私:この論稿は、「戦争と平和のなかの天皇・欧米からの観察」と「過去、現在、そして未来としての昭和」の2論稿からなる。
欧米人のある人々は、戦前は天皇制を封建的な制度と考えていた。
1945年の日本敗戦後の世論調査では、アメリカ人の70パーセントが天皇の処刑か厳罰に賛成していた。
しかし、戦争中でも英米両国の支配層の間に根強い親天皇感情が存在していた。
天皇を攻撃することは禁じられていた。
皇居と伊勢神宮など皇室ゆかりの神社をはっきりと目標から外していた。
A氏:皇居は爆撃され、一部損傷したのではないの?
私:それは誤爆だという。
天皇を守る理由は、もし、皇居やそのゆかりの神社という神国日本の象徴を攻撃することは、日本国民を死ぬまで戦うように追い込むことになると考えていた。
しかし、戦後、連合国が天皇をどうするかは意見が分かれていたが、これはご承知のようにマッカーサーが擁護に成功する。
そして、新憲法で天皇は軍国主義のシンボルから民主主義のシンボルに変身する。
ダワーは、昭和天皇は、軍国主義が権力の座にあるときは超国家主義を、真の改革が行われているときは民主主義を、そして、昭和の最後の経済大国になったときは、ブルジョア主義を映す鏡だとしている。
そして、天皇がなくなったときの葬儀、後継者の即位式、新しい年号の採択などにまつわる高度の宗教性と神秘性の存在を指摘しているね。
A氏:「天皇は神聖にして侵すべからず」のときと儀式は同じというわけか。
私:ダワーは、日本では国家と宗教が依然として密接に結びついていると危惧しているね。
しかし、平成になっても、ダワーが危惧した事態にはなっていないね。
むしろ、ダワーが心配した天皇の政治利用のほうが問題だね。
A氏:今年、例の小沢一郎氏の「天皇の政治利用」が久しぶりに問題になったが、ダワーの危惧が少しは当たったかね。
私:昭和は、戦争では始まり、破壊的な敗北を喫したが、最後は輝かしい経済大国で終わったね。
しかし、平成はバブル崩壊、リーマンショック、政権交代など混乱の時代になったね。
「失われた20年」が今までの平成の特徴だね。
国の借金増大、格差の拡大、労働賃金の減少、自殺者年間3万人台に突入と続く。
昭和末期の1人当たりGNP世界1位が、平成の20年の間で20位以下に転落。
平成の日本人はいまだに、昭和の経済成長の夢を見ているのだろうか。
ダワーは、平成の日本をどうみているだろうかね。
もう、年だが今後の著書に期待したい。