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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2015/08/02
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カテゴリ:カクテルブック
 ◆「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」にみるクラシック・カクテル

  15.ロブ・ロイ(Rob Roy)


 「ロブ・ロイ」は有名なカクテル「マンハッタン(Manhattan)」のベースをスコッチ・ウイスキーにしたヴァージョンとも言え、「Scotch Manhattan」「Perfect Manhattan」という異名もあります(ちなみに、カクテルの「マンハッタン」は1870~1885年頃に誕生しています → 当連載の「マンハッタン」ご参照)。

 現代の標準的なレシピは、「スコッチ・ウイスキー3分の2(または2分の1)、スイート・ベルモット3分の1(または2分の1)、アンゴスチュラ・ビターズ1dash、飾り=マラスキーノ・チェリー」(ステア・スタイル)というところでしょうか。「ロブ・ロイ」とは18世紀のスコットランドの有名な義賊、ロバート・ロイ・マクレガー(Robert Roy MacGregor)のニックネームです。

 誕生の経緯について従来、バー業界や文献等では、「1920年代前半にロンドン・サヴォイ・ホテルのバーテンダーのハリー・クラドック(Harry Craddock=The Savoy Cocktail Bookの著者)が考案した」という説が比較的よく知られてきました。

 しかし近年になって、Wikipedia英語版が「1894年、ニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテルのバーテンダー(名前は不明)が、オペレッタ「ロブ・ロイ」のプレミアを記念して考案した」という別の説を紹介しています(根拠資料は「Sudhir Andrews:Textbook Of Food & Beverage Management」とのこと。しかし、末尾にも登場する「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」上ではこの説についての言及はなかったので、真偽の程は定かではありません)。
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 ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「Harry's ABC of Mixing Cocktails」の初版(1919年刊)には(もちろん)「ロブ・ロイ」は掲載されています。そのレシピは、「スコッチ・ウイスキー3分の2、イタリアン(スイート)・ベルモット3分の1、アンゴスチュラ・ビターズ1dash、飾り=チェリー、シェイク・スタイル」です。レシピは現代とほぼ同じで、シェイクかステアの違いくらいです(写真=Rob Roy@Bar Cadboll, Osaka)。

 すなわち、「Harry's ABC…」が1910年代末までにバーの現場に登場した主要なカクテルは収録しているという前提に立てば、従来のハリー・クラドック考案説は疑わしくなってきますし、一方で、「1890年代前半にニューヨークのウォルドルフ・アストリアのバーテンダー考案した」という説も、下記にも紹介している1890~1920年の間に刊行された米国のカクテルブックで「ロブ・ロイ」を収録している例が一切見当たらないことからも、どの程度信用していいのかよく分かりません(マッケルホーン自身は残念ながら、「ロブ・ロイ」誕生の由来については何も触れていません)。

 結論として、うらんかんろが持っている古い欧米の主要なカクテルブックで、「Harry's ABC…」以前に「ロブ・ロイ」を収録している例はなく、現時点では、「ロブ・ロイ」は「Harry's ABC…」が初出文献ということになります。ただし考案者については、「現時点では不明」としておくのが研究者としては、一番誠実な姿勢かと思っています。

 では、1880~1950年代の主なカクテルブック(「Harry's ABC Of …」以外)は「ロブ・ロイ」をどう取り扱っていたのか、どういうレシピだったのか、ひと通りみておきましょう(なお、現代ではステアでつくるのが一般的かと思いますが、1934年刊の「The Artistry Of Mixing Drinks」より前は、すべてシェイクです)。

・「Bartender’s Manual」(ハリー・ジョンソン著、1882年刊)米、「American Bartender」(ウィリアム・T・ブースビー著、1891年刊)米、「Modern American Drinks」(ジョージ・J ・カペラー著、1895年刊)米、「Dary's Bartenders' Encyclopedia」(ティム・ダリー著、1903年刊)米、「Bartenders Guide: How To Mix Drinks」(ウェーマン・ブラザース編、1912年刊)米、「173 Pre-Prohibition Cocktails)」 & 「The Ideal Bartender」(トム・ブロック著、1917年刊)米 いずれも掲載なし

・「The Savoy Cocktail Book」(ハリー・クラドック著、1930年刊)英 スコッチ・ウイスキー2分の1、スイート・ベルモット2分の1、アンゴスチュラ・ビターズ1dash、飾り=チェリー(シェイク・スタイル)

・「Cocktails by “Jimmy” late of Ciro's」(1930年初版刊、2008年復刻版刊)米 スコッチ・ウイスキー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、アンゴスチュラ・ビターズ1dash、飾り=チェリー(シェイク・スタイル)

・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイアー著 1934年刊)仏 スコッチ・ウイスキー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、アンゴスチュラ・ビターズ1dash、飾り=チェリー(ステア・スタイル)

・「The Official Mixer's Manual」(パトリック・ギャヴィン・ダフィー著 1934年刊)米 スコッチ・ウイスキー1jigger、スイート・ベルモット3分の2jigger、アンゴスチュラ・ビターズ2dash、レモンツイスト(ステア・スタイル)

・「World Drinks and How To Mix Them」(ウィリアム・T・ブースビー著、1934年刊行)米 スコッチ・ウイスキー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、アンゴスチュラ・ビターズ2drops、飾り=チェリー(ステア・スタイル)

・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米 スコッチ・ウイスキー2分の1、スイート・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ1dash(ステア・スタイル)

・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年初版刊)米 スコッチ・ウイスキー1.5onz(45ml)、スイート・ベルモット4分の3onz(23ml)、オレンジ・ビターズ1dash(ステア・スタイル)

・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 スコッチ・ウイスキー2分の1、スイート・ベルモット4分の1、ドライ・ベルモット4分の1、アンゴスチュラ・ビターズ3dash、飾り=チェリー(ステア・スタイル)

・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」(ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 スコッチ・ウイスキー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、アンゴスチュラ・ビターズ1dash、飾り=チェリー(ステア・スタイル)

・「Esquire Drink Book」(フレデリック・バーミンガム著 1956年刊)米 スコッチ・ウイスキー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、ビターズ1dash(ステア・スタイル)


 さて、日本へロブ・ロイはいつ頃紹介されたのかと言えば、日本初の体系的カクテルブック「カクテル(混合酒調合法)」(秋山徳蔵著、1924年刊)、「コクテール」(前田米吉著、1924年刊)ともに収録されていることからも、1920年代前半までには伝わっていたことは間違いありません(しかし、なぜかレシピはスイート・ベルモットではなく、ドライ・ベルモットです。欧米ではドライ・ベルモットを使った場合、「ドライ・ロブ・ロイ」と呼ばれます)。

 なお、日本国内のバーでは、「ロブ・ロイ」が注文されているのを、僕はあまり見たことがありません。アルコール度数が高いショート・カクテルということで、女性に敬遠されていることも大きいのかもしれません。ならば、男性客の皆さんにもっと頑張って、カッコ良く飲んで頂きたいのですが。




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Last updated  2021/07/06 11:20:56 AM
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うらんかんろ

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汪(ワン)@ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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