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カテゴリ:Movie
言わずとしれたヴィム・ヴェンダース監督の名作。もう何度観たことか。冒頭の「子供は子供だった頃・・」というピーター・ハントケの詩をノートに書き綴るシーンから2時間惹きこまれてしまう。何故か中年男性姿の「天使」が人間の女性に恋をし、地上に降りるという話であるが、そこに悩み・恋愛・死・希望・・・といった人生の-コマーコマを詩情たっぷりに散りばめ、何ともいえない魅力的な映像世界が繰り広げられている。 音量にご注意ください ドイツ統一前のベルリン。大ティーアガルテンの中央に聳え立つ戦勝記念塔ジーゲスゾイレの上から地上を見渡す天使のダミエル(ブルーノ・ガンツ)。彼ら天使の姿は子供にしか見えない。彼らは人間が考えていることを独り言のように聴き取ることが出来るのだ。ある時は孤独な老人、あるときは事故で瀕死の男性、ある時は落ち込んでいる女性の傍らに立ち、独り言を聴き、そっと肩を抱いたりする。しかし、彼らは温度を感じない。色彩もないモノクロームの世界である。 ある日、ダミエルはサーカスの空中ブランコ乗りのマリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)を見かけ、恋をしてしまう。しかし触れることは出来ても温もりを感じることは出来ず、マリオンに自分を見てもらうことも出来ない。ダミエルは天使であることをやめて人間となる決心をするが、それは無限の生命を捨てるこになるのだった・・・。 天使はダミエルのような中年男性ばかりでなく、女性もいる。たまに友人のカシエル(オットー・ザンダー)と情報交換をしたりもする。特に天使界に不満があるというわけでもなさそうなのだが、マリオンへの思いは断ちがたく、とうとう人間として地上に降り立ってしまう。 この映画は結果的にベルリンの壁崩壊を予見するものとなったが、ダミエルの天使側を東とすれば、マリオンの人間界は西。ライブハウスのバーでの対面シーンはまさに東西融合を表すものだった。 この本筋以外の様々な人間界の描写、これが素晴らしい。人間たちは声には出さない独り言をブツブツ言っているのだが、それがまるで詩のように聞こえてくる(外国語だからかもしれないが)。 そこに被さるユルゲン・クニーパーによるサウンドトラック。静かな前衛クラシックとも言うべき音楽なのだが、重厚で実にいい。またライブハウスではニック・ケイブ&バッド・シーズとヴェンダース監督お気に入りのクライム&シティ・ソリューションが姿を見せ、独特の雰囲気を醸しだしている。 音量にご注意ください 主役のブルーノ・ガンツが好演し代表作となった。元ヴェンダース夫人であるソルヴェーグ・ドマルタンも素晴らしかったが、残念ながら2007年1月に急逝してしまった。オットー・ザンダーは本作の続編『ファラウェイ・ソー・クロース/時の翼にのって』で主役となる。 そして何よりも自分自身の役で登場したピーター・フォーク。ヴェンダースの世界に意外と合っている。儲け役だ。ピーター・フォークも『ファラウェイ・ソー・クロース』に出演している。 決して難解ではなく寧ろわかりやすい作品で、暗いようでいて希望を感じさせる映画である。この辺が公開時、異例のロングランとなった理由かもしれない。しかし実際の世界はそんな明るい面ばかりではない。その暗い面を描いたのが『ファラウェイ・ソー・クロース』であり、二つは一対の作品。本作だけ観たのでは片手落ちだろう。 監督:ヴィム・ヴェンダース 製作:ヴィム・ヴェンダース/アナトール・ドーマン 製作総指揮:イングリット・ヴィンディシュ 脚本:ヴィム・ヴェンダース/ペーター・ハントケ 撮影:アンリ・アルカン 音楽:ユルゲン・クニーパー 1987年・西ドイツ=フランス / 128分 / 評価:5.0点 / 子供:? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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この映画、3月に劇場での復刻上映で何年ぶりにか見てきましたが、やはり良い映画でした。
映画の中でいみじくも「物語を語る」ことも一つのテーマになっていましたが、基本ストーリーが良く出来ているのでしょう。「とにかく良いストーリー!」と言ったのはジャン・ギャバンだったでしょうか(?)。だからベルリンの状況や、物語の復権や、そういうことをまったく抜きにしたアメリカ版リメイク『シティ・オブ・エンジェル』もヴェンダース自身も誉めたようになかなか良い映画でした。 ピーター・フォークの役は、とにかく誰が見てもすぐにそれと分かる誰かをヴェンダースは探したらしいです。西独元首相ヴィリー・ブラント案もあったらしいです。ブラントは東独が壁を作ったときの西ベルリン市長ですからね。 ソルヴェイグは良い味を持った女優さんだっただけに残念です。 (Oct 28, 2007 09:54:27 PM)
racquoさん
>この映画、3月に劇場での復刻上映で何年ぶりにか見てきましたが、やはり良い映画でした。 > >映画の中でいみじくも「物語を語る」ことも一つのテーマになっていましたが、基本ストーリーが良く出来ているのでしょう。「とにかく良いストーリー!」と言ったのはジャン・ギャバンだったでしょうか(?)。だからベルリンの状況や、物語の復権や、そういうことをまったく抜きにしたアメリカ版リメイク『シティ・オブ・エンジェル』もヴェンダース自身も誉めたようになかなか良い映画でした。 > >ピーター・フォークの役は、とにかく誰が見てもすぐにそれと分かる誰かをヴェンダースは探したらしいです。西独元首相ヴィリー・ブラント案もあったらしいです。ブラントは東独が壁を作ったときの西ベルリン市長ですからね。 > >ソルヴェイグは良い味を持った女優さんだっただけに残念です。 ----- 極めて普遍的なストーリーなので、親しみやすく、何となく懐かしい感じを受けるのでしょうか。 ピーター・フォークで思ったのは、この監督はなかなかキャスティングが上手ということ。『パリ、テキサス』のハリー・ディーン・スタントンも良かったですし(ただ単に自分の贔屓俳優だからかもしれませんが)。 加えて私が惹かれるのはアンリ・アルカンによる撮影。ここに載せる画像を選ぶのも楽しかったです。 (Oct 28, 2007 11:48:24 PM)
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