かを感じ取ったような気がして、カーラは汗にまみれた身体を起こした。いつしか月はその角度を変えて、冷ややかな光を部屋の奥にまで届かせている。彼の前髪が汗で顔に張り付いているのを手の平で覆うようにして掻き揚げた。 「良かった……まだ……」そこには月明かりに照らされた、リカムの見慣れた顔があった。リカムの身体はいまだ熱を帯びてはいたが、苦しげな様子も収まっていた。呼吸がいまだ少し速いとはいえ、規則正しいものになっていた。 彼のすぐ横に寄り添うように横たわり、彼の横顔、頬のうぶげに月の光がまとわりくのをじっと眺めた。 急にカーラは違和感を感じた。確かにリカムの顔だが、微妙にどこかが違う……。そっと胸に手を載せてみた。硬く引き締まっていたはずの胸板が柔らかく盛り上がっている。変化が始まっていたのだ。 いやそうではない、変化そのものはもうとっくに、薬を飲んだときから内側で進行していたはずだ。それが表にまで現れてきたということだろう。もしその考えが正しければ、彼の内面は、心は……既に別人になっているのかもしれない。 「リカムッ! リカム起きて!」だが聞こえていないのか、深い眠りから覚める様子は無い。 (このまま、もう永久にお別れ……) カーラはその顔を忘れないようにと見つめ、そのぬくもりを忘れぬようにと、くちびるをきつく重ねた。 その瞬間、天は二人に情けをかけたのだろうか。 リカムが身じろいだのを感じて、カーラが目を開けると、すぐ目の前に懐かしい青い瞳があった。 「リカム、私よ、カーラよ、わかる?」「あぁ……カーラ……わかるよ」「あなたを愛している、リカム」「カーラ、愛してる……」 リカムはそれだけ言うと、再び深い眠りに落ち、再びリカムとして目を覚ますことはなかった。 朝が来た。小屋の外はうっすらと明るく、小鳥のさえずりが優しい。 「カーラさん。私ずっと、夢を見ていたんですよ。長い長い夢……」「あら、どんな夢? ねぇ、もしよかったら話してくださる?」カーラは、何かを期待するかのように、背の高い中年の女性に目を向けた。「それがね、私が男になって、愛する人を守る、そんな御伽噺みたいな夢なんです。まるで子どもみたいですね。でも、どうして私が男なんでしょう、いやだわ」その女性はそう言うと、本当におかしくて仕方ないというように、声を立てて笑った。カーラはその笑顔の奥に愛するリカムの面影を見たような気がした。 「さあ、カーラさん、いきましょう。こんな楽しい旅行は、久し振りでしたわ。本当に楽しかったですね」カーラは預言者セテから聞いていた大まかな記憶を思い出した。「ええ。そうね……リカム」「えっ?」「あっ、いいえ。さあ、帰りましょう、リカさん」「はい。未来のご主人様が、お帰りを待っていますからね」穏やかな微笑を返したカーラは、キリリと前を見据えて歩き出した。そのすぐ後ろに背の高い女性を従えて……。 (カーラ終わり)Mr.Children 旅立ちの唄 聴いてみてねっ。ランキングです