カテゴリ:新しい生き方を求めて。
写真:晩秋の嵐山(by Danjose)
人はどのような時、その命を輝かせるのか。 4日にNHKスペシャルで「脳梗塞からの再生」というドキュメンタリーが放映された。 4年前、脳梗塞に倒れ、一夜にして右半身不随、声と食べる自由を失った多田富雄さん。世界的な免疫学者であると同時にエッセイストであり、能の作者だ。しかも現在71歳というお歳なのである。 この番組はそんな多田さんが、病後の不自由な身体と闘いながら、免疫学者として能作者として、新たに蘇り、貪欲に活動を続ける日々を記録している。 死に絶えようとしているかすかな命に、貪欲にしがみ付きそこから這い上がろうとする日々である。そして、その日々は以前にも増して創造的に生きる日々であり、輝く日々となっている。 多田さんは、「すべてのものを失うと新たに見えてくるものがある。」と言っておられる。 多田さんは、免疫学者として、広島の原爆の恐ろしさ誰よりも深く自覚しておられる。 そのヒロシマを新作の能にしようとして長年、心に温めてきたがどうしても書けなかった。しかし、病に倒れ、死の淵をさ迷い生還しようと日々闘う中で、ヒロシマの被爆を能にすることが出来る自分を発見した。そして多田さんは新作能「原爆忌」を今年の夏、完成させた。 番組の中でも、その能の一部を紹介していたが、とても能に縁遠く無知な私にも、分かりやすく感銘を受けた。能の奥深さを改めて知ることが出来た。 「いのち」は、もろいようだがかくも強靭でしぶとく生き続けることが出来るのだと、身をもって私たちに示してくださっている。 これは、多彩な才能を持っておられる多田さんだからこそ出来る驚異的な命の輝きなのだろうか。長い人生のなかで築いてきた多田さんの重い仕事が、強靭にしぶとく生き抜けるエネルギーになっているのだろうか。 その非凡さは、私たちには及ばぬ事とはいえ、この命の輝きは、私たちに「強く生きる勇気や元気」を与えてくれるすがすがしさがある。 このように命は重いことを私たちに教えてくださっている。 私も確実に身体は老いに向かっている。 しかし、命は輝きを増しているか。 そして、シンプルに生きているか、 日々、自らこう問うて生きる日々でありたい。 多田富雄さんが、脳梗塞の“再生”を果たした時、左手だけで打つワープロで最初に書いた詩、 叫ぼうとしても声は出ず 訴えようとしても言葉にならない 渇きで体は火のように熱く 瀝青(れきせい)のような水は喉をうるおさない お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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