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2010.02.27
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『星空のメモリア』感想 第三十二回

“小河坂千波”編




……。

倫理をブチ壊すのは構わないけど、しっかりと理由付けするなり雰囲気作るなりして説得力を付加するのは大事だと思うんだ。

モヤモヤしてエロを楽しめねえ。

どうしてこんなことに……。


※以下、ネタバレ注意

















































前回のあらすじ。

洋たちの親世代の事情が明らかになった。


【8月24日】

千波が目を覚ます。

つきっきりで看病していた詩乃さんには目も呉れず、オルゴールを求めて胸に抱く。

「お父さん……お母さん……」

涙を流す千波に、詩乃さんは触れることが出来ない。

詩乃さんは、歌澄の遺志を引き継ぎ、洋と千波の家族になりたかったのに。

―――家族を作れない身体の私に、その資格があるというの?

『あるわ、私たちが保証する』

どこからか歌澄の声がした。

その声に背中を押され、詩乃さんは初めて千波を抱き締める。

…資格なんて言い出すと大抵ろくなことにならないから、多少図々しい方がまだマシだろう。

「あ……詩乃さん……」

「お母さんと…同じ匂い……」

「おなじくらい……あったかい……」

「詩乃さん……ううん……」

「お母さん……大好き――――」

……。

歌澄は、ただ図々しく自分の恋に生きたのだろうか。

部外者である俺から見れば釈然としないが、この千波の笑顔を見れば、結果としてはそれで良かったんじゃないかな…。




朝、目覚めた洋は、千波に馬乗りされてる自分を発見。

「やっと、お兄ちゃんより早く起きられたよ」

「約束通り、千波に朝食作らせてね」

千波は、レンに話したことを洋にも打ち明ける。

自分がお荷物になったせいで母親が死んだから、洋には面倒かけたくない、という例のアレだ。

洋は、当たり前の台詞を返す。

「俺は、おまえのままのおまえが好きだ」

「俺が好きになったおまえを、おまえも好きになってくれ」

「おまえが幸せになれるなら、俺も幸せなんだから……」

うんうん。

「……妖精さんの、言ったとおりだった」

「千波は、幸せ者だよ」

二人は静かにキスを交わす。

……。

何故キスした。




楽しげに朝食を作る千波を眺めつつ、洋は先ほどのキスについて考えている。

そういうことなのか。

……そういうことでいいのか?

いいわけあるかっ、この玉無し野郎。

しかしここで引き下がることも出来ない。背水の陣。

千波は朝食にシュトーレンを作るらしい。

“シュトーレン”とか言われても『ギャラクシーエンジェル』しか思い浮かばないんだけど、どんな食い物なんだ。

「生地にドライフルーツを練り込み発酵させて焼いたのちにラム酒を染みこませバターでコーティングしてからさらにアプリコットジャムを塗る焼き菓子か」

加えて言うなら、名前の由来は“トンネル”らしい。

美味しそうじゃん。

「難易度が高すぎないか……?」

「そんなことないよっ、千波は卵を焼くだけでティラミスが作れる凄腕料理人だからねっ」

あれはただの消し炭だろ。

ティラミスとか、おこがましいにも程があるぞ。

そして卵を割らずに殻ごとフライパンで炙り始める千波……意図がわからない。

「卵が絶妙な案配にどす黒く変色してきたよっ、これでいいかなお兄ちゃんっ」

「千波最高ー!サイッコー!」

「お兄ちゃんが壊れてる!?」

洋はこの苦境を乗り切るために、進んで発狂することを選んだようだ。

やがて、料理は完成。

フライパンの上には、立派な備長炭が鎮座していた。

「千波最高ー!サイッコー!」

「いったいどうしちゃったのお兄ちゃん!?」

……あのね、比喩じゃなくてそっくりそのまま備長炭なんだけど。

明らかに材料よりも体積が大きくなってるよね。

とりあえず、フォークで刺してみる洋。

刃が欠けた。

「千波最高ー!サイッコー!」

「それなにかの合言葉なのお兄ちゃん!?」

千波が備長炭を鷲掴みにし、洋に向けて突き出してきた。

「はい、あーん」

「千波最高ー!サイッコー!」

「よくわからないけど逃げないでお兄ちゃん!?」

……。

あのさ、なんでお前はこういう時に限って「味見はしたのか」の一言も言えないの?

