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日々草

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2006.09.27
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テーマ:今が旬の話(413)


安倍晋三の保守とは何か。             
安倍新政権が発足し、5年半続いた小泉政権は幕を閉じた。

 小泉政権に対して、私なりの論陣を張って、このブログに意見を書き続けて来た者の一人として、ここで何かコメントすべきだが、その熱意を失っているというのが今の私の心境である。余りにも自分の予測通りに社会が急展開しているのは驚くばかりである。
それと同時に、政治家を先頭に、ごくごく庶民に至るまで、自分の信念や考えなどどうでもいいのか、簡単に権力の側になびき、擦り寄っていく様は驚くほどである。
 市場の自由競争によって、自分が金持ちになれるかのごとく幻想をもたされて、日本中がマネーゲームに浮かれた日本。
自由な競争によって、自分の能力にふさわしい仕事口が見つかると期待している若者たち。
睡眠する間もないほどに真面目に懸命に働き通しても、悲惨な日常しかない庶民。
ますます老いる身に鞭打ち、細々とした暮らしているその生活さえ立ち行かなくなっている大量の老人たち。

このような社会現象は、益々社会の奥深い所で深刻化している。
そして、深いところでの人間性の破壊が進行している。

昨日、発足した安倍新政権の首相:安倍晋三は「美しい国へ」という本を出した。
この本は読むのに難渋した。遅々として読み進めなかった。
この本の主張したいところは一体何なのか。支離滅裂でつかみ辛いのである。

この本の中で安倍三は言っている。
 憲法や教育基本法は、敗戦による日本が、連合国への「詫び状」のようなもので、けしからん。(詫び状と言っているのはあの戦争の犯罪性を認めているのか)。
日本人は、戦争をやったことに対して、自虐的になって、戦後生きてきた。(それドンナ日本人で誰のこと、安倍氏自身のことなのか)
日本人としての誇りが足らん。(それ誰のこと、自分のこと言っているのか)
もっと日本の古くからの文化に誇りを持たなければいけないとお説教しているかと思うと、アメリカの個人主義的な自由主義に高い共感を述べている。
アメリカの言うままの憲法はけしからんと言うその一方で、アメリカとの同盟関係はより強固にしていかねばと言っている。

要するに、この安倍晋三の保守主義は、ただ単なる、戦争をお国の為にやった人は偉かった。独自に日本で評価し直し、国民たちにも、国のために戦争で戦った人たちを敬うように強力な介入で強制しなければいけない。
(庶民にとって、犠牲になったのは父であり、兄であり、息子であり、痛恨の思いで戦後生きてきたので、敬ってもらうより、戦争のない国づくりのほうが、死者への力強い鎮魂となるけれど)

自分の祖父(岸信介)は偉大であった、信念を貫いた人であった。誇りに思っている。自分は幼い時からそのような祖父の生活を見てきて、あの戦争は、そんなに卑下すべきものではないと思うようになった。
日本人として誇りを持てよ。
と何度も繰り返しているのは、よほど安倍晋三なる人物は、戦争の犯罪性に後ろめたさがあり、日本人として自虐的に生きているのではないのか。

さらに恐ろしいことに政治家は「闘う政治家」であるべきだ。自分は闘う政治家だと、言いきっている。自分のおじいさんもそうだったので見習いたいと言っている。

 私は、教育にたづさわる者として、安倍晋三が「美しい国へ」の第7章;教育の再生で述べていることについて考えてみたい。

 安倍晋三は、イギリスのサッチャー改革を教育のお手本にしようとサッチャーをえらく持ち上げている。日本教育の問題点と似通っているとさえ断定している。

日本の子供たちの学力低下、モラル低下は戦後の教育にあり、とりわけ近年の子供たちの学力低下は「ゆとり教育」にあるとさえ言っている。
これほどでたらめな論理は、反論するのも馬鹿らしい。
私は「ゆとり教育」に別に賛成でもないし、反対でもないが、日本では「ゆとり教育」などやられた事は一度もない。
数年前に国が「ゆとり教育」なるものを打ち出し、総合学習時間を作るよう命令したが、こんなものは、まともにやられていないし、その成果は1年や2年で現れるものではない。成果が現れる前に止めになって、今は分けの分からぬ教科の補習時間に使っている。

 なぜ、今の子供たちは、高い真の意味での学力が形成できないか。

 私はこのブログでも、繰り返しこの問題を取り上げ考えてきた。
現代の社会のありようと子供たちの成長の仕方は深く関っており、極めて、高度な専門的な分析や、対策、教育プログラムが必要な問題であると私は考えている。
教育の現場の専門家たちが、深く分析し、研究し、新しい方法の確立なしには解決できない極めて現代的な問題だ。
現場の教師たちの多くがこの点での認識の一致、深い解明に、自由で活発な討論や研究実践をしていない、単なるサラリーマンになりさがっている教師が多い。これが一番問題ではないか。そのようなことを自由に許容しないのが、今の教育現場ではないか。

