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カテゴリ:Movie
チェーホフの小説を下敷きにした人情ドラマ(?)。場合によってはコメディにジャンルされていることもあるが、それほどのアクセントはない。まあチェーホフの作品自体がストーリーよりも登場人物の考え・動きに比重をおいたもので、特段の事件は起こらないのだから、大体想像はつこうというもの。もちろんドラマだから多少の緩急はあるが、基本的に平坦。だから1時間半ちょっとの上映時間はちょうどいいのかもしれない。 ロシアのある農村。高台にある将軍夫人(未亡人)アンナ(アントニーナ・シュラーノワ)の屋敷に次々と客がやって来る。アンナの息子(正確には夫の先妻の子)セルゲイの結婚お披露目があるのだ。当地の地主や旧知の医師、教師、その妻など大勢がやって来て賑やかだ。教師のプラトーノフ(アレクサンドル・カリャーギン)にアンナは好意を持っている。しかしセルゲイの新妻ソフィア(エレーナ・ソロヴェイ)はプラトーノフの初恋の相手だったのだ・・ ストーリーはこんなもので、これに幾つかのエピソードというか出来事が加味されていく。未亡人は貴族階級と言っても没落しかかっており、借金肩代わりを申し出ている実業家に求愛される状況。自分の腕に自信がない医師は、農民から急患の診療を懇願されても断り、呑んだくれる。教師プラトーノフは妻がいるのだが、アンナからは言い寄られ、思いがけずソフィアに遭ったりで、思い悩んでしまう。そして自殺しようと川へ飛び込むのだが、くるぶしまでしかない浅さで・・・というように、どこか弱く、物哀しくも滑稽な人ばかりだ。 この作品についての解説などを読んだことがないのでよくわからないが、やがて訪れるロシア革命を前にした漠然とした不安があるのだろう。すでに屋敷の使用人たちには自意識が芽生え、くだらない用事を言いつけられると反発している。小作人たちはセルゲイに怒鳴られると震え上がるが、言いつけられたことをやろうとはしていない。 そして時折現れる招待客の子供(少年)。どこか頼りなげな佇まいは、やがて白衛軍(反革命・皇帝派)に加わる運命を予感しているかのようだ。服装も白い詰襟服だし。『ドクトルジバゴ』に出てくる白衛軍の少年兵がオーバーラップする。 こう書くとなんだか暗そうだが、実際のタッチは明るく、人情劇と言うに相応しい。夜の花火、明け方の野原など映像的にも素晴らしいし、パーティの賑やかさと一転した静けさの対比も見事である。題名の「機械じかけのピアノ」とはアンナの家にある自動演奏のピアノ。この屋敷が革命によって他人の手に渡り、このピアノが破壊されるか、蔵の奥深く仕舞われるところまで描かれて「戯曲完成」という意味なんでしょうか。 監督:ニキータ・ミハルコフ 原作:アントン・P・チェーホフ 脚本:ニキータ・ミハルコフ/アレクサンドル・アダバシャン 撮影:パーヴェル・レーベシェフ 音楽:エドゥアルド・アルテミエフ 1976年・旧ソ連 / 102分 / 評価:4.0点 / 子供:○ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 23, 2007 09:08:58 PM
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