下天のうちをくらぶれば(7)
(1) Previous ← ■「購物車男孩(Shopping Cart Boy)/ショッピングカート男」侯季然(Hou Chi-Ja)監督2007年/35ミリ/20分ストーリーぼくは大都市郊外の量販店で働いている。ショッピングカートの世話係だ。来る日も来る日も同じ手順で同じ動作を繰り返す/公徳心のない客はカートを店外の遠くの方にまで転がしていったりする。それを回収しにいくのもぼくの仕事だ。この仕事には想像力がいる。だいたいどのあたりにうちのカートがいるか、想像力を働かせて、回収にいく。次第に回収ルートが確立してくると、今度は退屈がはびこってくる//わたしは、こうして、ときどき、カート男と遊んでやるのだ。ひと言ショッピングカート男を演じたのは「刺青」でもチンピラ青年役の印象的な演技で光っていた是元介(Jay Shih)。是元介は男二人の音楽ユニット「元衛覺醒/Awaking(アウェイキング)」もやっていて、本来は音楽アーチストだそうだが、役者としても相当うまい。今回は見事にショッピングカート男になりきっていた。もうこれからは、是元介を思い出さずにはショッピングカートを押せない。原作は孫梓評という人の詩だそうである。映画は全編、ショッピングカート男のつぶやくようなモノローグを背景にして、男とショッピングカートとの関係および関係の無さを淡々と描きながら進んでいくんだが、最後のシーン、ショッピングカート男がカートの中に身をねじ込んでいる場面で流れるモノローグは、俺の聞き違いでなければ、ショッピングカートの一人称になっていた。とてもスタイリッシュでクールな作品だった。(つづく)(1) Previous ← ■