極刑空間

『星空のメモリア』感想　第十七回

“蒼 衣鈴”編　

共通ルートの焼き直し。 

相変わらず綺麗だし、進展もあったが、これで衣鈴の問題が解決したとは思われない。

もっと根本的な解決手段が必要になるはずだが、その前になんでいっつも野外なんだよ。 

とんだ変態主人公だよ。

※以下、ネタバレ注意

前回のあらすじ。

衣鈴にオーロラを見せよう。 

【１０月１１日】

衣鈴は港で水平線を眺めている。

洋は、衣鈴にプラネタリウムの思い出を聞く。

「あの中には、宇宙が入っているんです」 

幼い日の衣鈴は、科学館の閉館セレモニーが終わった後、感動と喪失感で泣くことしかできなかった。 

そんな衣鈴の前に館長が現れ、投影機の中を見せてくれた。 

「私はいつしか泣きやんでいました」 

「その宇宙に、南天の星空を見たから」 

望遠鏡と屋上のカギを渡されたのはその時だ。 

だからその“館長”ってのは何者なんだよ…。 

「俺が蒼さんにプラネタリウムを見せる」 

「その代わり……」 

「館長から贈られた望遠鏡を、俺に修理させてくれ」 

再び賭けを持ち掛ける洋。 

衣鈴の反応には、淡い期待が見える。 

……でも、これでは前回と同じで、ホームシックの根本的解決にはならないんじゃないか？ 

【１０月１２日】 

マスターから衣鈴の生い立ちを聞く、って何でマスターがそんなこと知ってんの。 

「衣鈴ちゃんのご両親はね、僕の同僚だったんだよ」 

本当に世間狭ぇ。 

そこら中天文学者だらけじゃねーか。 

マスターの話によると、衣鈴と鈴葉ちゃんの生まれは両親の赴任先のオーストラリア。 

が、鈴葉ちゃんが頻繁に体調を崩したため、止むを得ず日本に帰ってきたということだ。 

「衣鈴ちゃんは海外育ちの帰国子女だから、まずは日本語学校に通ったんだよ。そこで勉強した後に中学校に通ったんだ」 

あぁ、それは大変そうだな。 

衣鈴がズボラなのは元来の性格だろうが、勉強が出来ない事には大いに影響していそうだ。 

洋達が帰った後、マスターは“館長”の言葉を思い出している。

「プラネタリウムというのは、過去から未来まで、好きな時代の星空を映し出すことができる」 

「ギアとモーターを駆使して、歳差運動と年周運動を調整し、再現する」 

「機械仕掛けの宇宙が、時を駆けることすら可能にする」 

「だから、誰もが懐かしく感じるのさ」 

声まで付いてるよ。

引っ張るなぁ、“館長”。 

【１０月１３日】 

洋はバイト帰りに、衣鈴の家を訪問。 

「俺だ、俺」 

「……オレオレ詐欺」 

詐欺師共のせいで、作中で妙なネタが定着しちまってるじゃないか。 

オレオレ詐欺なんか流行らせた連中は絶対に許せねえ。 

洋は衣鈴を夕食に誘うが、まるで相手にされずにすごすごと帰っていった。 

「これで勝ったと思わないことだ」 

お前は十波由真か。 

洋が帰った後、孤独に震える衣鈴。 

失うことを恐れて、孤独に慣れようとしていた衣鈴だが、どうやらもう手遅れだな。

そこに、どやどやと入り込んでくる洋達。 

「蒼さん、また会ったな」

「蒼ちゃんっ、待ちに待った千波が来たよーっ！」

「え、えと、ここで食べていいかな……」

衣鈴は、流石に怒り出すかと思えば…。 

「自分たちだけで、食べようとしないでください」

一緒にもそもそと食べ始めた。 

「これは、気の迷い……ただの、気の迷い……惑わされたせいなんだから……んぐんぐ」 

なんか言い訳してるけど、もう素直になればいいのに。 

【１０月１４日】 

準備は整った。 

洋が渋る衣鈴を連れて科学館へ向かうと、既に天クルの仲間が集まっていた。 

「案外早く、全員が集まりましたね」 

こももも雪菜先輩もメアもいないし、全員と言うには少し寂しいなぁ。 

……。

どうでもいいけど、こさめさんの私服エロくないか。 

いや、ただのセーターなんだけど、だからこそエロいと言うべきか…。

館内に入ると、途端に言葉少なになる衣鈴。

「先輩は、連れて行ってくれるんですか……」

「想い出の地に……」 

「遠いふるさとに、私を――――」

やがて、“館長”の声と共に、プログラムが始まる。 

スクリーンに、オーロラが輝く南天の星空が映し出される。 

以前のように、涙を流して見入る衣鈴。 

「友達がたくさんいた、私のふるさと……」 

あの時も、衣鈴は遠い故郷に残してきた人達を想って泣いていたのか。

「引っ越したくなかった……」

「友達と別れたくなかった……」

「だって……だってえ……」

「私は、私が育ったふるさとが、好きだったからあ……」 

ここで終われば、前回と変わらない。 

だから、もう一押しだ。 

「次に見せるのは、本物だ」 

「約束するよ」 

「蒼さんを連れていくって、約束する」 

「……どうして」

「蒼さんのこと、好きだからな」 

よし、ちゃんと言ったな。 

これで明日歩の時のような禍根は残されない。

「……じゃあ、先輩」

「私を、連れていってください……」 

「必ず、連れていってください……」

「ウソついたら、大嫌いになりますから……」

「大好きでも、大嫌いになりますから――――」

夜が白み始め、プログラムが終わっていく中、キスをする二人。 

洋は、“館長”が作り上げたプラネタリウムの幻を引き継ぎ、いつか本物に辿り着くことを決意する。 

あんたが託した、壊れた望遠鏡と一緒に。

なあ、父さん――――

……。 

誰が父さん？

文脈からして「“館長”＝父さん」としか取れないんだけど、確か父親は亡くなってるんじゃなかったっけ？ 

【１０月１５日】

洋は家の前で衣鈴を待ち受ける。

やがて通りかかった衣鈴は、無視せずに立ち止まってくれた。

「蒼さん……」 

「嫌です……」 

なにが嫌なんだよおおおおおおおおおおおうおうおう！！！

顔を赤らめてなんか嫌がってる衣鈴はああなんて可愛いんだこのやろう。 

思わず発狂する可愛さ。 

「蒼ちゃーんっ、おはよーっ！急がないと遅刻だよっ、ふたりともぼやぼやしてると置いてっちゃうよっ、ちなみに今朝は暑かったから夏の制服にしてみたんだけど何か問題あるかなお兄ちゃん？」 

微妙な空気を放つ二人の間に、平然と割って入る千波。 

千波も可愛いんだけど、今は少し黙っていてくれないか。 

「コレは、私のものです……」 

さり気なく洋の所有権を主張する衣鈴。 

可愛いよ、マジで可愛いよ……。 

放課後。 

洋と衣鈴は、季節外れの浜辺でデート。

衣鈴の水着は白のワンピース……だが、あまりにもイメージ通りで一瞬白スクかと思っちまったわ。 

やがて陽が落ち、周囲に人がいなくなった頃、洋は衣鈴を砂浜に押し倒す。 

……。 

……おい。 

「小さくても俺は好きだぞ」 

「……ロリコン」

おいおいおいおい…。

初めてが砂浜野外露出プレイとかどんだけレベル高いんだよ。

明日歩の時も初めては野外だったし、何か拘りでもあるんだろうか…。 

何にせよ、何か大事なプロセスを一足飛びにしてしまった気がする。