|
カテゴリ:憲法
昨日届いた平和新聞7月25日号に「靖国」派を斬る!と題の特集があった。現在「日本会議」を中心とする「靖国」派のメンバーは閣僚の大部分と民主党にも多く存在し、(ワシントンポストに「従軍慰安婦は強制されていない」と言う意見広告を載せた国会議員45人のうち自民29人、民主13人、無所属2人)わが世の春を謳歌しているかに見える。参議院選挙の結果がどうなろうと、しばらくは彼らの位置は揺るがないだろうと私は思う。よって「靖国」派をどう見たらいいか、と言うことは参議院選挙後も大きな課題になるだろう。
今回一橋大学社会学部教授 渡辺治氏の論文が載っていた。氏の論文はいつも歴史的にしっかりと日本の課題を見据え、なおかつ視野が広くて国際的経済的な視点を持っていて非常に参考になる。唯一の欠点はいつも論文が長いことである。今回「靖国」派の問題点を非常にコンパクトにまとめて書いていたので、貴重だと思い、「無断で」「全文を」紹介したい。長いように思うかもしれませんが、安倍内閣の世界での位置が非常によく分かります。 以下転載。 「安倍首相のジレンマ」 「靖国」派のような極右勢力が本格的に台頭してきたのは冷戦終結後の90年代半ば頃からです。 米国中心のグローバルな支配秩序を確立するために、「血を流す」日米同盟とそれを可能にする軍事大国への復活が必要になってきたわけです。しかし、最大のネックは、アジア諸国には日本に対する侵略の記憶と強い警戒心があることです。そこで米国の要請もあり、外務省を中心に戦前の侵略戦争の違いを明らかにし、それなりの責任を考える必要に迫られました。92年の天皇訪中の際の一定の謝罪の意を込めた「お言葉」や93年の河野談話、95年の村山談話もこうした流れの中で行われたもので、財界も支持しましたが、「靖国」派にとっては、日米同盟には賛成でも、こうした動きは大国の誇りを失くしてしまう危険な行動と映ります。 戦争正当化史観 95年の藤岡信勝の「あの戦争は正しかった」とする「自由主義史観」の提唱や、97年の右派の合併組織「日本会議」の発足で右派の台頭が始まります。2000年代に入ると、自虐史観の克服や伝統の強調、靖国参拝、憲法と教育基本法の改悪が声高に叫ばれるようになりました。このような変化を考える上で、大切なことが三つあります。 軍事力行使の道 ひとつは、日本の軍事大国化と軍事力の行使がいよいよ切実なものになってきたという点です。04年に政府は自衛隊のイラク派兵を強行しますが、憲法9条によって武力行使や米軍との共同作戦が出来ません。財界にもグローバリゼーションが飛躍的に増大していく中で、東アジアにEU並みの巨大な経済圏をつくりたいという欲求があり05年、日本経団連は支配層の改憲運動が強まるにつれ憲法と九条の改定を要求します。こうしてもともと傍流だった日本会議のメンバーの利用価値が大きくなったのです。 憲法敵視の論理 2点目は、構造改革によって崩壊した日本社会の深刻な分裂状況と格差、貧困化の進行に伴い、それを取り繕うイデオロギーとして右派のイデオロギーが動員されたことです。右派勢力はこの原因を憲法と教育基本法に求め、家族や道徳、伝統の再建が必要だというイデオロギー攻撃を展開しました。また、軍事大国化は「国際貢献のためだ」という従来の保守派の主張に対して、彼らは北朝鮮と中国の軍治脅威論をロジックとして展開します。 揺れる改憲路線 3点目は、安倍内閣はこうした右派勢力の活性化に乗って登場した内閣ですが、その路線には矛盾とジレンマがあるということです。安倍政権は自民党の枠を超え、民主党内にも存在する右派グループを基礎に登場した初めての内閣です。「靖国」派のイデオロギーがその中心に入ってきていますが、これが大きな矛盾をもたらしています。改憲の焦点は9条にありますが、「靖国」派は個人主義、人権も対象にした憲法全面改定論を主張しています。しかし、このような改憲案は、国民はもとより民主党でも肯定できない内容です。また、それは米国や財界との思惑とも食い違っています。イラクでも米国は「自由と民主主義」を旗印に掲げている以上、日本帝国主義の侵略戦争には大きな誤りがあったと考えています。「靖国」派の主張はアジアの人々とも米国とも矛盾しているのです。 財界の意向で中国や韓国を訪問すれば「靖国」派が反発、そこで「従軍慰安婦」問題で「強制がなかった」と言うと米国とアジアが反発、そして今度は訪米時にブッシュに謝る、というように安倍首相は一種の「マタ裂き」状態に陥っています。彼自身は全面改憲論者ですが、米国や財界は「9条に限定せよ」と要請しており、安倍首相が「靖国」派の心情を封印して9条に限定すると、「靖国」派からは裏切り者とされるわけで、このジレンマをしっかり見ぬいて戦うことガ大切だと思います。 転載終わり。 参議院選挙後に、9条をめぐる憲法問題はいよいよ主戦場になっていくでしょう。敵は何を切り、何を残すか、何を磨き、どんな戦略を練ってくるか、見抜きながら闘っていきたいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年07月26日 20時24分11秒
コメント(0) | コメントを書く
[憲法] カテゴリの最新記事
|
|