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2008年04月15日
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カテゴリ:創作
 俺の名は、春野 梅太郎(はるのうめたろう)。今年の3月に高校に入学したばかりだが、未だに中学生とよく間違えられる。しかし、今のこの俺は、誰がどう見たって、立派な成人男性だ。そして、目の前で顔を下に俯いてる幼い少女が、俺より、10歳も年上の姉だなんて、誰も想像さえもしないだろうな。俺も少し、これは、夢なんじゃないか?って、思い始めていた。
  
 「ねえ、おにいちゃん…ほんとに、しなきゃだめなの?」
  
 嫌がってるからではない。物凄く照れて、恥ずかしがっているだけだ。頬にうっすらと薄紅色がかってて、可愛いじゃねえか。上目遣いで俺を見つめているのが、俺の姉、春野 桃子(はるのももこ)と知らなければ。姉の桃子は、性根が腐ってると俺は断言できるが、同年代の奴らは皆、騙されている。冷静に的確な行動や助言で同性にも好かれてるが、さっきも言ったように、性根が腐ってる。おまけに、ショタコンで変態だ。こいつのおかげで、俺は物心ついた頃から、男としての屈辱を甘受してきた。そして、いつの日にかは、力で屈服させてやろうと思っていたが、まさかこんな早くにチャンスが訪れるとは、思ってもみなかった。

 …こんな風になったのは、さっきのことである。
 
 「おい、梅太郎。ちょっと来い」
 「なんだよ、姉貴。帰ってたのか」
 「黙ってついて来ればいい」
 
 いつもこんな風に、外での丁寧な喋り口調はどこへやら、俺に対しては遠慮を知らん奴だ。
 
 「お前にいいもんやろう」
 「なんだ、これ?」
 「いいから、食え」
 「赤いキャンディと青いキャンディー?」
 「昔みたいに、仲良く、半分ずつだ」
 「嫌だよ。どうせ、ろくでもないもんだろ」
 
 以前、と言っても5、6年くらい前だが、今と同じセリフで媚薬入りの饅頭を食わされたことがある。その時のことは、思い出したくもない。だから、この一見、この普通のキャンディーに対する警戒を怠らなかった。
  
 「馬鹿ね。これは、何の変哲もない、普通のお菓子なのに。ほら、平気でしょ」
  
 そう言って、青いキャンディーを躊躇なく飲み込んだ。
  
 「姉貴、薬じゃないんだから、飲み込むなよ」
 「えっ…、薬?違う、これは薬じゃない。だから、さ、お前も飲みなよ」
  
 怪しい。でも、これが何であれ、俺は姉に逆らえなかった。
  
 「ええい、どうにでもなれ」
 「あれ、なんかこの部屋が大きくなって…」
 「まずいっ。ってか、やっぱり、これ薬じゃん」
  
 気がつくと、姉はいなかった。いや、視界から消えていただけで、そこに姉はいた。
  
 「あれぇ、ここはどこ?あたしは、だぁれ?」
  
 分かり易い反応だ。しかし、目の前に幼い少女がいる奇妙さに気がつくより先に、自分の体が感じる違和感に恐怖を感じていた俺は、洗面所へと走り去っていた。
  
 「なんだこれ、まさか、俺か?」
  
 もう背が伸びないと思っていたが、今年になって少し伸びていた。しかし、それでも体の線が細い。昔から、からかい口調で、姉が男だったら、俺をお嫁さん貰うなんて言われたものだ。まだまだ、姉の視線には、不気味な寒気を感じて笑えん冗談だがな。しかし、今の俺は、少し肩ががっしりしている気がする。それと、髭が生えている。高校生にもなって、まだ、髭が生えてもいないし、アレの毛も薄い。しかし、今は、アレの毛も濃くなってる。俺はどこからどう見ても、立派な成人男性だった。
  
 「ねえ、一人にしないで」
 「ぶっ」
  
 噴出した。縮んだ姉がだぶだぶの服を引き摺るその顔が、うるうると涙目なのが。普段の姉とのギャップの差から、心の奥底から笑いが滲み出てくるのだ。なんとなく、現状を理解できた。多分、姉が俺に食わそうとしたかったのが、実は、姉がさっき飲み込んだ方のキャンディーだったのだろう。そう気づいた俺は、姉の間抜けさに笑いが止まらなかった。
  
 「おにいちゃん?」
 「ん~、桃子。俺のことは、梅太郎様と言うように」
 「は、はい。梅太郎様」
 「でも、まあ、おにいちゃんも悪くはないかな~」
 「おにいちゃんって、呼んでもいいの?」
 「いいよ。俺の言うことに逆らわなければね」
  
 俺が物心ついた頃から、姉は俺を奴隷のように見下して、俺を玩具にしてきた。だから今、幼い体の姉が俺を慕って従順になっている状況に、俺は、言い難い感情を抱いている。今まで俺は、一度も姉を女として見たことがなかったが、こんな風に、恥ずかしそうに頬を赤らめていて、まるで、兄を慕う妹に変貌してしまったかのような姉に、俺の体は正直に反応していた。
  
 「ところで、服を着替えたら?」
  
 ぶかぶかの服がずり落ちて、小さな胸もふともももあらわになっていた。慌てて両手で隠す仕草に、俺は、頬が緩んだ。
  
 「いやっ、見ないで。おにいちゃんの、えっちぃ」
  
 普段の姉を知ってる俺は、あまりのギャップの差に爆笑しそうなのをこらえて、涙を噛み締めていた。欲望の塊がムクムクと、大きくなっているのも心地好い。だが、次の瞬間には、精神的にも急速に萎んでしまっていたのではあるが。
  
 「うふっ、相変わらず小さくて可愛い」
 「げっ、戻ってる」
 「梅太郎さんったら、あははははは」
  
 そう言って、姉が二階へと、スキップしながら、階段を上がって行ってから、気づいた。
  
 「…さんだって!?」

 外の晴れ渡った空は、これから起こるであろう春の嵐の前触れだろうか。





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最終更新日  2008年04月15日 10時43分43秒
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