テーマ:最近観た映画。(38856)
カテゴリ:アート&ブックス
推理小説ファンの僕だが、日本の作家ではとくに高村薫が好きだ。硬質で骨太の語り口、徹底的にディテールにこだわる描写、意表をつくストーリー展開…、どれをとっても魅力的な作家だ。
その高村薫原作の映画で、現在上映中の「レディー・ジョーカー」が、今週末で終わるというので、先日あわてて見に行ってきた。原作は上下巻合わせて約900頁の超長編。しかも登場人物の関係が複雑すぎて、「映画化は無理だろう」と言う声もあったという話題作だ。 以前映画化された同じ高村薫の「マークスの山」の時は、原作を読んでから観たが、時間がなくて、僕は原作を読まないまま足を運んだ。 「マークスの山」はほぼ評判通りの出来だった。だから今回も期待に胸を膨らませて行った。だが結論から言うと、監督(というより脚本家かな?)が膨大な長さの原作を、十分に消化しきれないまま、映画にしてしまったという印象だ。 映画を観た後も残った、もやもやした疑問は以下の通り、4つほどあった。(原作=写真左=を読んで映画も観たどなたか、ぜひ教えてくださーい)。 (1)障害児の女の子が扮する「レディー・ジョーカー」が、映画の筋書き(展開)の中で、どういう役割を果たしたのかはっきりしない。 (2)大杉連が演じていたレディー・ジョーカーの父親役は、なぜ最後に子どもを置いて、行方をくらましてしまったのかがよくわからない。 (3)総会屋から脅されていた歯医者と、渡哲也演じる薬局店主との関係が、いまいちよくわからない。 (4)日の出ビールから奪い取ったあの20億円は、結局どうなったのか?(映画では、曖昧なまま終わっている) 原作を読んでから観に行ったつれ合いは、「20億円は、映画でもそうだったように、結局、隠したアパートの部屋にそのまま放置されていたと思う」と言う。原作では、主人公たち(誘拐実行犯グループ)の動機は金ではなく、目的を達した後は、金にさほど執着しなかったように描かれていた、とも。 高村薫は、一筋縄ではいかない作家だ。必ずしも、読者の期待通りの筋書き(エンディング)にはしないことはわかっている。僕はこれから、原作の方をじっくり読んでみようと思っている。 それにしても、高村さんの小説なら、「黄金を抱いて跳べ」か「李歐」か「リビエラを撃て」を誰か映画化してくれないかなぁ…。とくに「リビエラ…」は、世界を舞台にした、壮大なサスペンス映画になるに違いないと思うのだけれど…。 ※本の画像は、Amazon HPから引用・転載しました。感謝いたします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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