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カテゴリ:映画
身体障がい者専門の性風俗業を扱っているというからドキュメンタリーかと思ったら劇映画だった。
キワモノ的な内容や鋭い(というか気がつきにくい)問題提起を期待しなかったわけではない。障害者解放運動の内部でも、たとえば性風俗店に出かける障害者を介助することの是非、あらたな差別への加担をめぐって混乱と対立が起きたことがある。しかしそうした観る側の「気負い」をあっさりかわしてくれる抒情的な作品。 前半はドキュメンタリー調。3人のそれぞれに個性的な身障者が登場し、「身障者」とひとくくりにはできない現実をさりげなく教えられる。中ではホンモノの身障者ホーキング青山の印象と存在感が圧倒的。演技とは思えない話術と展開が「健常者」の感傷など吹き飛ばしてしまう。 後半はドラマ色が強くなる。つまり、実際にはこんなことは起きないだろうという展開になる。風俗嬢が、身障者に同情しつつも差別的な目で見る健常者たちに反発を感じ、身障者の「客」との間に友情めいたものが生まれていく。社会的弱者といえなくもないこの風俗嬢が、市民社会の秩序の側、いわば権力の側から身障者の側に「階級移行」していくのに似た風情があるが、その流れが自然なので、風俗嬢の気持ちに共感させられる。 決して軽くはないテーマを扱いながら、生きることが本来的に持つ切なさを感じさせ感動的だった。夕張国際映画祭でグランプリと記者賞をとったのも納得の作品になっている。 デリヘル店の経営者役は津田寛治。この経営者の「日本には18歳以上の在宅身体障がい者が348万人いて、この街にも1万人以上の障がい者がいる。この街のどこかに1万人がじっと息を潜めて生きている」とのセリフが妙に心にのこる。「障がい者専門だとラクかも、お客さん動けないからこわくないし」と風俗嬢役の小泉摩耶に語らせ、いまどきの女の子のしたたかさもリアルに描いて甘さがなくていい。そしてその「いまどきの女の子」にも弱きを助け強きをくじく心が残っている「可能性」を強く感じさせるのが、この映画の最大の長所だ。 こういう映画を観ると思うのは、橋下徹のような人間の薄っぺらさだ。道義的・倫理的な問題以前に、弱者に対する想像力がゼロなのだ。 橋下に対する非難決議をあげたサンフランシスコ市議会には、日本にはこういう映画もあり、かろうじて文化が残存しているのだということを知らせておく必要があるのではないだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
June 25, 2013 03:40:02 PM
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