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テーマ:ノンジャンル。(2209)
カテゴリ:空に刻まれた言葉
国道357と旧道が、そこだけちょうどボタンを留めるように接合している。臨海鉄道をまたぐため、一括りにしたのだろう。そこを無理にファスナー留めで伸して立体交差にしているのが蘇我陸橋である。
(無理)はちゃんと表面化していた。陸橋だというのに、その両裾部分が弓なりにカーブしている。 これは、20年以上も前のお話である。ある雨のふる夕方、小湊鉄道の路線バスが、八幡宿のほうから千葉駅に向かって走っていた。旧道から蘇我陸橋に入る。ふたたび旧道に抜けるので、追越し車線のまま走行する。しかし、下りカーブの途中で、中央線を越えてきた対向車と衝突してしまう。 「やっちまった…」勤続何十年、無事故・無違反で通してきて、もうすぐ定年を迎えようとしていた運転手が叫んだ。衝撃のすごさを物語るように、バスの運転席は大破していた。 救急車が来てからも、自分より怪我をしたお客さんのほうが先だと、おのれが一番最後になるように指示していた。残念ながら、そのバスの運転手さんだけが亡くなってしまった。 蘇我陸橋はその後改良し、幅は狭いながらも上背のある中央分離帯(ブロック)が全面に敷かれた。(当時の新聞を読んだだけの記憶なので。正確な日時を記せないのは要容赦) 今でも蘇我陸橋を通るとき、その運転手さんのことを思い出してしまう。そして「やっちまった」というさぞや無念だっただろうその心情や、何よりお客さんを第一に考えた本物の優しさに、思いをはせたりする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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立派な運転手さんですね……。
私が小さい頃、千葉・木更津間を走る長い路線がありました。今は姉ヶ崎で区切られていますが。 亡くなられた運転手さんは、蘇我陸橋を渡るたびに、ここは危ない、怖いって、思ってらしたんでしょうね……。分かっていたのに、どうしようもなく。さぞ無念だったことでしょう。 今のネット社会の良いところは、一人ひとりのそういう名も無き声が集まって、世の中を良い方向に変えられる可能性を秘めているところです。もちろん、デメリットもありますが。 こうして、pon さんの美味しい世界に浸れるのも、ネットの大きなメリットの一つです。 グルメ以外の情報も興味深く読ませていただいております。 (2007.05.23 11:38:53)
>分かっていたのに、どうしようもなく。さぞ無念だったことでしょう。
>今のネット社会の良いところは、一人ひとりのそういう名も無き声が集まって、世の中を良い方向に変えられる可能性を秘めているところです。もちろん、デメリットもありますが。 >こうして、pon さんの美味しい世界に浸れるのも、ネットの大きなメリットの一つです。 >グルメ以外の情報も興味深く読ませていただいております。 情報というか、記事というか。なぜかずーっと心に引っかかっていた出来事だったので、記してみました。 本来的には、食べ歩きだけを載せていれば、統一感が取れていいんでしょうけれど。自分のカラーを率直に表出するというのも、悪くないんじゃないかと思いまして。 少しだけ、我慢してくださいm(__)m (2007.05.24 17:22:29)
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