前回に引き続き、連載(「禁酒法時代の米国」) で参考文献として利用した洋書のカクテルブック等についてご紹介いたします(Amazonの価格はあくまで参考価格です。とくに古書価格は買うタイミングでかなり幅がありますので、ご了承ください)。
4. 173 Pre-Prohibition Cocktails: Potations So Good They Scandalized A President (Tom Bullock著、Original Edition=The Ideal Bartender 1917年刊、2001年復刻版刊)=Amazon等で入手可能(古書での参考価格(円):5000円~)
原著は1917年に出版されたカクテルブック。それが10年ほど前に解説を付して復刻出版されたのがこの本です。禁酒法施行以前に飲まれていたカクテルがどんなもので、どういうレシピだったかを知る貴重な内容です(本のタイトルにもあるように、173種類のカクテルのレシピが紹介されています)。
原著者トム・ブルック(Tom Bullock 1872~1964)は黒人で、ケンタッキー州の州都ルイビルで生まれ、若くしてセントルイスのクラブでバーテンダーとして働き始めます。南北戦争も終結し、米国内の奴隷は解放された後ですが、それでも黒人への差別は根強い時代でした。
しかし、ブルックはそのクラブで日ごとにカクテルづくりの腕を上げ、常連客らから高い評価を得ていきます。本では、とくに3人の著名人に気に入られたと記されています。1人目は、後に「バッドワイザー」で知られる大手ビール・メーカー「アンハイザー・ブッシュ」を築き、セントルイス・カージナルスのオーナーにもなったというオーガスト・ブッシュという実業家。
2人目はジョージ・H・ウォーカーという人。もちろん日本では無名の方ですが、おそらく当時もこのクラブの常連客で、地元の名士だったのでしょう(職業は現時点では不詳)。1917年の原著ではウォーカー氏が序文を書いています(ちなみにこの方、第41代ブッシュ(父)大統領の祖父にあたる人です)。
最後、3人目はセオドア・ルーズベルト(1858~1919)。後に米国の第25代大統領(1901-1909年在任)となり、日露戦争終結後のポーツマス条約の仲介役も果たした有名な人物ですが、ルーズベルトはブルックのカクテル、とりわけミント・ジュレップがとてもお気に入りだったそうです。
当たり前ですが、この本は現代のカクテルの「原型」ができたと言われる1920年代以前の本ですから、掲載されているカクテルも「**サワー」「**パンチ」「**コブラー」という初期の古典的なものがほとんどです。
現代のBarでもなお飲まれているカクテルは、上記のミント・ジュレップ以外だと、バンブー、ブロンクス、ホット・バタード・ラム、ギブソン、オールド・ファッションド、シャンペン・カクテルくらいですが、それでもカクテルの発展の道筋を知るという意味でも、とても興味深い本です。プロの方にもぜひ読んでいただきたいカクテルブックです。
5. Vintage Cocktails: Authentic Recipes And Illustrations From 1920-1960 (Susan Waggoner & Robert Markel著 1999年刊)=Amazon等で入手可能(参考価格(円):1400~1600円)
本のタイトル通り、古き良き時代のカクテルが昔のレシピとともに紹介されています。サブタイトルには「1920年から60年」となっていますが、当然、1920年以前に生まれて、この時期に人気が定着していたカクテルも含まれています。
オールカラー96頁。紹介されているカクテルは約60種類と、他の文献と比べてやや少ないのは不満ですが、それぞれのカクテルには、誕生にまつわる逸話も少し添えられています。
全編に渡って昔のお酒の広告やポスター、写真がふんだんに紹介(残念ながら、写真はモノクロが多いですが)されていて、レトロな雰囲気があふれています。見ているだけでも十分に楽しい、絵本のようなカクテルブックです。手頃な値段を考えると、とても “コスパの良い” 本だと思います。
<3>へ続く
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Last updated
2021/07/06 11:00:55 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。