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2010.02.16
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『星空のメモリア』感想 第二十三回

“姫榊こもも”編



思いがけず感動した。

下手人は、諏訪雪菜。

素朴な友情というのは、どうしてこう俺の胸に響くのだろうか。

このエピソードで、俺の雪菜先輩に対する印象はすっかり好転し、今や彼女の攻略ルートを求めるまでになっているのだが、さすがに高望みか…。



※以下、ネタバレ注意






























 

前回のあらすじ。

こももは悪夢を見続けている。


【9月14日】

早速こももを部屋に連れ込む洋は、一日我慢した分だけ衣鈴ルートの時よりも偉い。

……。 

今さら言うまでもないがこももは乳がでかい。

最近の金髪ツインテキャラは、 ツンデレで胸が小さい、という既成観念に囚われないようで大変良いことだ。

「……優しい彼女を持って幸せ者ね、小河坂くんは」 

エッチの最中に彼氏の鳩尾に膝を入れる彼女は、果たして優しいと言えるのだろうか…。 

 

境内、雪菜とこさめが密談している。 

雪菜はいつになく饒舌で、冷え込んできたからここで話すのも辛くなってきたな、などと軽口を叩いている。 

「その心配はないと思います。雪菜先輩とこうして内緒話をするのも、そろそろ終わりでしょうから」

「私を友人だと言った割には冷たい言葉だな」

雪菜はどうしちゃったんだろう。 

ちょっと前まで学校なんか通いたくなかった、友達なんていらなかった、と言っていたのに。 

「雪菜先輩。お仕事、よろしくお願いします」

「姉さんには、小河坂さんがいますから」 

……。  

 

【9月15日】 

バカップル二人、今度は姫榊家の風呂でイチャついてる。

あの~、同じ家にこさめが居るんだから、あんまりオイタするとまずいんじゃないかと……。

「イジワルされてるから感じるんだろ?」 

「……別れようかな」

「ウソだウソっ、もうしないから!」

「小河坂くん、ヘタレSね……」 

妥当な称号ではあるが、洋を呼び表すなら、メアの推奨する「変態」と衣鈴の推奨する「ロリコン」も組み入れたいところだ。 

「小河坂くん……ありがとう……」

「わたしは……もう、大丈夫だと思う……」 

「強くなれると思う……だから……なにがあっても受け入れる……」

「難しくても、受け入れる……時間はかかったとしても……」

「最初は、きっと取り乱すだろうけど……」

「あなたにも、こさめにも、迷惑かけるだろうけど……」

「だけど、絶対、大丈夫」

「わたしは、悪夢を、克服する――――」 

力強く宣言するこももには、突きつけられた死のイメージに怯えて、震える事しか出来なかった以前の面影は感じられない。 

しかし、悪夢を克服することによって、大切な何かが失われるとしたらどうだ。 

悪夢を見続けるのも、一つの生き方……というわけにはいかないのか。 

 

社殿、雪菜は万夜花を呼びつける。

曰く、自分は仕事を降りる。

「あなたは『彼女』を送り還したくないわけね」

「はい」

「代わりに私が送り還すとしたら?」

「あなたは私の敵となります」

降りるのはいいけど、これからどうするつもりだろう…。

 

夜、こももと洋はこさめによって展望台に呼び出される。 

展望台に現れた二人に、こさめはいきなり薙刀を突き付けた。 

その態度は、夏休みの時と同じく、偽悪的だ。

「わたしは、姉さんを送り還したいんです」

「これ以上、ここに止まってはいけないから……還るべき場所がほかにあるから」 

「だから、送り還すしかないんです」

こさめは薙刀を構えて、こももを攻撃する意志を表明するが…。

「こんなのは、茶番だ」 

「こさめさんは、本気で姫榊を襲おうとは考えていない」 

こさめは、何かを隠している。 

洋に指摘されると、こさめの顔から険が抜けた。 

「姉さんは、頼りになる人を見つけたんです」 

「だから、大丈夫です」 

「姉さんは、一人ではないんですから」 

言い残して、展望台から背を向け、去っていく。 

……こさめは何がしたかったんだ。 

こんなやり方で送り還しても、誰も納得しなかっただろうに。 

 

遅れて現れた雪菜は、一人で坂を下りて行くこさめに声を掛ける。 

「私の仕事は、失敗したんだ」 

「だから私は、悪夢を刈ることはしない」

「キミの姉の悪夢を刈ることはしない」 

「キミを送り還すことは、しないんだよ」

……。

七年前、展望台の事故で死んだのは、こさめだった。

こももの悪夢の中で墜落死を迎えるのも、こさめだった。 

それほど驚きはない、どころか既に明らかなのに引っ張りすぎだろと思ったくらいだな。 

 

展望台で、こももは寒さに震えている。

「……やっぱり、そうなのね」 

「死んでいるのね」

「こさめは、もう死んでいるのね――――」

二人とも、薄々気付いていたみたいだな。 

では、こももはこの事実を解っていながら「悪夢を克服する」と言ったのか。 

 

こさめは、雪菜に懺悔している。 

雪菜と友達になろうとしたのは、情を移させて命乞いするためだったと。 

「死ぬのが怖いんです」

「既に死んでいる身でも、死にたくなかったんですよ」

雪菜は言う。

それは嘘だ、と。

そもそも、こさめを送り還して欲しいと依頼を寄越したのはこさめ自身だ。

こさめは、雪菜に雲雀ヶ崎を好きになってもらうことで、雲雀ヶ崎にとって“まつろわぬもの”である自分を積極的に送り還すように仕向けた。 

メアを襲撃したのも、雪菜が禍根を残すくらいなら、どうせ近く消えることになる自分が汚名を被ろうとしただけのこと。 

こんな風に、こさめはいつも、雪菜の為に行動していたのだ、と。 

「キミを送り還すことは、最初は容易いと思っていたよ」

「クールダウンと呼べるほど容易いと。なぜならほかの同類と違って、キミは抵抗する素振りがないから」

「なのに、今では容易いどころか、難しい」

「最も難解な仕事に変わったのさ」

「……どうして、そんなふうに思うんですか」

「キミが、この諏訪雪菜の初めての友人だからさ」

……涙が噴出した。 

俺の目から。 

共通ルートから少しずつ積み重ねてきた友情が、ついに結実したのか……いい話じゃないか。

「わたしは弱い人間です……」 

「違う。それは人として当然の感情だ」

「姉さんと一緒に暮らしたい……」 

「わかっている」 

「みんなのそばにいたい……」

「わかっている」 

「いなくなりたく、ない……」 

「だから私は、この仕事を降りると言っている」 

「キミを送り還す輩がほかに現れたとしても、私が必ず守ってみせる」

ちょ、雪菜先輩……。

格好良すぎだろコレ、完全に洋を食ってるぞ。 

 

やがて追いついてきたこももは、泣いてこさめに縋りつく。

そんな姉を、こさめは優しく諭す。

「わたしは、姉さんの悪夢なんです」 

「わたしは必要ないんです」 

こさめは、自分が消えるべき存在だと思い込んでいる。 

「わたしはこさめと離れたくないっ……離れられるわけないじゃない!」

「わたしたちはずっと一緒だった、生まれた時からずっと一緒だったのに!」 

泣き叫ぶこももを、こさめは抱き締める。 

……。 

こももにとって、何が必要で何が不要か、そんなのはこももが決めることだ。

こさめの考えは星天宮の総意そのままで気に食わない。

何とかしてやりたいが…。






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Last updated  2010.02.16 05:15:51
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