こんなんじゃ千波の為にもならないよ……と思ったけど、どうせ千波の手料理を食わされる男なんて当面は洋くらいなもんだろうからいいか別に。

「まだまだあるからいっぱい食べてねお兄ちゃんっ」

「千波最高ー!サイッコー!」

「あくまで執拗に繰り返すお兄ちゃんが恐ろしくてたまらないよ!?」

そんな二人を、詩乃さんは微笑みながら見守っていた。

傍から見る分には愉快な光景なのは間違いない。




夜、学校の屋上で天クルの天体観測。

「渋っていたんですけど、無理を言って連れてきてしまいました」

「まあ、遅かれ早かれ来なきゃいけなかったし。監督するって言った手前はね」

「……誰も監督なんて頼んでないのに」

雪菜先輩は居らず……ちょっと寂しい。

鈴葉ちゃんは、衣鈴の望遠鏡の準備を手伝おうとしている。

「……望遠鏡、さわっちゃだめかな?」

「じゃあ三脚の用意だけお願いできる?」

「うんっ」

やはり望遠鏡に触らせてはくれないか。

まぁ衣鈴の悪夢は洋が干渉しなくても、時間が経てば自然と消え去る程度のものだろ、きっと。

岡泉先輩は、例の“元顧問”の話をする。

現役の数学教師であり、プラネタリウムの館長もやっていた、と聞いて反応する衣鈴。

「館長がヒバリ校の先生なら、納得です」

「だから先生は、このカギを私に……」

衣鈴は、恩を感じているんだろうか。

すぐにぶっ壊れるようなボロ望遠鏡を寄越した三島大河に。

「まあ、三島先生は態度はぶっきらぼうだけど、生徒には誠実だから、いろいろと話も聞けるんじゃないかな」

そして、洋も気付いた。

「その先生、三島っていうんですか?」

今さらだけど、子供たちを詩乃さんに押し付けて、まともに連絡すら取ってないのか、あのダメ人間は……。




同時刻、天クル部室。

三島大河が、無事にオルゴールの修理を完成させたようだ。

「あのバラバラだった惨状から見事カンペキに復元した。俺はやっぱり天才だな」

「おめでとうございます……クスクス……」

「……その笑いはやめろ」

「私は大河くんが大好きです……クスクス……」

大河は、洋と千波に会いたくないために、天クルが天体観測に出ている隙を見計らって部室に忍び込んだらしい…。

何か考えがあって会わないようにしているわけじゃなく、単に腰抜けなだけかい。

オルゴールの中のペンダントは、レンに千波を見守らせるために、大河が仕込んだものだった。

レンは、メテオライトのペンダントの近くでしか姿を現すことが出来ない……。

こさめが言っていた“特定の電磁波”を放つ隕石ね、なるほど。

「キミが言ったんじゃないですか……千波さんを見守ってほしいって……」

「そう、キミと約束したのに……なのに、キミが持っていってしまったら、私は……」

取り出されたペンダントを見て、レンが狼狽している。

星神には拠り所がないから、人との約束を求める……これも衣鈴ルートでの説明の通りか。

「新しい約束だ。俺を助けろ」

「これまでも助けてもらっていたけど、また助けてくれ」

「このペンダントは、俺の首にぶら下げておくからさ……」

……これ、プロポーズか。

レンは安心して、屈託の無い笑顔を見せる。

「……ダメ人間」

「大河くんは……ダメ人間です……」

「とっても……」

ラブラブじゃん。

この親にしてこの子あり、か。

 

小河坂家、眠そうな千波を部屋まで運んでやる洋。

千波は、洋と一緒に寝たいとせがむ。

ついにきたか……きちまったのか? 

「千波たちはもう恋人同士だからだよっ」

「なんだとぉ!!」

俺が言いたいわ。

まさか千波のエロを見る日が来るなんて……体験版をやった時には夢にも思わなかったのに。

「おまえ、恋人の意味わかってるのか?」

「キャベツ畑で男の子を授かってコウノトリから女の子を授かる関係だよっ」

あっちゃあ……。

日本の性教育の杜撰さに絶望すること頻りだ。

「なぜこんなことに……」

「このシーンでその態度は恋人失格だと思うよお兄ちゃん!?」

そう言いつつ、千波をベッドに押し倒す洋。

ああああ……。

「なぜこんなことに……」

「ここに到ってもまだ言うのお兄ちゃん!?」

そう言いつつ、テキパキと千波の服を脱がす洋。

エロゲの近親姦というのはダークな雰囲気がないと、むしろ見ていて恥ずかしくなるものだと気付いた。

見てらんねえよ…。

「なぜこんなことに……」

「いい加減しつこいよお兄ちゃん!?」

どうでもいいけどさっきから天丼多いな。

こいつら濡れ場でも漫才しなきゃ気が済まないのかよ。






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Last updated  2010.02.27 06:22:55
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