テーマ:ねぇ?マスター(348)
カテゴリ:BAR
そのBARは神戸・三宮のほぼ中心地にある。阪神大震災で壊滅的な被害を受けた。震度7。店は地下1階だったが、ビルは大きく揺れ(幸い倒壊はしなかったが)、バック・バーにあったボトルは、ほとんどが落ちて、こなごなに割れた。
「割れなかったボトルは、安もんばっかり。年代物の旨いモルト・ウイスキーなどは、床がほんど飲んでしもーて、地震直後、店に駆けつけたときは、そらもう、すごいええ匂いでしたわ」。マスターのGさんは、今では笑って振り返る余裕もできた。 しかし、10年前のその時は一瞬、「この店、再建できるやろか」と先が真っ暗になったという。幸い、家にストックしていたウイスキーはほとんど割れずに残った。 このBAR愛する客の熱い思いにも押され、店は被災からまもなく、たくましくよみがえった。今では、震災に遭ったことがうそのように。 Bar Mainmalt(メインモルト=写真左は店の玄関)。モルトにこだわり、こよなく愛するGさんが93年に開業した。スコッチモルト・ウイスキーなら、オフィシャルからボトラーズまで含めて、ほとんどの銘柄を揃える、関西でも屈指のモルトBAR。 大阪でも、これだけの品揃えのBARははっきり言って、ない(東京でも匹敵するのは、自由が丘のSpeysidewayか青山のhelmsdaleくらいか)。Gさんは、東京のバーテンダーの間でも知る人ぞ知る存在。神戸に来た際、訪れるバーテンダーも多いという。 何より嬉しいのは分かりやすいお酒のメニュー・ブック。店にある数百本のボトルが、地域別、銘柄別に整理され、1ショットのお値段もきっちり書かれている。客は懐と相談しながら、安心して飲める。 しかも、Mainmaltでのお値段は、おそらく他のモルトBARより、かなり良心的(銘柄にもよるが、2~5割は安い)。「僕は買うたときの値段でお客さんに出してます。その後値上がりしたから言うて、高くするようなこと嫌いなんです」とGさん。 僕は、Gさんの気さくで、ざっくばらんな人柄が大好き。初めての客にも、遠来の客にも変わらぬもてなしをする。どのウイスキーを飲もうか迷ってるときでも、絶対、商売優先のトークはしない。 「そんな値段で飲むくらいやったら、これの方がよっぽど、安うて旨いですよ」と、はっきりとアドバイスしてくれる(写真右は、愛好家垂涎のボトルが並ぶ店内の棚)。 バック・バーに置いてる、某有名モルト・ウイスキーについても、「もう最近のもんは、味も質も落ちてあきませんわー」と、そのモルトの代理店の営業マンが来ていたら、腰を抜かすような発言もばんばん飛び出す。 そんな、裏表のないはっきりした性格のGさんが好きで、僕は開業後まもなくから、ずっと通い続けている。2年前には、10周年のイベントがあった。店にあるボトルは、開いているものに限り、すべて半額!という、嬉しいイベントだった。 店は午後5時開店。僕は酒好きの友人を誘って、開店と同時に店に着いたが、もうすでに2人の客が先着して、飲んでいた。6時くらいになると、狭い店に20人近くの客が集まり、もう満杯状態。 「土曜日だし、そんなに来んやろ」と思っていたGさんには、嬉しい誤算で、注文を受けるのにてんてこまい。「こんなんやったら、アルバイト頼んどいたらよかった」とぼやきつつ、客には、「もういちいち伝票付けて書いてるヒマないから、正直に自己申告してやー」とも。 僕らは、お目当てのモルトを3種類ずつ飲み、メモ用紙にきちんと飲んだ銘柄を書いて申告。幸せな気分で店を後にした。「 Mainmalt 」はGさんがいる限り、ウイスキー好きの客に愛され続けるに違いない。こんなイベントなら、何度でも来るから、Gさんまたやってねー! 【Bar・Main Malt】神戸市中央区北長狭通2-10-11 第七シャルマンビルB1F 電話078-331-7372 午後5時~午前1時 第3日曜&翌月曜休み お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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