ヨーロッパ誕生
読書の秋なのか乱読中です。鯖田豊之著「世界の歴史 9 ヨーロッパ中世」河出書房新社(河出文庫)図書館から適当に借りた本で、それほど期待していなかったのですが、久しぶりに「目からうろこ」、「腑に落ちる」を体験をしました(脱線ですが、日本語表現は豊かですね)。初版が89年、文庫版が95年とやや古く、「ヨーロッパ中世」のテーマでこれを上回る一冊があるかもしれません。よかったらご紹介ください。勝手に内容をまとめると、「ヨーロッパ中世という区分、表現は正確でない。むしろこの時期になり初めて『ヨーロッパ』というものが形作られた」。例えばローマ帝国は、「古代ヨーロッパ」とはいえない。この見方に電流を感じました(だが、ひょっとしてこれが定説なのでしょうか)。高校では世界史を選択したのですが、中世はぼんやりとした印象でした。十字軍、封建制度、カノッサの屈辱ぐらい。それらについても暗記のみの知識で、「どうして?」という問いかけは皆無でした。まあ大学受験でもあまり出題もなく人気もない時代です。僕自身、牧歌的な中世より、群雄割拠、バランス・オブ・パワーの19世紀が好きでした。読了後、考えが変わりました。中世が面白い。多分それは今現在、欧州(の辺境ですが)に居ることも関係しているでしょう。例えばEU加盟問題には、「そもそも、『ヨーロッパ』って何なの?どこまでなの?」という問いが根本にあります。またEU統合推進は、中世への回帰とも言えます。そうした動きが同時代的、すぐ間近に起こっているだけに、中世への興味が向いたのかもしれません。