お上のいうことの当たり障りのない伝達者に教師は成り下っている。
長いものには巻かれろである。

そして、国は、ころころと現場の教育方針を変える。
現場は右往左往して、それに迎合している。
教育の方針が、このように、ころころと時の国家、権力によって左右されることこそ、最も教育を退廃させている原因だ。

三安晋三はその本の中で、
「ぜひ実施したいと思っているのは、サッチャー改革が行ったような学校評価制の導入である。学力ばかりでなく、学校の管理運営、生徒指導の状況など国の監査官が評価する仕組みだ。問題校には、文科相が教職員の入れ替えや、民営への移管を命じることが出来るようにする。」
と言い切っている。

このように国家が教育を統制するとは、恐ろしいことである。
それは、権力が変るごとに教育の内容が変ることでもある。国家権力の思いのままに、教育を通して、国を支配しようということである。

これは、まさに戦前の日本が歩いてきた道そのものへの復古である。

過去の歴史から何も学ばない。教育する者の態度とは相容れないものである。

 先日、東京都教育委員会の「日の丸・君が代」強制を違憲とする判決が東京地裁で下された。
「日の丸・君が代」云々については、さまざまな意見、感情があり、どう判断するか難しいとこであるが、それを現場の総意でおこなったなら、それはそれでいいことではないか。
さらに問題なのは、そのことを、人事権にまで及ぼしていることである。
もし、東京都や国のいうことは、すべて正しく、それに従わないものはけしからんというのなら、
教育の中立など成立しなくなる。

 現在の国や東京都と反対の思想の階級が権力についたら、教育の現場は又それに従うのか?
安倍晋三の論法でいけば、時の権力により、ころころ変るのが教育ということになる。
このように極めて政治的な事柄が、教育に持ち込まれることを厳しく禁じているのが今の憲法であり、教育基本法である。
今国会で、教育基本法改定案は再び審議される。
安倍晋三氏は、なぜ教育基本法を改定したいか、その目的は何か、私たちは注視しなければならない。

 安倍晋三の「美しい国」とは、明治、大正、昭和と歩んできた、アジア共栄圏の名のもと、侵略戦争を遂行した国家のことではないか。日本の山河を廃墟としたあの戦争遂行の国家のことではないか。
西洋かぶれの現代的なスマートなカバーをはがしたら、中から現れるのは、独善的な歴史観を国民に押し付ける全体主義的な恐ろしい国家なのだ。
アメリカと共同して世界中で戦争をやることが可能になることをめざす国家である。

私は、美しい国とは日本の国民が時の横暴や圧制のなかにあっても、営々と築いてきた文化であり、粘り強くつつましく暮らしてきた日本人の心であると思う。

 アメリカに言いなりの憲法はけしからと言いつつ、片方で、アメリカの新自由主義的な市場万能の経済を先頭になって推進し、庶民の生活をアメリカナイズされたモノ主義、拝金主義に染め上げている政権。アメリカの言いなりになっている政権。
これが「美しい国」といえるか。

 では真の保守とはなにか。何を保守すべきか。
 日本のこの美しい国で暮らす人々が、ゆったりと豊かに暮らせる社会ではないか。そのような暮らしを可能にする思想ではないか。
それは、過去の日本人たちが長い歴史の営みの中で、営々と粘り強く築き上げてきた文化のなかにあるはずだ。その伝統を新しいく作り変えて継承していけるような知性や智恵を子供たちに育てることこそ教育の真髄であると思う。

保守すべきは、過去の歴史の中にある。
大東亜共栄圏の名ののもとに、戦争へと国民を駆りたてたものから何を学ぶべきか、何が日本人として誇れる学びかを教育の場で深く研究し、実践しなければ、美しい日本など絵空事だ。
日本人が千年もの歴史のなかで造り上げてきた生活をめちゃくちゃに破壊し、「世界の負け組み」になることを免れたと、その成果を誇示する政権が今の日本の国家である。
今、日本の山河は疲弊している。
今、日本の子供たちの心はゴム鞠のように弾んではいない。
これを克服していけるのは、過去の歴史どう見るか、そこから何を学ぶか、という歴史観が厳しく問われている。

極めて、イデオロギー的な安倍晋三が、「歴史のことは歴史の専門家に任せる」と発言したことの意味は重大である。
そこに潜む危険を私は見逃さないようにしたい。
安倍晋三が唯一、一貫しているのは「反共」ということである。この点だけが支離滅裂でなく、「美しい国」全体を通している太い糸である。

私より、若い世代がこの程度の歴史観しか持ちえていない日本は、やっぱり戦後の教育に問題ありと改めて思い知らされている。
そして、安倍晋三の歴史観は若い世代の共通項にも通じている。






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最終更新日  2006.09.28 08:45:27
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