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おいしい 千葉 ~ponの食べある記~

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いつもお腹いっぱい ぺろりん28さん
2006.07.31
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テーマ:吹奏楽(3400)
映画が上映されるというので、体育館の窓にはすべて分厚い遮光カーテンが引かれていた。熱気や人いきれで少し熱いくらいだった。

ブラスバンドの出番がやってきた。狭い楽屋口から、出待ちの短い階段をあがる。暗い中で各自がセッテイングに忙しい。顧問も楽器を吹きたいというので、はじめのほうは私が棒をふることになっていた。一段高い台にあがった。指揮棒を一度持ちかえた。

となりの司会者にスポットライトが当たり、手短かに曲紹介をする。(どうぞ)と送り出す形で司会が去っていく。私はバンドのほうを向くと、一度小さく深呼吸した。神経を集中させる。

「星条旗」「シャレード」「ユアーソング」「ロミオとジュリエット」「カプリス」何曲かは自分でアレンジしたものだった。手馴れた感じで、演奏は順調にすすんだ。

再び司会にピンスポットがやってくる。私は台を降りると、こちらにやってきた先生にタクトを渡した。(次の曲は「夜の夏の海」です。少し毛色が変わった不思議な曲です。その不思議な感覚を楽しんでください。それではどうぞ)彼は舞台袖に下がっていく。

今回の曲の説明文はすべて私が書いていた。自分の曲だとさすがに恥ずかしく、手短かなもので済ませていた。あやふやなコメントのみで、もちろん作曲者にも触れてなかった。

体育館入口のほうで、何度か光がもれた。先生のタクトが降りる。クラリネットの序奏がはじまった。すぐに金管が後をおう。最初のTuttiになだれこむ。一段落後、木管を主体にしたテーマが流れはじめた。帰り道の口三味線でも何度か合わせたことがあった。メロディの裏を対旋律がゆうゆうと流れる。

ふくよかな重奏。中音部の豊穣なハーモニーが、会場全体を包みこむように響きわたった。息つぎで、どうしても破断されがちなブラスというバンドは、各楽器が相おぎないながら一つの曲という(織物)を織りあげていく。

瞬間の静寂。4本のホルンが一斉に朝顔を上げた。表面の黄金色がきらめく。湾口の手を全オープンにする。天頂から雷でも降るように、一閃のファンファーレが鳴りわたった。そこに全ての金管が呼応していく。呼応しあった末にフォルテシモで上段まで登りつめた。

最初のテーマを、クラの低層とアルトサックスで静かに流す。その上部を、フルートが装飾音で刻んでいく。4分の4拍子と16分の18拍子という複拍子構成で、合奏としてはいちばん難易度の高い部分である。縦の線をわざと揃わなくしているが、4小節か5小節に一度だけ拍頭が合致する。

終章は「ファランドール」を意識した派手な全合奏だった。各楽器が次々とリードを取っていく。フォルテシモも極まった最高潮で曲を閉じた。

拍手の中、先生が客席のほうに振りかえった。司会の子からマイクをゆずり受けた。静まったところで(今の曲は、そこで吹いている彼が作曲したものです。きょうがその初演でした)

声にならないどよめきが起こった。驚きというか何というのか。だんだんと大きくなる。拍手がパラパラと起こった。散発的だったその拍手が、瞬く間に会場全体に広がっていった。入口のほうで何度も大きく光がもれていた。ざわざわしていた。私は、となりの陸に促されてその場に立ちあがり、大きく頭を下げた。拍手がまた一段と大きくなった。

舞台を降りてからがすごかった。映画上映中のうす闇の中でも、人々の視線が自分にやってくるのが、よく分かった。あちこちで肩口をたたかれた。大げさなポーズで迎えてくれる者がいた。いつも憎まれ口しかきいてくれない奴まで、なぜか親しげに話しかけてきた。だれもが笑顔で迎えてくれるのが、素直にうれしかった。

歓待ぶりは生徒よりもむしろ教師たちのほうがすごかったかも知れない。こちらを見る目がすっかり変わったようだった。次の授業の最初でだれもが、まずはあのときのことについて触れてきた。

何日かして、家族で白金の「京葉食堂」に食べにいった。私は五目そばと餃子を所望した。父親はしごく上機嫌だった。音楽について、何ひとつ話したことはなかったが、なぜか初演の情報をキャッチしていた。(とにかくすごい奴だよって褒めちぎってたよ。曲も独創的ですごいって)どうやら、近所の寿司屋の息子から聞いたらしかった。





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Last updated  2006.07.31 17:58:14
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