●「同性愛者として働くこと」
その後、焼く肉屋で働いた。
理由は特にない。
たまたま目に留まったのが焼肉屋で、
家からも近かったから。
そのころから、
「働く」ということが「生活していく」ことに直結するようになってきた。
ただ貯める一方だった初めのバイトから、
一人暮らしをし始めて、
貯めるだけのお金は稼げず生活費でいっぱいいっぱいという暮らし。
でも、楽しかった。
一人暮らしをする前より、
二丁目で働くより、
「カミングアウトしよう」とか思わず、
異性愛者として振舞っていたけれども、
でもお金も入るし、仕事もきついわけじゃない。
上司とのやり取りや、セクハラや嫌がらせなどあったけれども、
私はなぜかその時とても自分は「同性愛者として」働いているような気がして楽しかった。
デートの誘いを断るにしても、
「彼氏いるのか」と聞かれるにしても、
笑ってごまかす。
「アノ客はホモだ」という会話も聞き流す。
それはとっても嫌だし、きつかった。
でも「ま、こいつら私が同性愛者だって知らないんだからしょうがないか」と思えたら、
その場をとても客観視できて、
「今の私は世を忍ぶ仮の姿」となぜだか不思議な自信に満ちた。
もちろんそれは、バイト以外の時間に、
同性愛者の仲間にバイト先のことを愚痴ったり、仲間の話を聞いたりしていたから。
同性愛者として私が働くためには、
働いていない時間に仲間と過ごすことがとても大切だと思った。
その大切にしたいと思う時間を私は持続できたから、
働くことも持続できたんだと思う。
(みかこ)
(終わり)
(みかこ)
■Youthライフヒストリー・スナップ ■
~◎「仕事」編~みかこ(その3)
■ 【ライフヒストリー・スナップとは?】誕生日が一日違い、同い年21歳のレズビアン・ユース(みかこ)とゲイ・ユース(しんご)がいろいろなテーマについて書くライフヒストリー。『QM』誌のレギュラー連載です。今回のテーマは『仕事』です。
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