●「同性愛者が働くこと」
次に始めたのは、「なか卯」という丼ものチェン店で働いた。
軽い肉体労働だし、
働くことに集中できるかもしれないと思った。
ここでもテレフォンアポインターの時のような人間関係があった。
むしろ、テレフォンアポインターより
チームワークが必要なこのバイトは、
もっと人間関係の密度が濃かった。
バイトで働くことより相手の話にあわせること、
嫌われないようにすることに労力を使った気がした。
そのかいあって働き始めて半年後には、
バイト先のドンの姉貴分の弟分、
店長の子ども分みたい感じだった。
でもこれも長続きしなかった。
ただとりあえず、
働くだけなら続けることが出来たと思う。
なか卯で働き始めて1年後くらいに
「一人暮らしを始めたい」と思っていた。
するともっとお金を稼ぐ必要もある。
けれど、自分の働ける日と
店長側の働いて欲しい日がかみ合わなくなる。
辞めるきっかけはそれだけではなかった。
店長に「飯塚くんって、男の人におつり渡す時は丁寧だよね!
もしかしてホモ?なーんて。」
と言われた。
一度でなく、何回度も言われた。
「こんなこと言われたことがなかったのに…」
自分に、ショックとも焦りともつかない恐怖が走った。
「店長~、違いますよ!」
と笑って振舞う。
けれど心は冷え、
氷のようにもろくなっていた。
店長に言われるたび、
その氷にひびがはいっていった。
(続く)
(しんご)
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~◎「仕事」編~しんご(その3)
■ 【ライフヒストリー・スナップとは?】誕生日が一日違い、同い年21歳のレズビアン・ユース(みかこ)とゲイ・ユース(しんご)がいろいろなテーマについて書くライフヒストリー。『QM』誌のレギュラー連載です。今回のテーマは『仕事』です。
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