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2006年05月08日
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カテゴリ:読書案内(?)
ツーことで、GW終わりましたが、皆さんはいかがお過ごしになりましたでしょうか?あっしは『お話』の書き溜めをすべくどこにも行かないで頑張っていたんですが、300話書き終わったところで、どうも先に進まなくなってしまい、気分転換に4日から6日までちょいと耽読してしまいました(^^ゞ 初日は読みさしになっていた篠田真由美の『すべてのものをひとつの夜が待つ』(カッパノベルス)読みまして、これについてはもしかしたらネタにするかもしれませんが、それよりも印象に残ったのがその翌日から読み始めた宮城谷昌光『香乱記』(新潮文庫・全四巻)です。読みやすい上に物語にドンドン引き込まれるのでほぼ二日で読了しました。読む前にちょいとパラパラした時に項羽とか劉邦とかの名前が出ていたので、秦末から前漢樹立までの時期の話だろうと思って読み始めたら、田横(でん・おう)って誰?って感じでした。この田横って人が主人公らしい。そのうち項羽とか劉邦とかが主役になるのかと思ったら、違いました。はっきり言って田横という人物については何も知らない、初めて知った名前ですが、中国では項羽や劉邦より評価が高いらしい。時折地の文でそういうことが書かれていたりしたので、途中までは首を捻りながら読んだけど、読み終わると納得しました。不撓不屈って言葉がピッタリのような気がしました。ちなみに田横の姓の田は同じ音の陳から変じたものらしく、太公望が封じられた山東の国、斉の戦国時代の有名人、孟嘗君も田文といい、斉の公子の息子だったようです。この田横も斉の王室の血を引くものらしい。

戦国の七雄のうち秦が他の六国を降して中華を統一した時代、かつて五国連合の名将楽毅の軍に首都・臨シ(字が出ない)を奪われ、殺された時の王の曾孫に当たる田横は済北の地、狄で兄の田栄、従兄の田タン(字が出ない)らと暮し、田氏の三兄弟と呼ばれていた。ある時、田栄の妻の実家で、曽祖父の代からの友諠のある楡家の葬儀に行った帰りに秦兵の護衛する馬車が襲われるのに遭遇する。その賊は秦兵を殺すのが目的で、馬車に乗っていた人物や田横らには手を出さず、馬車を壊すだけで引き上げていった。その馬車に乗っていた人物は許負という天下一の人相見で、かつて一度も占いの結果が外れたことがないと言う。そうとは知らない田横たちは許負に『三人は王になる』と予言されるが、冗談だと思って信じない。許負は田横には『田横は二人の兄を護る星のようなものだ。田横を護る七つの星を見つけなければことは成就しない。一つは雲の向うにある』と告げた。許負を当初の目的地である臨シに連れて行った田横が狄に戻ろうとすると、田タン、田栄らが賊に通じている容疑で県令に捕縛され、田横もまた捕縛すべく網が張られていた。田横は冤罪だと思ったが、これを晴らすには許負に証言してもらうしかない。が、県令の手がどこまで延びているかわからない。迂闊に臨シに近づくこともできない。が、田横はかつての臣下筋を頼り、協力を得て、伝を頼って既に臨シを出てしまった許負のもとへ赴き、田氏の冤罪のことを軍守に使者を遣わせてもらった。その時に許負は『既に五つの星を見つけた』と告げ、予言が着実に実現へと向かっていることを知らしめたのだが…

まぁ、最初の方だけをちょいと書いて見ましたが、秦の始皇帝の時代ですから厳格な法治国家で、密告が横行しています。些細な罪でも、冤罪でも関係なしに罪に落とされる民が何十万、何百万人も居たといわれています。今の常識ではとんでもないんですが、これもある意味では理想郷ですね。統治者にとってはこれほど治め易い国はないのですが、やがて形骸化し、腐敗に塗れていきます。統治者が絶対であり、上位下達がキッチリしていればいいのですが、そのラインの途中で恣意的なことが行われると、すべてが狂って行きます。その一つが始皇帝の死後の嗣王決定の経緯ですよね。始皇帝は皇太子に譲位するつもりだった。けれどもその意志は捻じ曲げられ、歴史が大きく狂って行きます。もしも始皇帝の遺志どおりになっていたらどうなったか?そういう疑問も投げかけますが、歴史小説では逸脱は許されません。トンでも歴史小説のように『もしも』はないのです。そういう道もあったが閉じられてしまった、という書き方です。だから、物凄く切ない気持ちにもなるんですよね。いろいろな場面で『もしも』は提示されますが、その何れもが『もしも』で終わってしまい、歴史は動かないんです。

ただ、歴史は動かないけど、実際に何があったかを、隠されていた、見えないでいたことに光を当てることはできます。この田横という人物もそうでしょう。秦が滅び、漢が立つ時期はどうしても項羽と劉邦の二人に目が行ってしまいますが、この二人だけで歴史が動いていたわけではなく、この二人のうちのどちらかだけが正義だったわけでもないんですよね。まぁ、歴史は勝ったものによって作られ、正義だから勝つのではなく、勝ったから正義なのだ、などと言われるように、『香乱記』を読む限りでは項羽も劉邦も全く正義とはいえません。項羽は残虐非道であり、劉邦は荒淫詐術の人です。漢王朝の立場からすれば劉邦こそが正義ですが、やっていることは権謀術数といえば聞こえはいいけど、要するに騙しです。項羽は強いけど、全体が見えずに自滅していくわけですが、その項羽に負け続けながらもしぶとく詐術で切り抜け、最終的に皇位についたのが劉邦なのです。確かに勝つために手段を選ばない、勝たなければすべてを失うという場合に奇麗事などいえないでしょうが、騙し討ちのオンパレードを見せ付けられると流石に嫌気がさしてきます。

これと対極にあるのが田横だと言えるでしょう。田横は神技ともいえる剣術と無為自然をベースにする知略で危難を乗り越えていきます。常に自分のためではなく、民のためになることをする姿勢が多くの民の心を掴み、やがて結集していきます。二代皇帝の無謀、陳勝呉広の乱、各地で頻発する叛乱と鎮圧軍との戦い、などなどのとんでもない状況の中で田横は染まらないんです。常に姿勢が崩れない。詐術を弄したりしない。なのにドンドン人が集まり、頭角を表していく。それなのに謙虚である。許負の予言通りに従兄や兄が王になり、譲位を示されても固辞し続けたりする。意固地といえば意固地かもしれない。けれども、自分が富貴を掴むことを最後まで拒み続けたとも言える。長いものに決して巻かれない強さを持っている。そんな田横が項羽や劉邦の狭間でどう生きたか、それについてはご自分で読んでみることをお勧めしたい。ここであれこれ言うのは容易いけど、どうなっていくかという楽しみを奪う気にはなりません。最後まで変節しない漢、田横。彼に会って決して損はありえません。





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最終更新日  2006年05月08日 07時43分54秒
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